経験者インタビュー

きっかけはソーシャルデザインへの関心
活躍できる場が自信につながりました

藤原さくらさん
デザイナー
PROFILE
広告代理店でグラフィックデザイナー、アートディレクターとして経験を積んでいた藤原さん。新たなキャリアを模索する中でGRANTと出会い、これまでに2つのプロジェクトに取り組みました。
※藤原さんのGRANT参加実績はこちらからご覧いただけます。
学生時代に出会ったソーシャルデザインへの関心を持ち続けていた藤原さん。これから進む道を模索する時期に参加した2つのプロジェクトについて応募のきっかけやプロジェクトの進め方等についてお話しを伺いました。
ソーシャルデザインとの出会いがGRANTの入り口に
広告代理店のグラフィックデザイナーとして7年半勤務しています。デザインのスキルが身についてくる中でもう少しデザイナーが主体的に動ける場所を探したいという気持ちが強くなり、転職や独立を考えていた時期にGRANTに登録しました。

それまでプロボノとして活動したことはないんですけど、学生時代にソーシャルデザイン(デザインによる社会貢献)を軸に活動されている教授の研究室に所属していたんですね。研究室の課題として、自分で気になるNPO団体を探してボランティアで活動に参加して、団体さんの課題を自分で見つけ、解決するためにデザインの力を使うという内容があって、そのときにボランティアは経験していました。

この課題がわたしの中で大きくて、活動にすごく感銘を受けたというか衝撃で。こんなデザインの使い方があるんだなとそこで初めて知ってすごく印象に残っていました。
これからどういう道を進んでいこうかと考えていく中で、この学生時代の経験を思い出しました。ソーシャルデザインに関する仕事ができる企業や団体を調べているうちにGRANTのページを見つけました。ちょっとやってみようと思って登録したのが最初のきっかけです。
不安を持ちながらもGRANTの活動には魅力を感じていました
登録はしてみたものの、ボランティア活動は学生の時の課題くらいでしかやったことがなく、実際に自分がデザイナーとしてある程度スキルを積んできた状態で支援するっていうのは初めてだったのですごく不安がありました。仕事では基本的にお客さんとのやり取りは営業さんがやっていたので、GRANTではわたしが直接団体さんとやり取りをしていくことに期待もありつつ、うまく意思疎通ができなかったらどうしようとか、やっていけるかなという不安は少なからずありましたね。

でも、活動としてはGRANTがやられていることはとても魅力的だったので、ぜひやってみたいという気持ちの方が強くて。とりあえず何かやってみようという気持ちで、勢いで進めてみたという感じでした。
わたしができることがデザイン関係のチラシ制作やロゴ制作という限られるジャンルだったので、そういったワードで検索して自分ができそうな募集記事をいくつか拝見してプロジェクトを絞り込んでいきました。
発達わんぱく会さん~しっかりした募集記事に安心感を感じたプロジェクト
最初に手を挙げたのは、認定NPO法人発達わんぱく会さんの「児童発達支援事業所開設セミナーのチラシ作成」のプロジェクトです。発達わんぱく会さんは、発達障害の子供のために活動されている団体さんで、自分にとって身近な活動ではないけれど、知らないからこそ勉強にもなるし知ってみたいということでエントリーしました。募集記事がしっかりされていて、ちゃんと進めていけそうと思ったことも手を挙げたいと思った理由のひとつでした。

依頼内容は、保育関係者を対象にした展示会のイベントで配布するチラシの作成で、イベント終了後も配っていきたいとご要望がありました。

支援募集記事:児童発達支援事業所開設セミナーのチラシ作成


最初に団体紹介や詳しいチラシの内容についてミーティングがあり、そこからスケジュールを組んでいきました。2回目のミーティングでは、手書きのラフをご覧いただきながら、タイトルのスペースや表現、テキストの文字量などについて提案し、参考資料をお見せしてデザインのイメージの共有を意識しながら説明しました。その場でご質問やご意見をいただきましたので、説明をしながら少しずつ進めていきました。
3回目のミーティングでは、実際にソフトを使って作り込んだデザインを提出し、メールで細かいお戻しをいただきながら完成に近づけていきました。

あらかじめ日程が決まっているイベントで配布することが決まっていたので、全体のスケジュールが1か月ちょっとというたいへんスピーディーなプロジェクトでした。
GRANT上でやり取りする団体さんが初めてだったので、通常のスケジュール感もわからず、とりあえず今回は間に合わせるしかないと思って空いた時間をみつけてわーっと進めたという感じでしたね。

成果物(チラシ)


デザインは、発達わんぱく会さんのウェブサイトとにらめっこしながら進めました。にわとりやヒヨコのイラストはもともと発達わんぱく会さんのロゴに入っていて、そこからアイデアが浮かびました。きいろのベースカラーはウェブサイトや職員の方のユニフォームから引っ張ってきました。
デザインに関する細かなご指示は特にいただかなかったのですが、堅苦しくなく、読みたくなるチラシを意識しながら取り組みました。また、保育関係の方が対象というお話だったので、保育関係の方に届くデザインってどんななんだろうというのを調べたりしつつ、明るい、ポジティブなイメージのデザインにしてみようということで今回のデザインに着地しました。

成果物(ポスター)


成果物としてチラシのほかにポスターを納品しました。実はポスターは最初の予定にはなかったんです。チラシの初稿を提出した直後くらいに「この感じでブースに飾るポスターをお願いしたいのですが」というお話があって途中から取り組んだのがB1ポスター3種類です。ポスター3種類くらいだったらできるかな?と思って結構スピーディーに作りましたね。最初の提案からあまり修正もなかったので、大丈夫、できそうという気持ちをもって取り組みました。

プロジェクトはすべてオンラインでやり取りを行いました。納品後にちょうどコロナが落ち着いたタイミングだったので、そのときに一度、教室の見学にも伺って初めて直接お会いすることができました。

発達わんぱく会さんのGRANTインタビューはこちらからご覧いただけます。
ふなボノさん~大好きな町、船橋のプロジェクト
次にエントリーしたのは「ふなボノ」さんの「活動紹介チラシの作成」のプロジェクトです。千葉県船橋市の団体さんと支援したい個人の方をマッチングして船橋をもっと盛り上げていこうという内容のプロジェクトの広報チラシでした。

支援募集記事:活動紹介チラシの作成


手を挙げた理由は船橋市で活動されている団体さんだったっていうことが大きいです。今は船橋市の外に住んでいるんですけど、学生時代は船橋市で過ごしました。船橋は友達もたくさんいますし今でも大好きな町なんです。船橋で活動されている団体さんがあるんだなというのを知って、何かしらやるしかないと思いました。プロジェクトに「気になる」※を付けていたら、団体の方からもお声掛けをいただきまして、ぜひという思いでエントリーさせていただきました。

「気になる」:参加者が気になるプロジェクトにブックマークを設定できる機能のこと

最初は対面でふなボノのメンバーの皆さんとわたしでお会いし、新しく始まる「ふなボノ+(プラス)」のプロジェクトの概要を伺いました。それが7月9日ですね。タイトルとなるプロジェクト名はチラシのメインになるところですがまだその時は決まっていなかったので、内容のテキストとともにご支給をお待ちして、受領した7月下旬からデザインに着手していきました。2週間後となる8月10日頃にデザイン初稿をご提出したと思います。

デザインは2案提案しました。その中から1案を選んでいただいて、そこからオンラインで打ち合わせをしたり、直接お話をさせてもらいながらブラッシュアップしていったというような感じですね。基本的にはわたしが制作したものをベースとしてそんなに大きく変わることもなく、テキストを調整しながら納品までスムースにできたかなと思っています。ふなボノの皆さんもわたしの意見を汲んでくださったのでありがたかったことを記憶しています。

成果物(チラシとロゴ)


カラーリングは、ふなボノさんのもともとのロゴがきいろやみずいろがキーカラーだったので、ロゴと離れないデザインがいいなと思って参考にしつつ、でもふなボノ+の新しいオリジナル感も欲しいなとオレンジも使って制作していきました。チラシと一緒にロゴも納品させていただきました。
触れてこなかった社会課題を知るきっかけ、自分の自信に
よかったことは本業では絶対にかかわりを持てなかった団体さんと出会えたっていうことですね。普段は、皆さんそうだと思うんですけど、利益を生むための仕事が主なんですよ。それももちろん立派な仕事ではあるんですけど、社会課題に直接的取り組んでいらっしゃる団体さん、NPOさんとこういったつながりを持てる、こういう出会いの場をいただいてすごくありがたかったっていうのはありますね。知らない団体さんと出会うことで自分が今まで全く知らなかった、触れてこなかった社会課題を知るきっかけにもなったので、そういう意味でもすごく勉強になったなと思ってそこもよかった点だと思っています。

GRANTにエントリーする前の自分とした後の自分って結構違う、いろいろ経験した後の自分と前の自分では全然違うなと思っています。それまでは、本業の中のわたしぐらいしかメインではなかったんですけど、そこじゃない全然知らないわたしがいて、そこでもすごくほめていただいたりとか、活躍できる場所があるんだなというのを知れたっていうのはすごく大きかったなと思ってます。12月からはフリーランスでがんばってみようと思っているので、踏み出すための自信につながったなと思ってますし、すごくいい経験だったなと思います。
自由にデザインできたことにやりがいを感じました
普段の仕事ではクライアントがイメージを固めた状態で依頼をいただくということが多かったことに対して、GRANTではこうしたいというのが明確ではない状態で依頼をいただく印象があってそこは異なる点で新鮮に感じました。 そういった中で、自分で情報収集したり、こういうテイストだったら喜ばれるんじゃないかと考えたりというリサーチのステップが重要と思いました。たいへんではありつつ普段の仕事と異なるポイントで、自由にデザインを作れるっていったところではすごくやりがいはあってよかったと思います。

当時の仕事は波があって、急に入ってくる仕事もあったりするのでスケジュールがたてづらいなというところがありました。ある程度の予想はしてたんですけど、そこを自分でうまくハンドリングするのは難しかったというのはありますね。忙しい中でどれだけ時間をうまく作って取り組んでいくかであったり、仕事の波の感じを見て結構いま余裕あるなっていうときにできるだけ早め早めにどんどんやってしまうのは大事かなと思いながら取り組みました。
とりあえずエントリーしてみることをおすすめしたいです
GRANTは、気軽に参加できるところがいいですね。わたしも後のことは考えずにとりあえずやってみようかなっていう気持ちでエントリーしたのが最初だったので、気軽な気持ちで社会参加、社会貢献できるというのが醍醐味かなと思いました。 気軽に参加できるという点に通じるんですけど、すごくしっかりサポートされているなという印象があって画期的でいいなと思いました。スケジューリングや進め方、最初の打ち合わせの前に確認した方がいいことなど、それぞれのステップごとにアドバイスをいただけたので、そういうのがすごくありがたいなと思いました。初めて参加する方は右も左もわからず、どうやって進めていったらいいんだろうというのがあると思うので、そこを強くサポートしていただけるのはよかったなと思いました。

ちょっとでもやってみたいなっていう気持ちがある方はとりあえずエントリーしてみることをおすすめしたいと思います。初めての方でも迷いなく進めていけるようなシステムがあるのでうまく活用してどんどん自分が思うように支援を進めていったらいい。こういう経験って、普段の仕事だけでは絶対できないと思いますし、自分で選択してそこから得た経験ってすごく自分の自信にもなるしたくさん得られることがある。とりあえず気になる方はひとつやってみたらいいんじゃないかと思います。


※掲載内容は2023年10月取材時点のものです。