経験者インタビュー

期待以上のものが地域に返ってきた。
ふるさとプロボノの取り組みは
「関係人口」というワードが入り口に

横道 亨さん
交流スペース 彩り
交流スペース 彩りは、佐賀県唐津市厳木町(きゅうらぎまち)で、国土交通省発表の「全国で水質が最も良好な河川」に選出された厳木川を起点とした農ある暮らしができる拠点づくりや情報発信を通した町の賑わいづくりを目的に活動している団体です。
関係人口の増加に向けた取り組みとして情報発信のプロジェクトを実施しました。ご自身が東京からの移住者でもある代表の横道さんにお話しを伺いました。

※ご紹介しているプロジェクトは、2022-2023年度に農林水産省「農山漁村振興交付金(地域活性化対策(農山漁村関わり創出事業))」の採択を受けた事業となります。
3つの事業に取り組んでいます
佐賀県唐津市の厳木町(きゅうらぎまち)で活動しています。もともと2年前に空き家だった場所をリノベーションして、地域の交流拠点「交流スペース 彩り」をスタートしました。

3つの事業をやっています。1つは、月に1回、第3日曜日にこども食堂「きゅうらぎみんなの食堂 彩り」を運営しています。2つ目が学生民泊という事業で、都会の修学旅行生が九州に来たときに、1泊をホテルじゃなくて唐津市内の民家さんに泊まるという教育旅行体験を行っているので、その民家として「彩り」が登録をしています。
3つ目の事業が、GRANTを通じて相談した「お試しいなか暮らし体験住宅」です。町内に2泊以上泊まって町全体を知ってもらいたいと考えています。移住を考えている方に「お試し滞在ができます」という場所なんですけど、なかなか移住っていうのは難しいので、どうやって関係人口を作っていこうかっていうのを頭を悩ましながらやっているということですね。
SNSの広告で「関係人口」というワードに惹かれました
厳木町は平成の大合併で唐津市や周辺の町村と合併して新生「唐津市」となりました。高齢化率は47%で65歳以上の方が半分近い町です。町に県立の高校はあるんですけれど、地域の中学校を卒業した生徒が町内の高校に進学するのは3%ぐらいで、かなり低い数字になってるんですね。高校生になったら厳木町を出てしまうという現実があります。
そういう意味で生産年齢人口ではないですけど、活動の中心を担うメンバーがどんどん高齢化する、さらに若い人たちも出ていってしまうので、草刈りのような維持活動も含めてどうやってこの地域の自治を守ろうかを考えざるを得ない状況なんです。

一方で、活性化に向けてどうやって住民の人たちの心を前向きに駆り立てるのかっていうのを考えた時に、私も東京から来た「外の人」なんですけど、この地に3,4年住んでいると地元の人たちの考え方に寄ってしまって新鮮な思いがなくなってしまうのが課題と思っていたところがあります。新しい方の視点を入れたいなと思って色々情報収集をしてました。
そんなときにFacebookの広告で「ふるさとプロボノ」を知りました。ずっと待ち望んでいたサービスと思いました。こんなのを探してましたっていう感じだったんですね。どうやったらこの厳木町に関係人口作れるんだろうとずっと考えていたので、広告の中でも特に「関係人口」というワードにすごく惹かれました。

プロボノっていう言葉は知っていましたし、他の団体のふるさと兼業、副業のサービスも見ていたんですけど、まだ「彩り」が法人格として活動できていなかったので任意団体でも応募できるっていうことが非常にありがたかったです。これならできそうだなと思ってすぐに団体登録をしました。この仕組みを活用して小さな町に足を運んでくれる人がいるんだったらすごいなって思っていました。
「気になる」登録をしてくださった方に私から声をかけて決まりました
やりたいことはたくさんある中で、最初のプロジェクトとして「【最短2泊3日滞在で参加可能】「お試しいなか暮らし体験住宅」の情報発信のお手伝い」を立ち上げました。

唐津市にも市と委託先のNPOが「お試し移住」の仕組みを作ってはいるんですけど海側なんですよね。厳木町のあたりは山の方なんですけど、これまで山暮らしについて発信する機会がなかったので、独自でやれるならやってしまおうと思ったんです。
どこに発信していこうかっていうのはすごく悩んでたので、「ふるさとプロボノ」の仕組みだったら、プロボノの方も厳木町に呼べるし、情報発信のアドバイスももらえそうというお得感が私の中にありました。

支援募集記事:「お試しいなか暮らし体験住宅」の情報発信のお手伝い


参加者はプロジェクトに「気になる」登録をしてくださっていた方に私から声をかけて決まりました。東京で広告代理店に勤務している方です。コロナの前にチーム型のプロボノの参加経験があって、2回目のプロボノ参加を検討していたタイミングで、前回は東京だったから機会があれば地方でやりたかったとおっしゃっていました。「同時期に募集があった他の地域のプロジェクトにも関心があったけど、最終的に団体の代表である私の情報がインターネットに一番載っていたことや代表の私自身が東京からの移住者という点に非常に親近感がわきました」ということを言ってくれました。「支援の前の段階で、ネット上で代表の情報が見えていたことが安心感につながった」ということでした。

丁寧に言葉を選びながらもいろいろ情報を収集される方で、ヒアリングの場では言葉がさほど多くはないんですけど、それは情報整理だからということで、提案の場になると、整理された情報を示しながらこうしたらいいというのをしっかり提案してくれました。情報をキュレーションする力をすごく感じた方と出会うことができてよかったです。
厳木町全体の魅力を発信する施策を提案していただきました
プロジェクトは8月に始まって11月に完了するスケジュールでした。キックオフミーティング(8/4)や最初のミーティング(8/10)では、私が東京からこちらに移住した理由とか、住んでみてどうかとか、町の現状や課題などをたくさんヒアリングがありました。

プロジェクトのスケジュール


まず現状と目指すところをしっかり押さえつつ、どこにギャップがあって、そのギャップの中で優先順位を決めてアクションをどうしようかというのを、プロボノの方が本業で培われた知見を活かしてしっかり考えていただきました。
ギャップに対してどうアクションしていこうかというのが現地滞在の1回目です(8/26-28)。現地滞在の2回目(10/20-22)はキーマンの人たちに会えるといいねって話になったと思います。事前に現地滞在の段取りを決めて、地域作りを頑張ってる仲間とたくさん会ってもらいました。お話ししたのは10人くらいなんですけど、イベントや会合に参加したのであったのは100人以上になるんじゃないかと思います。
例えば、2回目の現地滞在のときにはちょうど年1回の厳木町の体育大会があったんです。毎回オープニングで佐賀弁のラジオ体操をやるんですね。それがプロボノの方にとってめちゃ感動的な経験になったらしくって。「ゆくゆくは、ふるさとプロボノのメンバーで1チームを編成して体育大会に出てもいいね!」みたいな話で盛り上がりました。

2回目の現地滞在では、1回目にお会いした方と改めてお話ししましょうということもありましたし、1回目でお会いできなかった方と会ってもらったり、広げるのと深めるのと両方やった感じです。広げるのはいくらでもできたんですけど、特にやりたかったのは深めることだったんです。最終的にプロジェクトの成果物は「彩り」の情報発信にとどまらず、町全体の情報発信に変わっていきました。「彩り」という交流スペースにとどまらず、厳木町の魅力を発信する6つの施策を提案していただく成果物となりました。
プロジェクト完了後の今でもプロボノの方に関わってもらっています
成果物にもあった内容なんですけど、提案のあった「無人駅の未活用スペースの活用」はさっそく取り組んでいます。この駅は利用者の9割が厳木高校の生徒なんですけど、鍵がかかっていて未活用のスペースがあったんです。一方で、駅の待合室は狭いですし、生徒は雨の日も酷暑の日も屋根がないところで電車を待たなければいけなかったんですね。ちょうど、プロボノの方が来られる半年前くらいに、高校の生徒会と教育振興会(いわゆる、PTA)が立ち上がり、鉄道会社(JR)に開錠してもらって、このスペースを高校生のために活用しようというプロジェクトがスタートしました。

成果物の一部:無人駅舎の活用提案


実は、彩りの情報発信プロジェクト完了後の今でもプロボノの方にはこの「厳木駅わいわいプロジェクト」に携わってもらっています。プロボノの方のアイデアを混ぜながら「厳木駅わいわいプロジェクト」が進んでいます。
具体的には、月に1、2回、その際にアドバイスをもらったりしています。ちょうど今は、6月2日「無人駅の日」に大きなイベントを打ち、佐賀県内で一番のモデル無人駅を目指そうと思って会議を重ねているところです。

成果物の一部:「彩り」のコンセプト


プロボノの方からは、「彩り」に関して「現地滞在でこんなにたくさんの地域の方や資産を見ることができるとは思わなかった。彩りがあるからこそ町の地域資源をたくさん知る機会になった」と言っていただいて、そこから「パレット」というコンセプトにしたというのを聞きました。これをこれからの「お試しいなか暮らし体験住宅」民泊事業のコンセプトにしていけるといいなと思っていて、具体的には、今年の秋には彩りのお試し住宅を事業としてリリースしようかと考えています。
期待していたこと以上のものが地域に返ってきました
プロボノの方との出会いが非常に大きかったです。中身が濃い成果物もそうですし、こんなに整理をしていただけたことがありがたかったです。この成果物をプロボノの方が現地滞在中に会った地域の人たちにも見せたんですけど、外の視点もそうですし、プロボノの方と実際に話して「厳木町っていいですよね」って言ってくれたことが地域の方の活力になるっていうことを目の前で見たことがすごくいい機会になったと思います。本当にふるさとプロボノに期待していたこと以上のものが地域に返ってきたというふうに思います。

せっかく東京の方を2泊3日でお迎えするんだから、この際、厳木町のツアーを組んでみるテストの機会になればとも考えたんです。この町でどうやって時間を使おうとか、誰に会ってもらうかとか、町の資産と観光拠点を整理する機会になったように思います。
町の誰にどのタイミングで声かけようかっていうのは結構苦労して考えましたし、最終的に日程が合わなくて会えなかったも方もいました。「プロボノ」というものを理解いただくのは難しいと思ったので「東京から知り合いが来るから今の皆さんの活動をお話してもらえませんか」っていう言い方でたくさん地域との協力も得られました。さらに地域住民ともつながりが濃くなったのかなと個人的にも思っています。毎月10人近く人口が減っていて、地域維持、自治活動には本当に苦労してはいるんですけど、最終的に町(一部の地域住民)のつながりが強くなったことがよかったと思います。
まず1件掲載してみることで始まっていくように思います
プロジェクトをやってみて、シンプルに「ふるさとプロボノ」で地域が元気になっていく可能性があることを確信しました。自分たちの団体の思いとか活動を言葉にしたり、文章に落とし込むことは結構大変なことなんですけど、そこは事務局のサポートに頼ってもいいと思います。情報がぐちゃぐちゃでも、混乱していても、これから活用を検討している団体さんには「まず1件掲載してみるというのはどうですか」というのを伝えたいと思いました。

次に募集してみたい案件は考えています。それこそ今回はプロボノの方に全体を整理していただいたんですけど、私も、こども食堂のお手伝いしてるスタッフの皆さんもやりたいことができてないことって結構あるように思うんですね。そのあたりの、やりたいけどできていないことを整理してもらうためにGRANTを活用することもあるんじゃないかと思いますし、そこから派生的に見えてくることもあるように思っているところです。


※掲載内容は2024年5月取材時点のものです。