経験者インタビュー

4月からNPO法人としてスタート!
地域の拠点である小学校の存続を願い
居場所づくりと食の継承にも活動中

柘植賢志さん
NPO法人たかはらんど
PROFILE
NPO法人たかはらんどは、島根県の中部に位置する邑智郡邑南町(おおちぐんおおなんちょう)高原地区で関係人口増加、および地域の基盤として高原小学校の維持を目指して、高原小学校卒業生及び高原地区にゆかりのある方を中心に活動を行っている団体です。
地域の小学校の存続を願う中で、基盤としている毎年11月23日開催のイベント「たかはら市(いち)」を軸として活動を行っています。2023年に最初のGRANTのプロジェクト「運営業務の可視化と改善」を実施しました。2024年4月にNPO法人化されたばかりのタイミングで代表の柘植さんにお話しを伺いました。

小学校があることは地域にとって大きな意味がある
「たかはらんど」は活動開始から5年、今年の4月にNPO法人として新たにスタートしました。高原小学校の存続、児童数増加を目標とし、地域の食材を使った商品開発やイベント企画、移住定住を促す活動などを行っています。
現在の高原小学校の児童数は約40人です。存続のためには高原地区以外の地域の人にもかかわっていただきたい、そのために地域の魅力を発掘し発信していこうと団体の名称を「たかはらんど」としました。この名称は高原小学校の学習発表会の別名として約30年ずっと続いてきたもので、高原小学校が未来永劫続くようにという思いも込めています。 メンバーは、高原小学校の卒業生はもちろん、町外、県外の方もいらっしゃいます。男女比率は女性が8割ぐらいの団体です。

活動の資金のために、地域の食材を使った商品を開発、販売しています。最初は、地域のアイスクリーム屋さんと組んで「タカハラアイス」を作りました。酒蔵が多い地域なので酒粕アイスを作ったり、地域の農家からいただいたビーツをアイスにしたり。アイスクリーム以外ではカツサンドです。町のブランド豚肉「石見ポーク」を使った「タカハラカツサンド」や米どころでもあるので、炊き込みご飯の上にカツがのっている「タカハラカツメシ」を販売しています。商品のラベルも自分たちで作り、どうやって売れるかをみんなで考えて地域のイベントで販売しています。最近は空き家を購入し、改修して飲食店と宿屋を始めたところです。

団体のメンバーはみんな本職があります。専従のスタッフを雇えればいいのですが、まだそこまでの利益が出ていない。自分たちでやってみると経験にもなりますし、チャレンジしてみんなで新しい可能性を開いてる感じです。
今年の4月から地域団体からNPO法人になりました。特に会計が大変なところと思いつつ、みんなで乗り越えようと思っています。今後、スタッフの雇用ができたら最高です。地域で頑張ってる人たちがいるということが少しでも子供たちに伝わればいいと思いながら活動しています。

僕も高原小学校の卒業生です。地域の起点となるのはやはり小学校という思いがあります。今後、小学校は統廃合があるかもしれないですし、いつかは廃校になるかもしれませんが、そこに小学校があるということは地域の皆さんにとって大きな意味があると思っています。子供たちの声がなくなった時点から地域の活力というものは失われてしまう。住んでいる人は大体卒業生なので「みんなでこの地域を守ろう」「いまが踏ん張りどき」という思いで活動しています。
GRANTとの出会いは紹介
団体の活動をSNSで発信していたところ、それを見ていた他県の職員の方からGRANTを教えてもらいました。どうしても団体内ではコアなメンバーに仕事が集中してます。「仕事を分散させるためにもこういったサービスを活用してマニュアルを作ったらどうなんだろう」と紹介してもらったことがきっかけです。
「活用するといっても僕がハンドリングするのなら、かえって仕事が増えるかもしれない」という心配もあったのですが、実際やってみて、団体内のメンバーと仕事内容を共有できると思えましたし、結果として大いに役に立っています。
第三者から見たらどうなんだろうという期待感
募集したプロジェクトは「NPO設立支援における団体の運営業務の可視化と改善支援」です。果たして応募してくれる人がいるだろうかという不安もありましたが、3名からエントリーがあり、最終的にはぐっちさんとユカコさんの2名にお願いすることになりました。

募集記事内容:NPO設立支援における団体の運営業務の可視化と改善支援


僕たちがやっている活動が第三者から見たらどうなんだろうという期待感があったので、あえて複数の方とご一緒することにしました。2人に興味を示していただいて、少しでも役に立ちたいと思っていただいたことが僕たちもすごく嬉しかったですし、いろんな話が聞けて新しいアイデアをいただけたことは良かったです。
それぞれのアプローチ方法が違っていて、仕事の進め方はいろんなやり方があることを僕たちも勉強させていただきました。どちらがいいとか悪いとかではなくて、こういった見方もあるんだなと思いながら、どちらも取り入れて進めることができてすごく良かったと思います。メンバー以上に僕たちのことを考えてくださる姿勢に感動を覚えました。 打ち合わせは2週ごとに大体1時間を目安に行いましたが、だんだん長くなって最後は2時間近いときもありました。

ぐっちさんはチームワークを大切にしながら、懐が深くていろんなものを受け止めてくださる方です。僕たちがやることは突拍子もないことも結構多いんですけど、それさえも受け止めてくれました。応援してくださる姿勢がすごく嬉しかったです。人を重視される方なので僕のような運営メンバーだけではなく他のメンバーの話も聞きたいという話があり、僕たちがどう感じているかだけではなく、他のメンバーがどう思ってるのか、これからどうしていきたいのかを引き出してくれました。僕たちでは直接聞けないことを第三者的な方が入って聞いてフィードバックしていただいたのはすごくありがたかったです。4月の終わり頃にオープンした宿屋の宿泊者第一号になってくださったんですよ。お住まいの関東エリアからスクーターで来てくださいました。

ユカコさんは技術スキルがすごく高い方でした。誰でも見ればできるイベント運営マニュアルを作ってくださったんです。事前に、僕たちのSNSの投稿すべてをチェックしていつどんなことをやっているかを洗い出し、僕が去年作った資料からはイベントを始めるにあたってのタスクを抽出されていました。マニュアルは、出店者募集の応募フォームに自動的に飛べるようになっているなど、細かな点まで配慮いただいていて、誰でも順番通りにやればできるものです。
このマニュアルは11月23日のイベントのために作っていただいたので、今からみんなで活用していこうとしています。なかなかメンバーに周知できていなかったのでマニュアルを準備できたことはよかったと思っています。
たかはらんどを第三の居場所に
イベントではみんなでカツサンドを作るんですけど、集まって話をすることがストレスの発散や地域の情報共有の場になっているようですし「うちらカツサンド作るのがすごい楽しいけ」という声が聞こえてきます。いいコミュニティができているから、毎回行くのが楽しみという人たちもいるんですよね。

昔と違って社会も変わってきて、家族以外のつながり、地域がだんだん薄れている状況があります。そこは都会も田舎とは変わらない。田舎だから地域の結束力が強いかと言ったらそこまででもない。だからこそ第三の居場所が必要とされています。
このあたりでは昔は仏教婦人会があって。地域の伝統的な味を継承する大事なコミュニティになっていました。今は共働きが当たり前ですし会社と家との往復になってしまっていて、地域の伝統の食の継承やツナガリというものもだんだんなくなってきているのが現状です。なんとか地域の食の文化や伝統を守っていきたい。僕たちが積極的にイベントに出て地域の食の製造や販売に携わって笑顔と笑顔が繋がる様な活動が出来たらいいと思っているところです。
11月23日は「たかはら市」
11月23日の勤労感謝の日に「たかはら市」をやっています。500人ぐらい来るイベントを4、5人のスタッフで回しています。僕は主催者ですが昨年はずっと駐車場係をしていました(笑)。

たかはら市は、近くの神社の宮司さんと「最近は神社に参拝に来られる方がだんだん少なくなってきている」という話をしてた時に、ちょうど僕たちもイベントをしようと考えていたタイミングだったことから実現しました。
11月23日は全国の神社で新嘗祭があります。新穀を食べる日です。食べ物の感謝祭だから「たかはら市は11月23日にやろう」ということになりました。地域で住民が困ってることにイノシシの対策があって、このあたりの冷凍庫にはイノシシ肉がたくさんあるんです。イベントに来た人みんなにイノシシ肉を振る舞おうということで、神社で焼肉をする「肉を喰う会」として8年前から始まりました。


「たかはら市2024」チラシ


11月23日が、地域にとって、子供たちにとっては特別な日になればいいと思っています。去年から子供たちが自分たちで企画を考えて主体的に動くようになりました。夏休みの時期から児童クラブで考えて作り上げて、当日まで4か月ぐらいかかっていることになりますね。そんな子供たちが出てきたことはすごくプラスになると思いました。
GRANTは全国の担い手との出会いの場
今後は、飲食店や宿屋を始めたのでそのマニュアルも作りたいと考えています。やりたいことはたくさんありますが今はそこまで手が届いていない状況です。今年の「たかはら市」が終わったら余裕ができるかもしれないのでぜひ取り組んでみたいですね。

GRANTに参加者登録している方はスキルや経験を活かしたいと思っている方が多い印象があります。また、県内だけでなく、全国に向かって募集する仕組みなので能力が高い方と出会えますし、かなり深掘りしてやっていただけることが嬉しいです。そういった意味で「こういうことで困っている」ということがあったらGRANTに投げかけると解決につながるように思います。


※掲載内容は2024年9月取材時点のものです。
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