経験者インタビュー

応援の声で背中を押してくれる
プロボノの皆さんは
私たちのコーチ

前島朋子さま、中谷順子さま
NPO法人 kosodateはぐはぐ
PROFILE
NPO法人kosodateはぐはぐは、茨城県つくば市で「親子の孤立ゼロの社会をめざして」を目標に活動する子育て支援団体です。家庭訪問型子育て支援「ホームスタート」を中心に活動しています。2024年11月のGRANT登録以降、積極的に活用を進め、複数のプロジェクトが完了。現在も2つのプロジェクトが進行中です。
子育てに伴走する「ホームスタート」の活動を行っている団体です
NPO法人kosodateはぐはぐは、茨城県つくば市を中心に家庭訪問型の子育て支援「ホームスタート」の活動に取り組んでいる団体です。ホームスタートは50年以上前にイギリス、レスターで始まった活動です。赤ちゃんや小さな子どもがいる家庭に、研修を受けた地域の子育て経験者が訪問する世界共通のサービスです。日本では15年前から活動がスタートし、今では32都道府県の約120地域で実施されています。私たちは、全国どこの地域に住んでもママたちが困った時に気軽に無料で利用できる、あたり前のサービスになることを願って活動しています。

ホームスタートの大きな特徴は、ママの代わりに何かをしてあげるのではなく、一緒にやりながら成長することを大事にしている点です。核家族化や周囲に頼れる人が少ない現代では、家事や育児の知識や経験があまりないまま子育てをスタートするケースがとても多いのです。だからこそ、代わりにやってあげるサービスを利用してしまうと、その方は永遠にスキルが身につかないまま終わってしまいます。
私たちは、ママ自身が経験を積む機会を尊重しながら、無理なく、一緒に、楽しみながら日々のことに取り組めるようサポートし、ご自身のペースでできることを増やしていけるように伴走することを大切にしています。具体的な支援として、先輩ママと2時間一緒にいて子どもへの声かけや遊び方をお話ししたり、一緒に離乳食を作ったり、お出かけしたり。ママは先輩ママの背中を見ることで、「こういうふうに声かけるとうちの子は笑うんだ」といった気づきを得る機会になります。

ホームスタートでは、こうしたお手伝いを通じて、ママたちが自分でできることが増えるよう伴走することを大切にしています。
プロボノ活用開始のきっかけは自治体主催の説明会
プロボノのことは、ホームスタートを日本で取りまとめている、認定NPO法人ホームスタート・ジャパンの活動の中で知りました。興味はあったのですが、どのようにして、何を手伝っていただいたらいいのかが全くわからず、なかなか利用するきっかけが作れないまま数年が過ぎました。

最初のきっかけになったのは、茨城県主催の事業説明会に参加したことでした。その講座で、ホームページのデザインやチラシの作成など、プロボノ活用の具体的な例を聞いて、「こういうことでも頼んでいいんだ」という具体的な気づきがありました。事例について説明があったことが、最初のハードルを越える大きな要因となり、「ちょっとしたことでもお願いできる」ということがわかって利用してみようと思いました。自治体からの案内で安心感があったことも大きかったです。

今回、助成対象に選ばれる機会があり、これまでの活動とは別に新しい企画をスタートすることになりました。新しい仕組みを立ち上げなければならない切迫した場面で、指南役がいないことから作業が前に進まなくなってしまい、「それなら一度ダメ元でお願いしてみよう」という流れになりました。
最初のプロジェクトはCanvaでの報告書作り
最初の募集プロジェクトは、「活動説明・報告会用冊子作り(Canva使用)」でした。Canvaの使用は決まっていたものの、イチから学ぶ時間がなかったため募集を出したところ、思いがけず早くに反応があり、プロジェクトはわずか10日間で完了しました。

支援募集記事:活動説明・報告会用冊子作り(Canva使用)


このとき良かったことは、プロボノの方が頼んだことだけに取り組むのではなく、「私たちが成長する手助けをしたい」というスタンスで参加してくださったことです。例えば、CanvaのNPO法人向けプランの申請についてアドバイスをくださり、そのサポートのおかげで更新や制作ができる環境が整い、今では自分たちでCanvaを活用できるようになりました。
新事業「ぽいボラ」のプロジェクト
Canvaのプロジェクトが完了した後、新しい事業である「ぽいボラ」の立ち上げに着手しました(プロジェクト「ボランティア活動の新たな仕組み「ぽいボラ」の立ち上げ」)。

支援募集記事:ボランティア活動の新たな仕組み「ぽいボラ」の立ち上げ


「ぽいボラ」は、「ボランティアが活動に応じてポイントを貯める仕組み」です。SOMPO福祉財団助成事業の助成金で新しい仕組みとして立ち上げようとしています。私たちはボランティア活動がメインなのですが、登録してくださっても途中で離脱してしまったり、積極的に活動する方が少なかったりといった課題がありました。また、訪問活動は研修が必要でハードルがあるのですが、他のイベントのお手伝いなど、地域で手助けできると言ってくれても、その方と一緒にやる仕組みがうまくできていなかったのです。一度お願いしたけど、その後疎遠になってしまうのはすごくもったいないと感じていました。また、活動を企業にご紹介する時に、このような新しい企画を持参することで興味を持っていただきやすくなります。
そこで、子育て支援に地域を巻き込む仕組みを作りたいというアイデアが「ぽいボラ」です。ボランティアが1回訪問したら1ポイント、といった具合に地域に暮らすボランティアがスタンプカードにポイントを貯め、地域の企業のノベルティグッズがもらえるような、体験ができるチャンスにつながる仕組みを考えました。

この「ぽいボラ」に関するプロジェクトは、最初から現在までずっと同じプロボノの方に伴走していただいています。その方にお願いしたのは、依頼内容をこなすだけでなく、「もっとよくできるのでは?」と前向きに関わってくださりそうだと感じたからです。私たちは専門家ではないため、経験豊富な方からの積極的な視点や改善のヒントを期待していました。

プロジェクトは、「そもそもこれは何なのか」「なぜやるのか」といった根本的な問いから始まりました。自分たちが目指す姿がはっきりしていないと、ぽいボラの方向性も定まりません。そこでまず、団体として何を大切にしているのか、どんな役割を果たしたいのかといった、基盤の部分をあらためて見つめ直すところから取り組みました。プロボノの方はまさに「土台から作っていきましょう」という姿勢で関わってくださり、資料作りだけでなく、団体の理念や目的といった根本から一緒に考えてくれました。ぽいボラの内容に本格的に入るまでに、1か月ほどかかったと思います。

打ち合わせは週1ペースで進みました。外部の方と一緒に取り組むことで、私たち自身は「分かっているつもり」で進めていた部分にも曖昧さが残っていることに気づかされました。プロボノの方は「コーチ」のような存在で、自分たちの強みや「何を目指してるか」がはっきりしていないとブレてしまうという点を気にされていたようです。この過程は、一種のプチ事業評価や棚卸しを経て「ぽいボラ」に踏み込めたということだったと思います。そのおかげで、自分たちが目指すところ、見据えているところがはっきりし、その後の話がしやすくなりました。

また、コミュニケーションに関しても、最初は遠慮する気持ちがありましたが、「ここがわからない」「こういうことしてほしい」と素直に伝えた方が、やり取りがスムーズになると気づきました。変に遠慮せず、困っていることを伝えることが大切だと認識が改まりました。

資料の叩き台ができた段階で「効果的な営業資料の見せ方のスキル持っている方を募集してみたらどうでしょう」というアドバイスがありました。そこで、もう一つのプロジェクトを立ち上げ募集することにしました(プロジェクト「営業用資料(パワポ資料)の仕上げ」)。こちらは経験豊富なプロボノの方から手が挙がり、資料の土台を整えてくださったので非常に見やすい資料ができあがったと思います。

成果物


GRANTの仕組みが私たちの駆け込み寺に
私たちは人材もスキルも不足しており、アイデアは出せても実行に移す部分が元々弱いのですが、GRANTという相談できる窓口を知ったことで、活動の範囲を広げられたと感じています。

GRANTは、スキルのある方と安心してつながれる仕組みがあり、本当に心強い存在です。使い始めてからは、「とりあえず自分たちではできないから募集してみて、ダメだったらまた考えよう」という流れができました。この「ダメでもともと」というスタンスで新しいことに挑戦しやすくなったと感じています。手を挙げてくれる方はスキルを提供してくださるだけでなく、「応援するよ」と言ってくださることも励みになり、活動がさらに楽しくなりました。

最初は、無料でやっていだいているし要望を言っちゃいけないのかな、あまりお願いしては悪いかな、という気持ちがありました。でも、素直に「ここがわからない」とか「こういうことしてほしいんです」と伝えた方が、やり取りがスムーズになると気づいたんです。変に遠慮しちゃいけない。相手も助けてあげようっていう気持ちだから、こちらが困ってるからお願いしているというのは分かってくださっているはずです。質問の意味がわからない時も「それはこういうことですか」とちゃんと聞いた方がいいと思いました。
安心感と成長、さらに出会いの機会に
私たちにとってGRANTは、気軽に相談できるという点が大きな魅力でした。実際に利用してみて、まず一度試してみて、うまくいかなければまた考えればいい、そんな気持ちで新しいことに挑戦しやすくなったと感じています。もし自分たちで支援してくれる方を探すとなれば大きな労力が必要で、適切な人に出会うまでに時間もかかると思います。その点、GRANTはスキルのある方と安心してつながれる仕組みがあり、本当に心強い存在だと感じました。

いくつかのプロジェクトを経験する中で、GRANTの活用に慣れてきたので、「これもやってみたい」と考えていた新たな募集を立ち上げたところです(プロジェクト「ポッドキャスト配信開始までの伴走支援」、2025年11月より現在進行中)。このプロジェクトには、最初にCanvaのプロジェクトを手伝ってくださった方が参加してくださいました。ポッドキャストに関して初心者である私たちに、積極的にいろいろなことを提案してくださり、ミーティングの時間だけでなく、メールでも情報をくださるので非常にありがたい存在です。

初めてプロジェクトを申請する際は、団体紹介や活動目標を言葉にするのが少し大変でしたが、書くことで自分たちの考えが整理される良い機会にもなりました。参加してくださる方にとっても、団体の思いや目指す方向が明確であることは支援しやすさにつながるはずなので、そのプロセスは必要なものだと思えます。 こうした一つひとつの経験が、団体としての足場を整え、次の挑戦に踏み出す力になっています。GRANTを通じて得られたつながりや学びの経験を、これからの活動にも生かしていきたいと思っています。


※掲載内容は2025年11月取材時点のものです。
インタビュー一覧へ