経験者インタビュー

専門的スキルを持った
参加者との出会いが
次のプロジェクトの出発点に

四辻さつきさん
にじいろポッケ
「同人イベントのための託児 にじいろポッケ」は、ママ・パパの「趣味と子育ての両立」を応援するために、主に東京ビッグサイト等で行われる大規模な同人イベント(同人誌即売会)で託児を行っている団体です。
「GRANTアワード2023」にて「2022団体賞」を受賞したにじいろポッケさんは2022年に団体登録を行い、これまで3つのプロジェクトに取り組んだ実績があります。代表の四辻さつきさんにGRANTを活用したきっかけやプロジェクトの内容についてお話しを伺いました。
個人でやっている団体が支援を受けることができる仕組みがありがたい
にじいろポッケは東京ビッグサイトなどで開催されるマンガやアニメなどの自費出版の趣味の本(同人誌)の即売イベントに出たいママやパパのお子さんを預かるという託児、イベント保育をしている団体です。

もともと、託児の予約申込には、外部のシステムを利用していました。クレジットカード決済もできて便利だったのですが先方の事情でサービスが停止になってしまい、困ってサービスグラントに相談したのがGRANTとの出会いです。

わたしは、今もかかわっている別のNPO法人で何度かチーム型のプロボノ支援を受けた経験があります。にじいろポッケは、保育のスタッフなどの仲間がいますが基本的にはわたし個人がやっている団体なのでチーム型の支援を受けることは難しい。このような組織でも支援を受けられるGRANTの仕組みはありがたく、使ってみようと思いました。
1.Webサイトへの客観的なアドバイスのプロジェクト
GRANTはプロセスの一つ一つがオープンでわかりやすく募集記事も作りやすかったです。プロジェクトは2件を同じ時期に募集しました。「Webサイト改善のための提案・アドバイス」「Stripeを使った決済システムの導入」です。
当時、困っていた決済システム以外にも、Webサイトを何とかしたいという課題があったので、せっかくだからということで2件を同時に募集しました。

Webサイトのプロジェクトは、支援してくださるプロボノの方には客観的な提案やアドバイスをお願いし、サイトへの反映はこちらが行うというプロジェクトでした。

募集記事:Webサイト改善のための提案・アドバイス


最初のオンラインミーティングで、こちらが気になっていることを説明し、プロボノの方からは、わたしたちのサイトを初めて見た人にとってどこにどんな情報があればわかりやすいのかについての客観的なアドバイスをいただきました。

いくつかのプロジェクトを経験した今だから言えることですが、このときの募集は初めてのプロジェクトだったこともあって「提案やアドバイス」というかなり漠然とした内容になっていたように思います。自分たちが手を動かせばいいと思っていたのですが、それはたいへんでした。

今ではGRANTには専門性が高い方が登録しているということもわかりましたので、もし次回お願いするとしたら、提案やアイデアだけでなく、提案を反映しするために手も動かすところまでやって欲しいという内容で募集してもいいかもしれないと思いました。
2.Stripeの決済システムの導入支援のプロジェクト
より重要度を感じていたのは、決済システムのプロジェクトです。何といってもそれまで使っていたシステムがなくなってしまってどうしようというところから始まったので。
こちらでもいろいろ調べて、Stripeの決済システムがいいんじゃないか、と考えたんですけど、一人で導入するのは難しかったのでGRANTで募集することにしました。

支援募集記事:Stripeを使った決済システムの導入


やりたいことが、決済システムとリンクした託児申込フォームの導入と明確にあって、そのための知識がある人を募集するということでピンポイントなプロジェクトでした。専門性が高い内容だったんですけど、デジボノの方が応募してくださって知識のある方の支援で完結することができました。手を挙げた方は「ちょうど最近Stripeを使ったところだったので応募しました」とおっしゃっていたので支援内容に「Stripe」と具体的に記載したこともよかったのかもしれません。

プロジェクトでは、しっかりヒアリングでニーズを確認していただいたことがよかったです。こちらからも、なんのために必要で、どういうことができたらいいのか、何に困っているのかについて詳しく説明しました。プロジェクト期間中も、密にコミュニケーションをとりながら進めました。

通常、こういうシステムは月額や年額でいくらか支払ってサービスを使用するものが多く、わたしたちの事業の規模からすると全然見合わなかったんです。それまで使っていたシステムは、決済ごとに何パーセントかかかるようなサービスで使い勝手がよかったんですけど、代わるようなサービスはなかなか見つからなくて。

プロボノの方は、わたしたちのような小さい規模の組織が使うということで、できるだけお金をかけずにStripeに無料ツールを組み合わせて使うという点で苦心してくださいました。結果的にはStripeを使った決済システムだけではなくて、そこから名簿を自動で作成する、メールを返信するなどのいろいろな機能をセットで構築していただくことができてありがたかったですね。 既にあるツールを組み合わせることでコストを抑えられましたし、わたしもITの知識はそれなりにあったので、マニュアルを準備してくださったことで使いこなせるようになってよかったです。
3.寄付支援の受付のプロジェクト
申込の仕組みが整ったところで、寄付も受け付けるようにしたいとプロボノの方に相談したところ、別プロジェクトでやりましょうということで次のプロジェクト「GASとStripeを活用した寄付支援の受付」を立ち上げました。こちらのプロジェクトも引き続きデジボノの方々がやってくださることになりました。

支援募集記事:GASとStripeを活用した寄付支援の受付


プロジェクトの成果物は今もバリバリ活用していますし、おかげさまで寄付もたくさん集まっています。団体立ち上げのエッセイのコミカライズ(マンガ化)、「同人イベントに行きたすぎて託児所を作りました」の影響もあって支援も増えてきていますし、自動的に「ありがとうございました」という御礼メールが送られるので手間をかけずに回せています。

一般的な寄付管理サービスはお金がかかるし、わたしたちが使わないような機能も付いています。わたしたちは小さい組織なのでStripeとGAS(Google Apps Script ※)で十分です。
複数のツールを組み合わせる仕組みは、そこそこITのスキルがないと使いにくいシステムだとは思います。ホームページを作ったことがある方だったら大丈夫と思いますが最低限のプログラミングの知識がないと難しいかもしれません。わたしは団体のホームページは自分で作ったという経験がありました。
でも、誰もが使いやすくわかりやすいシステムはその分手数料が取られたりとコストもそれなりにかかります。今回つくった仕組みは、ITの知識が必要な面はありますが、わたしたちにはちょうどよかったし、とにかく金額の面でも安く済んでありがたかったです。

プロボノの方とは今でもグループLINEでつながっています。相談にのってもらったり、ちょっとしたことを質問できるような関係性を築けていてとても頼りになっています。

※ Google Apps Script (GAS):Googleが提供しているプログラミング言語。Googleの各サービスと連携して様々な作業を自動化できる
GRANTに相談したら何とかなるかも!
GRANTのプロジェクトを経験して、困ったことがあってもあきらめなくていいって思えるようになりました。今だったら、外部サービスが見つからなくても、とりあえずGRANTに相談してみたら何とかなるかもしれないと思えます。ゼロから探すのは難しいけれど、GRANTには専門知識がある人が集まっていることや、自分たちにリソースが無くても手を貸してくれる人がいるかもしれないということがわかりました。

団体のメンバーを増やすほどのことではなくても、ここを手伝ってくれればありがたいっていうことがあります。団体にとって人を増やすのは難しいことです。参加する側はそれぞれモチベーションも異なりますし、さらに知らない人のところに入っていくのはたいへんなこと。ずっとかかわってもらうことは難しくても、ここだけ手を貸してもらえることはありがたいですしお互いにとっていいと思います。

GRANTは、便利でありがたいサービスなので、自分たちでは無理だと思っていることとか、ここをよくしたいと願っていることはあきらめずに助けを求めてみると世の中のあたたかさに触れられます。世の中には、デジボノの皆さんのように、高いスキルを社会貢献に活かそうとしている素敵な方の存在を知ることは、自分たちの活動の励みにもなると思います。

※にじいろポッケさんの「託児申込システム」の事例は、2022年10月29日のデジボノセミナーで詳しく紹介されました。以下の動画からご覧いただけます。

2022年10月開催 デジボノセミナーでの事例紹介動画


※掲載内容は2023年10月取材時点のものです。