経験者インタビュー

「3ヶ月」は絶妙な期間。
プロジェクトの切り出しは
常に振り返りながらステップアップ

加藤愛梨さん
一般社団法人We are Buddies
PROFILE
一般社団法人We are Buddiesは、子どもと大人が「バディズ」としてフラットな関係性を築く、オランダ発祥の「子どもとおとなのバディプログラム」を運営している団体です。東京でスタートし、現在は全国5カ所に活動範囲を広げています。
GRANTではこれまでに2つのプロジェクトを実施しました。GRANTとの出会いやプロジェクトの切り出し、関係性の築き方について代表理事の加藤さんにお話しを伺いました。

子どもと大人が「バディズ」となる関係づくり
私たちの取り組みの中心は、5歳から18歳までの子どもたちと地域の大人のボランティアを1対1でマッチングし、「バディズ」として関係性を築く活動です。月に2回ほど、1回あたり2〜3時間を目安に、実際に2人で会って過ごす時間を通じて信頼関係を育むことを目的としています。バディとしての関係は原則1年以上続けてもらうようお願いしていて、できればその先も、子どもの人生に関わり続けてくれるような存在になってほしいと願っています。

今の社会では、子どもに関わる大人が保護者や学校の先生などに限られてきていて、地域のつながりも希薄になりがちです。だからこそ、親でも先生でもない大人が対等な立場で子どもの日常や人生に関わることの大切さを強く感じています。教える・教えられるといった上下関係ではなく、人と人として向き合う姿勢を大切にしています。

活動の対象となる子どもたちは「心の孤立のリスクがある子ども」とウェブサイトではあえてふわっと表現をしています。限定したくないという思いがあるからです。実際に参加しているのは、学校に行かない選択をしているのお子さんや、ひとり親家庭で日常的に関われる大人が少ない環境のお子さんが多いです。保護者の方からの問い合わせでつながることがほとんどですね。
バディとなる大人については、1対1で子どもと会うという活動の特性上、基本的には紹介制としています。年齢層も幅広く19歳から60代。20〜30代が多く、8〜9割の方は子育て経験のない方です。子どもと対等な関係性を築くことへの好奇心や問いを持って参加してくださる方が多い印象があります。
バディ同士の過ごし方は本当にさまざまです。2〜3時間程度の活動が多いですが、相性や年齢によっては1日中一緒に過ごすこともあるようです。
活動の原点は「子どもと一緒に暮らした時間」
私自身、もともと福祉や教育のバックグラウンドは全くありません。会社員を辞めて個人事業主になったタイミングで暮らしを変えようと思い、シェアハウスに住むようになりました。そこで、子連れの家族と一緒に暮らすことになったんです。
その男の子との日々が私の価値観を大きく変えてくれました。子どもに対する「教えなきゃ」「立派な大人でなければ」といった思い込みが、日々の関わりの中で崩れていきました。「小さいだけでひとりの人間なんだ」と感じるようになり、彼の考える力や得意なことに触れたことで自分の見方が大きく変わりました。成長を見守ることが喜びとなり、保護者の方にとっても子どもについて語り合える相手がいることが大きな支えになると感じました。

その経験を通して、親でも先生でもない、ただ一緒にいてくれる大人の存在は悪くないんじゃないかと思うようになりました。そんな関係性が、社会のセーフティネットになり得るのではないか。そう考えていたとき、オランダで40年以上続くバディ活動の存在を知りました。実は私自身、オランダに住んでいたことがあって、勝手にルーツのようなものも感じました。「日本でやるなら、自分がやるしかない」そう思って、立ち上げたのがこの活動です。
GRANTとの出会い
以前、複数のプロボノメンバーのチームで支援を受けたことがあるのですが、チームビルディングに時間をかけすぎてしまい、プロジェクトを動かす時間が最小限になってしまいました。手を動かしながら少しずつ知り合えた方がよかったと反省していました。

そんなときに出会ったのがGRANTでした。期間が3ヶ月と決まっていること、チームではなく1対1で関わるという仕組みが、私たちの活動にも合っていると感じて利用を決めました。
組織の立ち上げ経験のある方との最初のプロジェクト
これまでに2つのプロジェクトを立ち上げました。最初の募集「Google DriveからGoogle Workspaceへの移行・情報整理」には複数の方が手を挙げてくださいました。

支援募集記事:Google DriveからGoogle Workspaceへの移行・情報整理


面談を経て「HH」さんにお願いしたいと思った理由は、組織を立ち上げた経験があり、組織を構想していける視点を持っている方だったからです。ICTに関連する内容のプロジェクトでしたが、私たちが必要としていたのは組織やチーム全体を設計する視点だったので、ITに詳しい方よりもゼロから組織をつくった経験のある方の方が一緒に走れると思いました。

実際にリアルでお会いする機会を持ち、約2時間、団体のことやお願いしたいことを丁寧にお伝えしました。その後はオンライン中心でプロジェクトを進め、最後の方でもう一度お会いしました。
コミュニケーションは、FacebookメッセンジャーとGRANTのメッセージ機能を併用しながら、負担がかかりすぎないよう、でも遠慮しすぎず、というバランスを意識してやりとりしていました。

HHさんは、温厚な印象ながら心の奥に熱い想いを持った方。自分がいいと思ったことを人に伝えたいという気持ちが強く、今回のプロジェクトの枠を超えて私たちにファンドレイザーや他のNPOを紹介くださいました。こうした関係性がプロボノという枠を超えて続いていくことの価値もあらためて感じました。今後も、こういうつながりが広がっていくといいなと思っています。
募集記事(プロジェクト)の設計は業務を切り出すこと
プロジェクトを設計する過程そのものがすごく楽しくて、まさにPDCA(Plan(計画)Do(実行)Check(評価)Action(改善))を回しているような感覚がありました。「これは自分がやるべき」「これは人にお願いしたい」といった線引きが、プロボノを活用するうえで大切だと思っています。

業務を切り出すということについては、常に難しさを感じています。現在「We are Buddies」に関わりたいと言ってくださる方はたくさんいるのですが、関わり方のパターンが「バディ」か「フルコミット」、あるいはSlack(コミュニケーションツール)で不定期にお願いしたいことを細切れに投稿するという方法しかなく、私自身の中にバリエーションが少ないことが気になっていました。

以前、他団体のマッチングプラットフォームを通じてプロジェクトを組んだことがありましたが、関わる方に全体を知ってもらおうとしすぎて、結果として具体的な作業までたどり着けなかった経験があります。その反省もあり、業務を小さく分けてお願いする練習が自分には必要だと強く感じていたところでした。
そのような中で、GRANTを活用して募集記事を出すことは、ちょうどよいトライアルの機会になりました。

最初にGRANTでプロジェクトを立ち上げたときは、自分でもできるけれど、もっと得意な人にお願いできたらいいなと思い、Googleドライブ(オンラインストレージ)の整理をテーマにしてみました。実際お願いしてみたら、想像以上に使い勝手の良いものになって、本当にありがたかったです。「お願いしてよかった」と心から思いました。
ただ、正直なところ、プロボノの方の力をもっと引き出せたかもしれない、と感じる部分もありました。プロジェクト自体がシンプルだった分、もう少しボリュームのある内容にしても良かったかなという反省もありました。
伴走者と駆け抜けた2回目のプロジェクト
そうした反省も踏まえ、2回目のプロジェクトはもう少し大きなプロジェクトをやってみようと思い、ちょうど団体の5周年イベントに向けた準備のタイミングだったため、その広報戦略を中心とした業務でプロジェクトを準備しました。

募集したプロジェクトは、「団体設立5周年YEARの広報プラン」です。

支援募集記事:団体設立5周年YEARの広報プラン


エントリーしてくださった方はお二人いて、それぞれ面談させていただいたのですが、どちらも本当に素敵な方々でした。最終的にはSNSやイベントの実務に重点を置いてご一緒できそうな「麦」さんにお願いすることにしました。

麦さんは、仕事がとてもお好きな方で、育休中にもかかわらず熱量を持って関わってくださいました。教員の経験もお持ち、活動内容に強く共感してくださるなど団体との親和性も高く、週1回の定期ミーティングを希望され、スピード感を持って進めたいとおっしゃっていました。私たちの団体はもともとゆったりとした空気があるのですが、私自身は体育会的な一面もあり、その部分をうまく引き出していただいたように思います。

実際のスケジュール


3ヶ月間、本当に濃密な取り組みができました。SNS発信戦略、Instagramのプロフィール整理や発信テンプレートの作成、プレスリリースなど多岐にわたり、イベント広報を含めて幅広くご協力いただきました。3月9日のイベント当日も朝8時集合で記録撮影や音響の調整など、運営面でも多くのことを担ってくださいました。

今回のイベントは、既存の参加者や支援者を中心にしながらも新たな参加者を1~2割迎えられるような場を目指していました。麦さんとは、その世界観づくりから一緒に考えました。
SNSやプレスリリースという目に見える成果物ももちろん大切ですが、私たちがイベント後も使い続けられるようなテンプレートや運営ノウハウを得られたことが、大きな財産になっています。特に、Instagramのテンプレートは、発信が得意でないメンバーでも投稿しやすくなり、今でも日常的に使わせていただいています。とても実用的で本当に感謝しています。
成功の鍵はコミュニケーション
GRANTを利用する中で特に困難を感じたことはありませんでした。一番大切だと思うのは、団体と参加者が丁寧なコミュニケーションでお互いにとって心地よいリズムを作ることだと思っています。遠慮しすぎても、積極的に関わりたいと思って来てくださった方にとっては物足りないですし、お願いしすぎると負担になってしまいます。そのバランスを見ながら、頻繁にコミュニケーションを取って関係を築いてきました。

プロジェクト終了後に麦さんと振り返りをした際、「もっともっとやりたかった」と言ってくださったのですが、その言葉を聞いて、もっとお任せすればよかったなと感じました。たくさん話したつもりでしたが、さらに深く関われたかもしれないという気づきがありました。次回につながる学びになったと思います。

また、GRANTを利用する上で、コーディネーター「結・しぶや」のご協力についても感謝しています。普段のやり取りについては、SNSのチャット機能を通じてカジュアルにご対応いただく場面もあり、形式にとらわれず相談できる環境を設けてくださったことはたいへんありがたく感じていました。運営側の方と日常的に気軽なコミュニケーションをとれる関係性が築けていたことで、非常に心強く、大きな安心感の中で取り組むことができました。
もっと多くの団体にこの仕組みをすすめたい!
GRANTの一番の魅力は、「1対1で期間が限定されている」というところにあると思っています。とてもミニマムな構成なのに、すごく濃密で大事なやりとりが詰まっている。そんなサービスだと感じています。私は本当にGRANTが大好きです。

私自身、良いと思ったものは周りにどんどん話したくなる性格です。今日は、GRANTの仕組みをさらに知る機会にもなったので、今後はこれまで以上に自信を持って知り合いの団体に紹介できそうです。

改めて感謝の気持ちを伝えたい。素晴らしい方々と出会う機会をいただけたこと、本当にありがたく思っています。もし困っている団体があれば、ぜひ声をかけたいと思っています。そして、私自身もいただいてばかりでなく、なにかお手伝いできることがあればと思っています。


※掲載内容は2025年4月取材時点のものです。
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