経験者インタビュー

住みなれた街での見知らぬプロジェクト
得られたのは、歩んできた道への誇りと
未来の自分に対するほんの少しの自信

土谷一郎さん
家庭用品メーカー勤務
PROFILE
家庭用品メーカーで、情報システム開発業務を担当している土谷さん。本業では、情報システム導入を通じた業務改革や業務プロセス再構築などの経験をお持ちです。プロボノへの参加は今回が初めてでした。
※土谷さんのGRANT参加実績はこちらからご覧いただけます。
千葉県船橋市で活動する団体「ふなボノ」のホームページ立ち上げのプロジェクトに取り組んだ土谷さん。初めて取り組んだGRANTでのプロジェクトの様子や感じたことなどについて、お話しを伺いました。
住んでいる街である「船橋市」の文字を見て、迷うことなく応募しました
もともと、自分のスキルが会社の外でも役に立つのか?を知りたいと考えていました。そこで、知人から聞いた「プロボノ」を探したらすぐに「GRANT」が出てきて、ここで自分を試したいと。報酬が目的ではなかったので、まずは「こんな自分でも使えるなら使ってください」くらいのスタンスで登録をしました。

支援募集を探している中で、ふなボノさんの募集に「千葉県船橋市」とあったのを見つけて、自分が住んでいる街で自分が役に立てるのであればと思い、迷うことなく応募しました。

支援募集記事


今回の募集は「ホームページの立ち上げ」に関するプロジェクトでした。一人でプロジェクトをやった経験はあまりなく、社内で使うウェブサイトなどを作ったことはあったのですが、それを外部向けに、しかも他の団体さんに提供すると考えた時に、自分に果たしてそれができるのか、自信があったわけではないのですが、「やってやれないことはないだろう」ぐらいの感覚ではありました。

会社人生もそうですが、何かをやりたいと思った時には、誰かが何かを助けてくれて、ヒントになるきっかけって、どこかに必ずあると思っています。ただし、放っておけばうまくいくというのではなく、「きちんと準備をすれば、きちんと結果が返ってくる」っていうことでの「何とかなるだろう」という感じです。
団体にとって活動の原点になれるよう、サイトのコンセプトやカラーを整理
今回のプロジェクトは、対話型ゲームなどを通じて市民参加型のまちづくりをされているふなボノさんが、コロナ禍を経て新たに活動を仕切り直すタイミングで、団体の新しい ホームページを立ち上げるお手伝いさせていただくことでした。

ふなボノさんは、船橋の未来を想う人たちが集まって、色々なアイデアを出し合い活動されている魅力的な団体です。そのため今回のプロジェクトは、単にウェブサイトを作るのではなく、これまでの団体の活動を整理して、SNSと連携させながら団体の活動をPRできるホームページが求められている、と感じました。
更に、私は、ふなボノさんが団体自身の持っている魅力とか活動の素晴らしさを、もっと自分たちの言葉で語りたいと考えている、自分たちが旅立ち、また帰ってくる場所、つまり、活動の原点を作る取り組みとしてホームページを立ち上げようとしていると感じました。だから、今回のプロジェクトは、もっとふなボノさん自身が自分たちの魅力に気づき、 もっと輝くための取り組みなのではないかと捉えました。

提案書の中でコンセプトを提案する一ページ


単純にウェブサイトを構築するだけではなく、団体のカラーをサイトの訪問者にわかりやすく伝えるための具体的な施策や、サイトの構成などの背景となるものの整理を主な目的とし、その結果として生み出されるホームページを作る、そんなプロジェクトだったのかな、と思います。
だからこそ、ふなボノさんからは、「団体内部で共通認識を持つことができた」「自分たちの団体ってこういう団体なんだというのを改めて発見した」という言葉をいただけたのだと思います。

従って、プロジェクトの成果物は、公開されたホームページとその背景にあたる設計書になります。この時はこうだった、その考え方をもとにこう整理した、といった設計書があって、それに付随したウェブサイトを構築したというふうに思っています。そして、団体のメンバーが自分たちでもカスタマイズできるように、ノーコードと言われる、プログラミングを使わないで構築されているのがポイントです。今後、団体の活動とともに、どんどん手を加えられて成長していくサイトであってほしいと思います。

完成したホームページ
団体とチャットベースでフランクにやり取りできたのが大きかったです
プロジェクトを遂行するにあたって、手順やスケジュールはあらかじめ引いた上でふなボノさんに提案しました。ふなボノさんがいろいろ協力してくれたので、こんなにキレイに進むことがあるのかというぐらいキレイに、ほぼ予定していたステップどおりに進めることができました。

プロジェクト初期のスケジュールイメージ


プロジェクト期間中はだいたい隔週の定例会という形で全体のスケジュール調整をしながら進めていきました。基本的にオンラインでの打合せでしたが、1回だけ対面で集まりました。

初期においてチャットを使ってチャットベースで話ができたというのは非常に大きかったと思っています。団体の過去のSNSの投稿やネット記事に残っている足跡をたどりながら、この時はどういうことを考えてたのか、とか、どんなことをしていたのか、みたいな話をいろいろ聞きながら、団体が今日に至るまでの過程を一緒に走るような時間が取れました。それは都度集まって話してたら時間がかかったと思うのですが、チャットでフランクでかつカジュアルなやり取りができたことで、お互いの距離が縮まったという点で、メールとは違う良さがあったんだろうなと思います。

ミーティングでは、こちらの提案に対して、積極的に疑問や指摘をいただきました。加えて、その時点での課題を「これは次までに僕がやります」「これは皆さんでちょっと考えてみてください」といった形で整理しながら進められました。このように、すぐに役割を割り振って進められる点は少人数で進められるメリットかなと思います。
会社の名前や肩書ではなく、自分自身が誰かの役に立てると実感できた
転職などの経験もなく、これまで同じ会社で仕事をしてきましたが、ずっとどこかで「自分は会社の中ではそれなりにできるかもしれないが、世の中の誰かの役に立てる力があるかどうかがわからない」という漠然とした不安がありました。

今回、プロジェクトに関わって、団体の皆さんに自分なりに思ったことを伝えた。皆さんは、私を今回のプロジェクトメンバーとして迎えてくれて一緒に歩むことができた。向き合うというより、一緒に走れる関係になれたかなと思っています。
ふなボノの皆さんと、互いの領域に少しずつ踏み込みながら、一緒に走ったこのプロジェクトは私に一つ教えてくれたことがありました。それは、

「すべての人間はみんな特別な存在なのだ」

ということです。言葉にすると何でもないことですが、これまで自分には人と同じようにはできないという気持ちが、どこかにあったと思います。しかし今回の経験は、自分自身にすべての人間を特別な存在と認めるという目と、結果的に自分も他の人間と変わらない普通の存在だと、自分を受け入れる力を与えてくれたと思うのです。

プロジェクトを通じて、会社の名前とか自分の肩書ではなくて「自分自身が誰かの役に立てるかもしれない」ということが少しだけ感じられるようになりました。言葉ではなく、これを実感として感じることは、とても大事だと思います。

月並みですけど、自分がこれまでの延長線で生活をしていたら出会うことがなかった人たちや、気付くことがなかった活動と触れ合うことができるというのは、自分の人生に対して大きなエッセンスをもたらしてくれると思います。今後もGRANTを活用して、いろんな団体に関わり、幅広いかたちで自分のできることを探していきたいと思っています。

※掲載内容は2023年2月取材時点のものです。