経験者インタビュー

マーケティングの
スキル経験を活かして
豊かな里山を守りたい

檜垣高志さん
メーカー勤務
PROFILE
メーカーにてプロダクトマネージャーとして消費財マーケティングと新製品開発を約10年間担当。社内外の素材や加工技術シーズを活かした環境志向の新たなビジネス創造にチャレンジ中です。
2019年に仕事の関係で知り合ったサービスグラント事務局の紹介をきっかけに長期・短期の複数のプロジェクトに参加しています。
※檜垣さんのGRANT参加実績はこちらからご覧いただけます。
支援内容「獣がい対策応援消費を拡げるためのネーミング・ブランディング提案」
檜垣さんは、兵庫県丹波篠山市を拠点に活動するNPO法人 里地里山問題研究所(通称:さともん)を応援するふるさとプロボノに参加。さともんさんでは、行政等と「野生動物から守った農産物」を「獣がい対策につながる商品・サービス」として付加価値をつけ、「獣がい対策応援消費」として販売促進するプロジェクトをすすめています。そのメッセージが一般消費者的に伝わりにくい課題を抱えていたため、わかりやすいネーミング開発に取り組む仲間を募集しました。このプロジェクトに参加した際の様子や完了後の感想などを伺いました。
メーカーでのマーケティングスキルを活かして社会貢献
私は生活雑貨や食品容器を製造販売する企業で新規事業の開発の仕事をしています。マーケティングの部署で10年ぐらい新製品開発を担当し、50アイテム以上の生活雑貨商品を開発しました。そのマーケティングのスキルを社外で活かせないかという思いがプロボノ参加の動機です。

ふるさとプロボノに参加し、丹波篠山市のNPO法人里地里山問題研究所、略称さともんさんを支援するプロジェクトに関わりました。丹波篠山は農家さんが非常に多くて、黒豆やお米をたくさん作っていますが、山から鹿、猪、最近は猿などの動物が畑や田んぼを荒らしていく獣害があり、高齢化する農家さんの中には、獣害がいやになって耕作放棄に至るなどの深刻な問題となっています。そこで、さともんさんでは、「応援消費」として都会の人達に黒豆など獣害被害を免れた農産物を購入してもらうことで、そこで得た収益を防御柵の整備など獣害対策に充当、農家さんを支援する活動をされています。この仕組みを「獣がい対策応援消費」という言葉で呼んでいますが、消費者にとってもっと分かりやすいネーミングを考えることがこのプロジェクトの目的でした。

電流が流れる防御柵なども見学


進め方は、最初にスケジュールを約3か月と設定。キックオフミーティングはオンラインで団体代表と顔合わせをした後、団体さんや関係者で開かれているミーティングに1~2回ほどオンラインで参加、加えて、2泊3日の現地訪問でヒアリングと農作業体験をしました。また、獣がい対策応援消費を共に推進されている丹波篠山市の職員の方にもヒアリングに行き、訪問後は、オンラインもしくはメールでやり取りを続けていきました。現地に行って非常に多くの情報が集まったので、それをまとめて、最終的なアウトプットをお出しするまで二週間ぐらい時間をいただきました。成果物としてはパワーポイントで最終提案書をまとめて納品しました。GRANTの場合は、個人単位でのプロボノなので、マーケッター&プロジェクトマネージャー兼任みたいな感じでした。
自分で答えを出すのではなく、団体内部の合意形成を引き出す

丹波篠山訪問時のヒアリングの様子

2泊3日の現地訪問では、農作業体験やヒアリングを行い、トータル11名の方に個別にヒアリングをさせていただきました。すると、獣がい対策応援消費に対する思いがちょっとずつ違っていて、どのように合意形成を図っていけるかに苦労しました。

最終的に団体が思うメインターゲットとしては、遠くにいるけど活動を応援したいと思う人、ガッツリ関わるというよりもライトに関わりたい人で、その人たちに向けて「農作物が豊かに実る里山を残していくことが子どもたちの未来を守ることに繋がる応援消費」のメッセージを届けたいということでした。ネーミングを決めるところがプロジェクトのミッションでしたが、ヒアリングした結果から、私がこうだと思うネーミングやスローガンなどの結論を答えとして出すのではなく、皆さんの中で答えを見つけ出してもらうことを促すように工夫しました。団体の活動意義や目指すところを整理した上でネーミングを私から提案、さともんさんの中心メンバー7~8人で議論していただきました。そして、出てきた答えは「さとえーる」でした。これは里山の里と、応援する、エールを送るっていうメッセージを平仮名で表記されていて、その一言で子どもたちの未来へつなぐ里山応援プロジェクトという意味が込められています。

支援先の団体との関係性を維持する上で、キックオフミーティングはオンラインでしたが、2泊3日の現地訪問の際には、二晩とも飲みながら団体の方や、獣がい対策応援消費に関わる地元の関係者のメンバーの方と、長時間にわたり様々な話題で話をさせてもらったことで、すぐに関係は近くなったと思っています。
また、別のボランティア活動で農家さんの手伝いとか、森林ボランティアもしていて、やはり、農家さんを守りたい、里山を守りたいという団体の明確な目標を持っておられたので、そういったところに足を運んで実際にどんな課題があるのか知りたい、そしてその解決のお手伝いをしたいということがモチベーションになりました。
プロボノのつながりが、仕事のつながりに発展
今回はたまたま、プロボノの経験がその後仕事にもつながりました。親会社が獣害対策製品を開発していて、その実験フィールドを探していたので、団体の代表の方に、プロジェクトの終了時にビジネスベースでの訪問の許可をいただき、その後、同僚と一緒に訪問して商品の共同開発の取り組みをしていこうという話になりました。

これまでに5~6名がチームとなって取り組むプロボノも何回か経験していますが、メンバー同士の横の人脈、つながりが生まれて、異業種の人たちと今も関係が続いています。ふるさとプロボノでは、地域の課題を知ることで、その背後にある社会課題にも意識が行くようになりました。仕事をする時に今まではどんな商品を作ったら売れるだろう、みたいなところにしか意識が行かなかったのですが、視野が広がったところがあります。

50歳を過ぎても現場で様々な活動を続けられることが楽しいので、これからまだまだ働き続ける中で仕事以外にも活躍できるフィールドを自分でも何か用意できたらいいなと最近思ってるところです。丹波篠山市のプロジェクトの少し前に参加した新潟県の魚沼市の取り組みでは、都会と地方を行き来する二拠点生活を実践されている方に出会い、こういう暮らし方もいいなって思いました。プロボノは、自分の視野を拡げ、今後の人生を豊かにしてくれるものだと思います。


※掲載内容は2023年6月取材時点のものです。
※ふるさとプロボノのウェブサイトはこちら。
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