経験者インタビュー

リタイア後に移住した南紀白浜
今後の地域貢献を見据えながら
GRANTに取り組んでいます

吉田幸司さん
フリーランス
PROFILE
リタイア後、東京から和歌山県南紀白浜に移住した吉田さん。地域への貢献を模索する中でGRANTに出会いました。仕事で培ったウェブやPRのスキルを活かしてGRANTプロジェクトに取り組んでいます。
※吉田さんのGRANT参加実績はこちらからご覧いただけます。

2024年3月の参加者登録以降、続けて4件のオンライン相談を支援、現在は3件のプロジェクトが進行中の吉田さんに、オンライン相談の活用法など、吉田さんならではのGRANTの使い方や想いについて伺いました。
東京から和歌山県南紀白浜に移住しました
半年前に東京でのフルタイムの仕事をリタイアして、和歌山県の南紀白浜に移住したところです。東京ではウェブやPR関係の仕事をしていました。いずれはここの地域活性化にかかわりたいと思い、まずは具体的な経験を積みたかったのでNPO支援について調べていたところ、GRANTを見つけて興味を持ちました。
実際にどういう社会課題があるのかと勉強の意味も含めて参画した形です。可処分時間はありましたし、自分が今までやってきた経験の中からお手伝いできることや自分の知見のアップデートもできるんじゃないかという動機で始めました。

この町には縁があり、温暖な気候と聞いてたので移り住みました。引っ越したのは冬でしたが、ゴールデンウィーク前ぐらいからかなり暖かくなりました。夏は観光客ですごく賑わうと聞いていますが、それ以外のシーズンは静かな土地という印象です。

人口が2万人ぐらいの町ですし、ちょっと出歩くといろんな人と知り合って話を聞くことができます。少子高齢化や空き家問題など全国共通の課題の話がどんどん出てきます。人口も徐々に減っているようですし、主要産業が観光に偏っていて観光客から見ると魅力的な土地ですが、長く住んでいる人にとっては多少の住みづらさもあるのではないかと思います。ワーケーションや移住の候補地として魅力のある地域だと思いますが、以前と比べてだんだん町としての機能は欠けてきていると聞きます。1人1台車を所有している世帯が多い地域ですし、近隣の町に行くとショッピングモールや直売場があって買い物はそちらでできます。広域経済圏が形成されているので行政区分とは関係なしに暮らしているんですけど、町として考えると課題があるのは確かですね。東京に住んでいた頃には見えなかった地方都市ならではの社会課題が実感できるようになりました。
自分でも支援できる分野があると思いました
2024年3月にGRANTの参加者登録をしたものの、これまでの職歴での知見が果たして必要とされるものなのか不安がありました。
プロジェクトやオンライン相談の募集記事を見ていると「対外コミュニケーション」で悩んでおられる団体さんが多いという印象がありました。活動資金獲得とか、活動規模を拡大していくためには支持者、理解者を増やさなきゃいけないですが、そのためのコミュニケーションをどう強化したらいいのかわからないという内容が多いように思い、そうであれば自分でも支援できる分野だなと思いました。

手を挙げるときは、募集記事や活動を見て、団体の取り組む社会課題に自分が賛同できるかどうか、どのくらい熱心に取り組まれているのかということを基準としています。もちろん、どの団体の皆さんも真剣にやられているんですけど、自分としては局所的なところから次の段階に行こうとしている中で新たな課題が見えてきた団体さんこそお手伝いする場面があると判断しています。

これまでの実績は完了したオンライン相談が4件あって、いまプロジェクト3件が進行しているところです。基本的にはウェブサイトやSNSの改善などのコミュニケーション強化を課題とされている案件です。
1時間から1時間半で進めるための、オンライン相談の進め方
オンライン相談の準備として、まず公開されている団体のウェブサイトやSNSを最初にチェックしています。課題点や改善提案、質問などをまとめて、叩き台となるような資料を作って事前に送って見ていただき、ミーティングではそれをもとに打ち合わせをしていくという形で進めます。そうすることで、1時間から1時間半ぐらいで方向性が見えてくるように思います。叩き台が的を射ていてもいなくても、議論のポイントがはっきりします。

各団体さんは、対外コミュニケーションの方向性の決め方がわからなかったり、迷われているところが多かったりするので、まずはこちらからフレームワークを提示して方向性を決めることから始めます。
具体的に、誰に向けて、何を発信するのかをあらためて考えていただいて、ウェブサイトなどが手段ではなく目的化していたということに気づかれると次の一歩につながっていくように思います。
オンライン相談は1回で完結するの仕組みなので、ウェブサイトであればデザイナーや技術者などの方々をどうやって集めるかという作戦を一緒に考え、そこから先のプロジェクトについてお話しして相談を終えることが多いです。
オンライン相談を通してプロジェクト設計に向けた宿題を渡しています
認定NPO法人SEEDS Asiaさんのオンライン相談「ホームページ改訂へのアドバイス」は2回(2件)続けて実施しました。

支援募集記事:ホームページ改訂へのアドバイス


1回目は、団体さんが現状のウェブサイトの改訂案を準備されていたので、それをもとにして議論をしました。ウェブサイトを見る人は、団体さんが何をやってるかの活動詳細よりも、自分が共感できる課題に取り組んでいるのかどうかということにまず興味を持つと思います。だから、コミュニケーション強化のためには共感できるコンテンツをもっと作りましょう、ということを説明して1回目のオンライン相談は終わりました。
その後、団体さんが色々工夫されて「こういうふうにしたらどうだろう」というものを準備された段階で2回目のオンライン相談を実施して、それを実現するためにはどういったプロジェクト設計にするかということについてお話ししました。

オンライン相談は何回やってもいいと思います。今日のゴールはこれで、お互いの宿題はこれですよね、と確認して終える形で進めていきました。いきなり大きなプロジェクトを立てるのではなくて、まずそのプロジェクトを設計するためにオンライン相談を活用するという使い方もあると思っています。
GRANTは自分の知見が役立つ、広がる機会になっている
参加して良かったことですが、自分では把握していなかった社会課題の存在を知ることができたのは無形のご褒美だと思います。
オンライン相談での支援がきっかけでNPO法人命と性の相談室さんの活動を知りました。性教育がちゃんと普及してないことで、女性の側だけじゃなくて男性の側も含めたいろんな社会問題が起きていると。それは元を絶たなきゃダメだということで、性知識を啓蒙していくことを目指すNPOさんです。

自分はなんとなくわかっているつもりだったんですけど、そういうアプローチを知って目からウロコでした。今は学校のカリキュラムの中で教育されてるのかと思ったらそれはまだ不十分で、もう少しちゃんと対策しなければいけない課題だということが新しい発見でした。

もう一つ、自分の知見が役に立つプロジェクトが意外と多いことにも気付きました。
広報業務の経験者がいらっしゃらない団体さんも多いので、広報活動について基本的なことからお話しする機会を持つと、団体さんが「なるほど」とおっしゃることが多かったです。

今はソーシャルメディアのアカウントを自分たちで作って運用されているところも多いですけども、一生懸命ソーシャルメディアのコンテンツ作っても反応がない、どうしたらいいですかという相談もあります。そういうときは自分たちだけがインフルエンサーになって情報を広めようと考えて運用設計していることが多いと思います。そうではなくて、既にNPOの動きに参画してるいろんな方々、パートナーだったりボランティアさんたち、その人たちもインフルエンサーにすると展開が広がっていきます。だから、自分たちだけが一生懸命やるんじゃなくて、いかに輪を広げていくかっていう設計をするといいですよとお話しをすると納得いただけます。

オンラインのミーティングだと、1案件あたり、準備時間も含めても4、5時間の稼働なので、それで貢献出来るのなら嬉しいです。
団体さんには手段に囚われすぎなくても大丈夫ですと伝えたい
期間とゴールがはっきりしていて、逆算してステップを決めて進めるものが「プロジェクト」だと思います。 本来の目的やゴールがあるはずですが、団体の皆さんは「手段」に囚われすぎているようなことも多い印象です。

ウェブサイトやソーシャルメディアはコミュニケーションの手段なので、自分たちの活動がちゃんと伝わって、理解の輪が広がればどんな手段でもいいはずです。目的を達成するための手段が、例えば地域内でチラシを配る方が良いのなら、チラシを作って配ればいいのだと思いますし、チラシを置いてくれる協力者を見つける中で活動への理解も広がることもあると思います。そこは柔らかく考えればいいですね。

コミュニケーションの話だけじゃなくて、他にも手段と目的が混同されたりひっくり返っている場面も見受けられるように思います。NPOさんの活動は社会課題の解決という目的があってやっている。そのために活動計画や取り組みを決めていくなかで、手段だったのはずのものがひとり歩きして「これをやらないといけない」というふうに固執してしまうことがありそうです。解決できればなんでもいいはずで、この手段じゃなくて他の手段を考えるっていう余裕も必要ですし、まず、手段に囚われなくても大丈夫と伝えたいです。
オンライン相談はマッチングのスピード感がいい
オンライン相談はスピード感が魅力だと思います。団体さんの課題やニーズと自分の提供スキルがうまくマッチングした時の進み方、そして、ダメだったら次に行けばいいという切り替えの速さといったスピード感がいいですね。さらに、自分たちの周りにいない人たちとかかわっていく機会を創出するというダイナミックさもいいなと感じてます。

団体さんはもっと気軽にGRANTを頼ってもいいのではないでしょうか。頼んだことが即時解決しなくても、やり取りしていく中での発見が絶対あります。団体さんが率直に手の内を明かしてくだされば、いくらでも助けられることはあると思います。
きっと、あなたの知見やスキルを必要としている団体があると思います
企業内やフリーランサーの立場でフルタイムで働いていると可処分時間があまりないと思いますが、GRANTへの参加は自分のスキルや知見の可視化という面で、それが実際にあるのかどうかもわかるし、意外とニーズがあることも理解できると思います。 特に企業に勤めていると、組織は分業で動いてますし、プロジェクトはどこかから降ってくるものという感覚があると思うんです。GRANTは自分のスキルや知見を棚卸しができる機会と思いますし、他に展開できるもだと知ることもできると思います。ニッチな知見やスキルであっても、どこかにそれを必要としている人や団体があるので、是非やってみることをおすすめします。

私の場合、知見があったのは主にBtoB市場でのコミュニケーションでしたが、GRANTで参画したプロジェクトでは対生活者や対行政のコミュニケーションが課題でしたので、「本業以外の市場」での経験を積む機会にもなっていると思います。
多くの事例にかかわることで見えてくるものに期待しています
近い将来、移住先のいろんな取り組みに参加したいと考えています。その活動が軌道に乗るまで、時間に余裕があるうちはこれからもGRANTには積極的に参画していこうと思ってます。

町おこしや地域課題の解消といった話題は、国内各地のニュース記事を集めて読んでいてそれはすごく参考になります。でも、もうちょっと深いところが知りたい。行政の取り組みだけでは解決しない、行政と民間の草の根的な取り組みが噛み合ったところで本当にうまくいくんだろうと思うところがあって、そういう事例にたくさんかかわって行けば行くほど自分の役割がさらに見えてくるのではないかという気がしています。


※掲載内容は2024年5月取材時点のものです。
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