経験者インタビュー

[GRANTコーディネーターに聞く]
チーム型もGRANTも活用して
外部の方とつながって協力を仰ぐ

赤木真紀子さん
ちばふるさとプロボノ
PROFILE
「ちばふるさとプロボノ」は千葉県の認定NPO法人 ちば市民活動・市民事業サポートクラブ(通称 NPOクラブ)が運営し、2023年よりGRANTのコーディネーターとして活動しています。「GRANTアワード2024」では「2023コーディネーター賞」を受賞しました。
※「ちばふるさとプロボノ」さんのコーディネーターページはこちらからご覧いただけます。
千葉県事業でのチーム型プロボノのコーディネート経験をもとに、2023年にGRANTのコーディネーターとして活用に踏み出された「ちばふるさとプロボノ」さん。実施した7つのプロジェクトの取り組みや気づきについてお話しを伺いました。
チーム型の経験からGRANTへ踏み出しました
認定NPO法人 ちば市民活動・市民事業サポートクラブ(通称 NPOクラブ)は、2000年の設立以来、千葉県全域を対象にNPOの支援や地域づくりのコーディネートなど市民活動を促進する活動を行っている中間支援団体です。
2019年に千葉県の事業でチーム型のプロボノ事業を始める際にサービスグラントさんにお世話になり、3年間で延べ20のプロジェクトを実施しました。そんなつながりから「ふるさとプロボノ」にお誘いいただき今回GRANTにコーディネーターとしてかかわった経緯があります。

以前から情報をいただいていたので、一人での参加が主となるGRANTの存在は知っていたのですが、チーム型以外の個人のプロボノワーカーとご一緒する事業は初めてでしたので、どうかかわりを持てるかというところで躊躇があったんですね。
そのなかでサービスグラントさんが「ふるさとプロボノ」※という事業を全国で展開しているということでお声掛けいただき、マッチングのシステムとしてGRANTを活用できますとご紹介いただいてやっと「やってみよう」と踏み出すことができました。

※「ふるさとプロボノ」は、2022-2023年度に農林水産省「農山漁村振興交付金(地域活性化対策(農山漁村関わり創出事業))」の採択を受けた事業となります。
システムを使いこなすとマッチングにつながることがわかってきました
それまでチーム型をコーディネートしてきた中で、GRANTは個人が中心になってくるところで戸惑いもありましたし、システムを使いこなせないとうまくマッチングできないというのは感じたところです。私がまだよくわかってないところで団体さんに入力の仕方などをアドバイスするというのはなかなかもどかしかいものがありました。
また、募集記事をアップしただけだとなかなかマッチングまでつながりづらい。「参加者へお声がけする仕組み」の使い方(参考:「気になる」登録者の確認とお声がけについて)がわかってから試してみたところ、思った以上に反応や手応えがあって結果につながったので、使い方次第で結果に幅があるのかもしれないと思いました。
これまで3団体で7件のプロジェクトが実績となります。
「ふるさとプロボノ」の後押しで南房総地域の状況を直接伺って回りました
南房総市の団体(くじらのもり)さんは新しく事業を始めたタイミングということを知っていたので、何らかのサポートが必要かもしれないという前提でこちらからお声がけをさせてもらいました。
次の団体(Kupono(くぅぽの))さんは、くじらのもりさんが観光協会を紹介してくださり、南房総に足を運んで支援が必要な団体さんがいればというお声がけの中で出会った団体さんです。
もうひとつの御宿町の団体(東南風の製造場)さんは、サービスグラントさんの方からご紹介をいただきました。

私たちは千葉県全域を活動範囲とするなかで、2019年に台風被害があった南房総は支援に関わったその後が気にかかっていました。プロボノで地域を後押しできるようなことがあればという思いもありましたので、千葉のプロボノ経験者の方のサポートもあり、思い切って足を運んでみようという感じで伺いました。「ふるさとプロボノ」でこのような機会がいただけてとてもありがたかったです。
また、地域の状況を直接伺って回ることで、高齢化する地域の状況など肌で感じて知ることができたというところがありました。事業者さんをプロボノの支援対象にしたのは今回が初めてでしたが、事業者さんが地域を先行して引っ張っているということを感じました。高齢化による担い手不足や地域の状況から先行して動きたい事業者さんにとって、外部とつながれるプロボノが効果的な場面があることも感じました。
チーム型と同じように伴走したことで参加者の方と関係性を築けました
特に印象に残っているのは、くじらのもりさんとの初めてのプロジェクトです。事業を2023年の春に立ち上げ、夏頃にプロボノに関わり始めたという状態だったので、団体さんご自身も精力的に動いていらっしゃるところで外のいろいろな意見を取り入れたいと思っているタイミングにピタッとはまった感じだったと思います。
「海、里の幸を楽しむアウトドアツアーのファン開拓のための提案書作成」というマーケティングの内容のプロジェクトでした。

支援募集記事:海、里の幸を楽しむアウトドアツアーのファン開拓のための提案書作成


このプロジェクトは、GRANTの経験が豊富でマーケティングに関してもとても高いスキルをお持ちの方とマッチングすることができました。かなりきめ細かい提案を出していただいたので団体さんの満足度もとても高かったです。GRANTでのプロボノは未知の分野だったので、打ち合わせにはほぼ毎回私も同席させていただきました。すごいなGRANT、というのを感じたのがこのプロジェクトでした。 団体さんの「外部の力を得ながら今後について考えたい」「都会の状況や対象者の心理も知りたい」という気持ちがあったところにピッタリきたのかなと思います。
支援された方は遠方から現場に足を運んでくださいました。来てくださることは気持ちとしても嬉しいですし、応援にもつながるので、そういったところでも団体さんの後押しになったのかなと思います。

このプロジェクトは、団体さんにヒアリングを何度かさせていただいているなかで、主に広報とマーケティングに関わるところを欲していらっしゃるんだなというところがわかったので、参加者の方から手が挙がりやすい形でプロジェクトにしましょうというお話しをさせていただいて立ち上げました。サービスグラントの方からもご意見をいただき、教えていただきながら決めていった感じです。
団体さん自身が何をしたいか、何が必要かということがしっかり分かっておられる団体さんだったので、ワーカーさんの提案にもつぶさに応えて、ご自分たちでプロボノの成果を確かにされた印象があります。

実はこの時のワーカーさんにはとても助けていただきました。このプロジェクトのほか、他の南房総や御宿の団体さんのプロジェクトもサポートしていただいて、個人でプロボノを続けておられるワーカーさんのスキルの高さに感心しながらご一緒させていただきました。
私たちはそれまでのチーム型のプロジェクトでもしっかり伴走しながら進めることが常だったので、ミーティングの同席は自然な流れだったのですが、そうすることによって、困ったら頼っていただける関係性が、団体さんやワーカーさんと築けたのかなと思います。
チーム型の良さを再認識する機会にも!
同時に、チーム型のプロジェクトは、やっぱりその良さがあるなと改めて感じました。

参加する方にとっては一斉に始まることで参加のきっかけがつかみやすいこと、チームメンバーのサポートで気軽に参加できることや、チームでの楽しさや刺激もあるからやってみようという気持ちになって、手が挙げやすいなどの魅力があるのかなと思います。プロジェクトの内容によっては、専門的な技術の提供が主になる場合など個人の支援の方が向くものもあります。
団体さんにとっても、チーム型は作業範囲が広いので大きな成果が得られる場合も多いのですが、それなりに準備も必要です。団体さんによっては、GRANTで個人の方をつなぐほうがよい場合もあるように思いました。
コーディネーターとしてのかかわり
プロボノワーカーの皆さんは、GRANTのようにいつでも応募できると言われると、手が挙がらなかったりします。今までチーム型のプロボノに参加されていた千葉のプロボノワーカーさんにGRANTもおススメしたのですが、あまり登録はありませんでした。チーム型の方がよいという方が多くて、それぞれ好みもあるようにと思いました。
でも、「こういうプロジェクトがありますけどどうですか?」と個別に声をおかけすると協力してくださったり、状況を見ながら、参加してみようと思うタイミングをいかに作れるかがコーディネーターとしては大事なのだと感じました。

プロジェクト期間中の打ち合わせは9割ぐらいは同席しています。途中、耳だけということもあったんですけど、同席することでプロボノワーカーのお人柄やお得意なこともわかりましたし、私自身の学びにもなっています。
コーディネーターとしては、コミュニケーションのなかでの思い違いや溝が深くなる前に良い方向に向くようお声がけしようというのは心がけるようにしています。
今年は習志野市との協働事業に注力します
今後ももっと「ちばふるさとプロボノ」だけでなく、千葉県内にプロボノを広めていきたいという思いがあるので、プロボノの魅力をもっと伝えられるよう、これまでプロボノを経験した方々に運営にもできるだけ関わってもらえるようにという形で少しずつ進めています団体さんから要請があればGRANTの力もお借りしながら、2024年度は千葉県習志野市の事業に注力しています。

習志野市は生産年齢人口が全国平均より豊かな一方で、都内や市外へお勤めの方がとても多い。そういう意味では豊かな現役世代の人たちが地域との関わりをもつきっかけとして、プロボノがフィットするのではと提案していたところ、市の担当者に以前から関心を持っていただいていて、やっと今年、協働事業という形で実現できました。
チーム型のプロボノプロジェクトの企画・運営に、NPOクラブの事業として協働という形で取り組みます。この事業は「習志野市内に在住、在勤の方を優先します」という方針はあるのですが、初年度なので市外の経験者の方などにも入っていただけると安心感がありますので、関心をお持ちの方にご協力いただければとてもありがたいと思っています(「ならしのプロボノ」社会人ボランティア募集)。
GRANTの活用で外部の方とつながる可能性が
GRANTは地域に限らず、全国の関心のある人やスキルがある人につながれる、気持ちがある人につながれるというところがすごいと思います。団体さんの方も、やってみたいという気持ちがあれば、こういったシステムを介して全国の人とつながれるということを知っておくことは強みだと思います。
今回、GRANTでの千葉県のプロジェクトに県外からも手が挙がる様子を見て、私の中ではプロボノ期間中の一時的なつながりと思っていたのですが、いつか子どもと一緒に伺いますと言ってくださったり、つながりのスタート、きっかけというところでも可能性を感じました

活動の担い手不足で困っているという声はどこでもよく聞きます。身近な地域からなんとかできないかと考えますし、それが一番心強いことではあると思うのですが、そういう時の選択肢の1つに、外部の方とつながって協力を仰ぐという選択肢を入れてもいいのかなというのは思うところです。それを実現できる手段としてGRANTを活用することは有効なのではと思います。
プロジェクトを行う中で、もしかしたら団体に継続的に関わってくださる方に会えるかもしれないという可能性も秘めていたりもします。内部で補い切れない、処理しきれないというところがあったら、切り分けて、外へ出して、救いの手を求めてみると世界が開ける場合もあるのではと思います。
GRANTの最初の登録の大変さは多少あるかもしれないですが、ぜひそこから踏み出していただいたら新しい出会いがあるのではと思いますし、そこは私たちもコーディネーターとして応援したいです。

※掲載内容は2024年8月取材時点のものです。