経験者インタビュー

[団体とコーディネーターに聞く]
全国の方から支援の可能性が!
思い描いていた仕組みがGRANT

小柴智美さん、葛西裕美さん
居場所づくりを支援されている青森県社会福祉協議会さんが立ち上げたGRANTコーディネーターが「あおもり『みんなの居場所』プロジェクト」。登録団体として青森県八戸市で2018年からこども食堂を運営しているのが「ちょうじゃこども食堂」です。
お二人にお話しを伺いました。
第1部:【団体】ちょうじゃこども食堂 小柴智美さん
青森県八戸市でこども食堂を運営しています
「ちょうじゃこども食堂」というこども食堂を青森県八戸市で運営しています。2018年の9月から活動を開始しました。独自の施設を持っていないので、公民館の施設を利用して地域の方に来ていただいて一緒に食事を取っていましたが、コロナになってからは会食スタイルでは実施できませんでしたので、いち早く食料品の無料配布を行うフードパントリーに切り替えをして活動を休まずに続けていました。

フードパントリーの活動では、ゆっくりお話する時間がなかなかとれずつながりがどんどん薄くなっていくような感じがありました。子供たちには一緒に食事が取れない中でもなんとかこども食堂に来てほしいと思い2020年7月から学習支援を始めました。公民館が休止の時はやむを得ずお休みしましたが、それ以外の時は毎月1回、学習会で子どもの学習の支援をしています。
2023年4月からこども食堂を再開しましたが、学習支援は続けてほしいという保護者からの要望もありますので、いまは学習支援の後に一緒にご飯を食べるという活動を行っています。

活動をしている中でちょっとした困りごとがあった時には、地域のコミュニティのつながりを頼りにしてたんですけれども、私たちが必要とするスキルを持っている方となかなか出会えない、そうすると行き詰まってしまいそこから先に進めなくなっていました。そんな時にGRANTのお話を聞いて、小さなコミュニティを飛び越えて日本中から支援者を募ることができるということをお聞きして、こんなサービスがあるならばぜひ使ってみたいと思って利用することにしました。
関東在住のプロボノの方々と2つのプロジェクトに取り組みました
依頼した支援内容は2つあります。1つは「シンボルマーク、ロゴの作成」で、もう1つは「ホームページのリニューアルと運用方法のレクチャー」です。

支援募集記事:シンボルマーク・ロゴの作成

これまでチラシやホームページのイラストはフリー素材を使っていました。一目見ただけで、遠くから見てもすぐに「これはちょうじゃこども食堂だな」とわかるような、オリジナリティがあるシンボルマークを作って、ちょうじゃこども食堂をもっといろんな人にアピールしたいなと思ったことが支援をお願いしたきっかけです。


支援募集記事:ホームページリニューアルと運用方法のレクチャー

こども食堂のホームページ自体は既にあったのですが、Wixの無料版で作っていましたので、更新するとレイアウトが崩れてしまうことがありましたし、もっとクオリティを上げたいとも思っていました。助成金や寄付を検討している方や企業の方がホームページを見たときに、信頼できるホームページになっていないんじゃないかなっていう、漠然とした不安感があったんです。そういった意味で、見た方に信頼していただけるようなしっかりとしたホームページを作りたいと思っていました。また、今のホームページはこども食堂の開催日の告知や活動内容の紹介にとどまっているので、寄付やボランティアの募集の内容を掲載するなどもっと充実させたいという思いもありました。
内容をもっと充実させて、見やすくて使いやすいホームページにリニューアルするためにはきちんとした専門のスキルを持った方にお願いしたいと考えました。リニューアルをお願いするだけでは自分たちで更新ができなくなってしまうという心配もありましたので「運用方法のレクチャー」についてもお願いすることにしました。

成果物:リニューアルしたホームページ


募集記事では、こども食堂の活動内容について見る方がイメージしやすいようにできる限り詳しく書きました。支援してくださる方が「応援したい」と思ってもらえるように、自分たちのこども食堂に対する思いや熱意が伝わるよう理念や目指しているところなどについても記載するなど、ぜひ応援したいと思っていただけたらいいなと思って準備しました。
プロジェクトの進め方
シンボルマークとロゴ作成、ホームページのリニューアルと利用方法のレクチャー、両方のプロジェクトともに、複数の方が興味を持ってエントリーしてくださいました。
面談では、GRANTのシステムから「こんなふうにやればいいですよ」というアドバイスのメールが事前に届きましたので大体それに沿った形で実施しました。だいたい1時間弱くらいの感じで進めたと思います。面談の時は、こちらからこども食堂のこと、運営団体のこととか地元八戸についてお話しました。支援してくださる方からもお仕事のことやGRANTで今までにどんなプロジェクトに関わってきたのかっていうようなお話をお聞きしました。その後に、どんなことをお願いしたいのか、具体的にいつ頃までにお願いしたいのか、いつ頃までにどんなスケジュールでやっていくのかっていうような、プロジェクトの進め方についてお話をしました。
エントリーされた方のプロフィールや過去に行ったプロジェクトの成果物を確認した上で、自分たちのイメージに1番近い方にお願いしました。お二人とも関東在住の方です。

GRANTのシステムには、連絡を取るためのメッセージ機能やファイルや画像を添付できる機能もあります。お一人とはGRANTのシステム上でやり取りを行い、もう一人の方とはこども食堂のメールを使って連絡を取り合いました。
どちらの方も関東在住で遠距離ですので直接会ってお話しするってことはできないのですが、打ち合わせは全てZoomを使ってオンラインで行っています。都合のつけやすい時間帯はあらかじめお聞きしていて、私たちが合わせるような形で進めています。お互いに時間を合わせてZoomで打ち合わせができるような形をとっています。
地方で活動するわたしたちにとってありがたいサービス
こども食堂をやっていく中で、この活動を広げていく上でたくさんの方に知ってもらうことがとても大切だということを感じていました。ですが、自分たちにできることっていうのはとても少なくて、できる範囲でSNSを活用して情報を発信していましたけれども限界を感じていました。地域のコミュニティを頼ってみても、私たちが必要とするスキルや経験を持っている方となかなか出会えず、ある意味それがネックになっていました。
ロゴやホームページの作成は、プロの方に依頼することもできたかもしれませんが、どこのこども食堂やNPOさんも一緒だと思うんですけれども金銭的に非常に難しい状況でした。GRANTを利用したことでスキルを持っている方と出会うことができたことはとても助かりました。支援を申し出てくれた方にはとても感謝しています。

オンラインで全て完結できますので、地方で活動する団体にとってもとてもありがたいサービスだと感じています。縁もゆかりもなかった参加者の方が、遠く離れたところから自分たちの活動に賛同してくれて、謝礼がなくても応援してくれる方がいたことがものすごく嬉しくて、このことが今後活動を継続していく上で自分たちのモチベーションとなりました。

サービスグラントのスタッフさんには、プロジェクトの進め方が分からない時など問い合わせをすると丁寧に教えていただき、プロジェクトの進行に合わせて、面談の進め方のコツであるとか、メールの内容とか、そういったものを具体的にアドバイスいただいたので大変助かりました。
氷都(ひょうと)の八戸をモチーフとしたシンボルマークができました

成果物:シンボルマーク


シンボルマークのプロジェクトは2月に完了しました。面談の時に「八戸は氷都と言われていて、雪はあんまり降らないけど道路が凍ったりする土地なんですよ」とお話したことを参加者の方が覚えていてくださって、コンセプトがきちんとあったうえでシンボルマークを考えてくださいました。

ロゴはシンボルマークを基に作りました。参加者の方から「将来、幟(のぼり)を作る時には縦のバージョンがあったらいいと思います」というプロとしてのアドバイスがあって縦の版と横の版ができました。色々考えてくださってありがたいと思っています。

成果物:ロゴ


もしも自分たちで作ったら、コンセプトから考えるということもなく、あり合わせでイラストを組み合わせて作っていたと思うんです。こんな素敵なものができてとても嬉しい気持ちです。
コーディネーターの力も借りながらGRANTを活用できます!
私たちの団体は、SNSで発信をしたりホームページやチラシの配布などできる限りでの活動はしているんですけれども、そういうことがまだできていない団体は多分まだあると思います。
最近繋がりができた団体さんは、もう何十年も活動されているけれどチラシもホームページもなく、活動予定を広くお知らせすることに苦労されているようです。ぜひそういった団体さんにGRANTを利用してほしいなと思います。パソコンが使えない世代の方にとってはハードルが高い部分があるかもしれないのですが、GRANTにはコーディネーターさんがいらっしゃるということを考えれば、コーディネーターさんに相談しながら利用を検討することもできるように思っています。
第2部:【コーディネーター】あおもり「みんなの居場所」プロジェクト 葛西裕美さん
想定していたマッチングの仕組みがまさにGRANTでした
わたしたち青森県社会福祉協議会は、「あおもり『みんなの居場所』プロジェクト」という名称でGRANTのコーディネーターを立ち上げました。もともと、社会福祉協議会にボランティアセンターの機能はあるんですけど、私がいる社会貢献活動推進室はボランティアセンターを所管している部署ではなくボランティア活動を含めた市民活動などを支援するということで、こども食堂などを中心に「居場所作りの支援」(「みんなの居場所」プロジェクト)として2020年頃から活動しています。いまは79団体が「みんなの居場所」に登録しています。

運営している人の悩みの多くは、お金がない、人がいないなんですよね。お金については助成金などの情報を適宜発信しているんですが、人がいないということは具体的に私たちもなかなか応援もできないという歯がゆさはずっとありました。社会福祉協議会のボランティアセンターのマッチング機能はそういうところを支援する役割を果たしてきてるところと思うんですけれども、地元の社会福祉協議会に足を運んで相談をすることは、こども食堂の運営者の人にとってはハードルが高いですよね。運営されている方々はもともと役所や社協とかかわりが深い方ばかりではないということもありますし、そういう方に支援できていないというもどかしさはずっとありました。

こども食堂を応援したいとか、協力したいというご相談も結構あります。そういう時は、私たちが直接こども食堂にお連れして運営者の人と会ってもらうという、かなりアナログなマッチングのやり方をずっとやって続けていました。
ホームページを立ち上げて、そこに掲示板を作ってウェブ上でマッチングできるようにしたらいいんじゃないという声もありまして、まさにGRANTの仕組みがそれだっていうことを知りました。これは利用するしかないかなと思ったところ、ちょうど青森県とサービスグラントさんがこの取り組みに力を入れていることを知って利用しようと思いました。
プロジェクトは遠くから見守っています
コーディネーターを立ち上げるときは、まずコーディネーターの名前を決めて、活動について説明する文章を考えてページを整えました。それから、「みんなの居場所」に登録している団体の皆さんに「GRANTという仕組みがあるので登録しませんか」というご案内をしました。団体さん向けの研修会の機会に「会の終了後にちょっと残って説明を聞きませんか」とお誘いして、サービスグラントのスタッフの方に説明をお願いしたこともありました。

関心を持った団体さんには団体登録手続きをお願いして、登録があったら内容を確認して「利用を許可します」というボタンをポンと押します。プロジェクトの進捗や募集記事へのエントリー状況はわたしたちコーディネーターにもメールが届く設定をしましたので、進行については遠くから見守っています。
GRANTの利用は団体のPRの手段にもなります
わたしたちはもっと利用してほしいとすごく思っているんですけど、利用に足踏みする人は多いように思います。理由は2つあると思っていて、1つには、居場所を運営しているほとんどの人たちは平日の昼は別の仕事をしているので、オンラインの研修会すら出てこれない、忙しい人が多いということ。もう1つはオンラインやウェブ上のものがすごく苦手という世代の人たちが運営してることが多いということでしょうか。オンラインが苦手な方には「紙で提出してもらえれば、青森県社協が代わりに登録しますよ」とお伝えしているんですけどまだこういったメッセージがきちんと伝わっていないと思います。

GRANTはすごくいいシステムですし、青森県にはこども食堂がないと思ってる人も多くいる中で、GRANTを見ることで「こんな活動してる人もいるんだ」とわかっていただけます。それに独自にホームページ持っていない団体がほとんどなんですよね。だからGRANTに掲載することは「子ども食堂を手伝いたい」とか「どこにあるんだろう」と思ってる人へのPRにもなります。すごくいい仕組みなんだけどそこをどう広げていこうかなということはちょっと考えているところです。この仕組みが広がっていくことによって、多様な市民が多様な活動に協力していくきっかけになると思っているので、どうにかもう一押し進めていきたいと思っています。


※掲載内容は2024年2月1日に開催した「青森県市町村・社会福祉協議会向けプロボノセミナー」のお話しを再構成しています。
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