経験者インタビュー

一歩踏み出せば、発見がある。
プロボノはスキルだけじゃなくて、
いい感じの「仲間づくり」。

永山滉大さん、川上敦士さん
NPO法人多文化フリースクールちば
PROFILE
NPO法人多文化フリースクールちばは、千葉市で外国につながる子どもたちの進路支援や居場所づくりを行っています。来日した子どもたちは、高校入試がハードルとなって高校に進学することができない、ビザの関係で働けない、居場所も社会との接点もない、という現状です。そうした子どもたちを高校という公教育の場所につなぐ活動を続けて今年で12年目、これまでに232名を送ってきました。
若手ふたりが「次の10年」を見据えて外部にアプローチ
―おふたりとも20代とお若いです。おふたりが今回のプロジェクト担当ということですが、団体での立ち位置を教えてください。

永山さん)今年で6年目、副業として理事をしています。最初は学生ボランティアとして関わっていました。現在は、事務局会議をまわしたり、戦略的な部分を考えたりしています。

川上さん)去年4月から参画して、ちょうど2年目が終わるところです。最初は事務員として、助成金を担当たり、庶務のお手伝いをしていましたが、今年は、週1回は日本語講師、週2回は事務員、という形で関わっています。

―今回のプロジェクトを始めるきっかけを教えてください。

永山さん)もともとはボランティア組織から始まって、これまでの10年、みなさんボランタリーに近い形で社会に貢献してきました。「次の10年どうなんだろう?」と考えたときに、その方々がいなくなったらこのフリースクールも終わり、じゃなくて、やっぱり社会に必要なものだよね、と。だから、経営体制だとか、今の経営課題をまとめたかったんです。

次の10年を引き継いでいくときに、フルタイム職員の雇用、ビジョン・ミッションの再定義、子どもたちの次の支援など向き合うべき課題が山積していました。でもそれを整理する知識と人材が団体内で不足しており、まずは今なんの経営課題があるのか、誰がどこを見てるのか、その上で優先順位をつけてから、手を付け始めたいと考え、ビジネスの観点から分析してもらおう、と外部に依頼することになりました。代表含む現理事たちも10年経ち高齢化が進む中、もう時間がないから、改革を加速させたい、という思いもありました。
業務よりも、それぞれの想いが合致することが大事

支援募集記事:経営課題に関する議論資料のブラッシュアップ


―今回取り組まれたプロジェクト「経営課題に関する議論資料のブラッシュアップ」について、募集するときの不安や期待はありましたか?

川上さん)他のプロボノの募集内容を見ると、広報とかチラシとかデザインとか、成果物のイメージが具体的だったり、ITスキルを活かすものが多い印象でした。がっつり経営課題を話します、コンサルタント的に診断します、という内容に来てくれる人はいるのか、という不安はありました。

永山さん)ハードルを下げるために、まずは資料のブラッシュアップという形で、僕らが基本やっていく、という書き方をしました。

―NSさんという方が手を挙げてくださいましたね。

永山さん)中小企業診断士の資格を持っていて、法務的な知識も豊富な方で、「こんな方がいるんだ」っていう驚きがまずはありました。逆に、僕らがこの方の求めるものを与えられるのか、と思ってしまうくらい。

―面談ではどんな話をされましたか?

永山さん)僕らが気になったのは、NSさんの業務というより「なんでNSさんはこれに応募してくれたのか」ということです。NPOってビジネスとはまったく違うので、そこの想いが合致していないと、お互いにイライラしちゃうと思うんですよね。
NSさんご自身も外国ルーツのお子さんがいるという話をされて、だから申し込んでくれたんだと理解できました。こちらからも、「こんな何もできてない状況です」と包み隠さず話して、受け入れてもらえたのかな、と思います。

―都内在住の方ですが、千葉市の事務所への訪問はハードルにならなかったですか?

永山さん)リモートが前提でしたが、僕らの想いとしては、現場を見ていただいて、こんな団体なんだって知ってもらうことが一番重要だと思っていて。それで、最低1回は来てほしいという条件を出したんです。それを障壁と感じられている印象はなかったですね。その理由をちゃんとお伝えしたからかもしれません。
優先順位が明確に。次につながる意思決定ができた
―9月5日から約4か月のプロジェクト。ミーティングが5-6回あったようですが、具体的にどう進んでいきましたか?

永山さん)一番大事にしたのは、最初のインプットの場です。数字などの情報だけお伝えしても、うまく嚙み合わないと思ったので、キックオフではこれまでの経緯を伝えました。また、団体へ訪問いただいた際には、理事二人に2時間ほど同席し、ざっくばらんに話す時間をもちました。そこから6日くらいで、ヒアリングした内容がまとまった第一稿の資料がでてきて、10月中旬には、理事にも少し壁打ちいただきました。そのあとは僕と川上で細かいところを詰めていって、最終的に事務局会議で報告いただいた、という流れでした。

川上さん)本当に作業が早くて、成果物を前倒しでどんどん出してくれるんです。2回目のミーティングで、もう課題整理の骨子をいただいて。SWOT分析や、経営課題を網羅的に整理したものをドキュメントにしてくださいました。中間報告では、最終成果物の8割くらいのものが固まっていたんです。早い段階で求めているところまでやってもらえて、ミーティングの中で詳細をつめる時間をもてたのは、すごくありがたかったですね。

永山さん)特に感謝したいことは、最終的にスライドを作っていただき、事務局会議で20分くらい話してもらったことです。発表後、事務員10人全員からコメントももらうなどインタラクティブな形式をとったのですが、その中で「スクールの財政はそんなに不安な状態じゃないですよ」と外部の方から言ってもらえたのは大きかったです。
また、作成いただいた「改善施策の優先順位マトリクス」は、何から手を付けないといけないのかが図として可視化されていました。今後意思決定に迷ったときに、「マトリクスの左上の部分は大事なので、すぐやりましょう」という意識合わせに用いることができると思っております。 例えば来年度は、まずは理念浸透と中期財務計画に注力しようとなりました。

成果物(目次)
それぞれの課題が、みんなの共通認識になっていくプロセス
―団体内部のみなさんの反応はいかがでしたか?

永山さん)実は中間発表のとき、元教員の理事から「教育のマニュアル化」という文言が理念と合わない、と言われまして。そうした認識のずれはあったんですけど、「NSさんにはこういう依頼をしているんです」と僕らが間に入ってコミュニケーションをとっていったので、最後は理事たちもみんな「ほんとにこういった資料が欲しかった。ありがとうございます」と言っていましたね。

―団体内部に共有していく中で、印象的だったことはありますか?

川上さん)私と永山の頭の中にはあっても、みんなには共有されていない、内部全体での共通認識になっていない部分とか、逆に、私や永山はあまり大事だと思っていなかったり、考えていなかったけど、実は代表が大事にしている部分が言語化されたんです。それぞれが抱えていたそれぞれの課題が、ひとつのマップに落ちたということが、最大の成果だったかなと。今まで部分的に散らばっていた課題が網羅されて、それが一枚にまとまっていく。会議を経るごとに、それが見える形で進んでいったし、最終報告のときも、みんなが思っている課題が盛り込まれているのが見えたことが、すごくよかったなと思います。

―NSさんへの印象をお伺いしてもよいですか?

永山さん)本職では法律を扱う方で、理路整然とされていて。最初は「ストレートに言うかもしれません」と言われていたんですけど、気さくな方で、常に傾聴してもらえた印象があって、すごく円滑に進めていただいたと思います。

川上さん)初対面の印象は、仕事のできるキャリアウーマンという感じで、こちらがちょっと萎縮してたくらいなんですけど、本当に気さくな方でした。「強いこと言っちゃうかもしれません」と言われて心配もしていたけど、バランスもとって、言葉も上手に選んでくださって、伝え方も本当に上手で。うちの団体って年齢層にすごいギャップがあるんです。代表は74歳、私は27歳。中間層の50代もおらずバラバラな中で、NSさんがどの層にも伝わるような伝え方をしてくれたことで、言葉の在り方も整理されたという感触がありました。

永山さん)これまで自分たちである程度は言語化していたものの、経営の経験がないからこそ、これでいいんだろうか?と悩んでいましたが 、今回、外部の方からも同じことが言われている、というのは、私たちにとって重要な気づきとなりました。そういう気づきが得られるのは、プロボノの一番いいところだなと思っています。
言葉にして一歩踏み出す。関わる中で、仲間になっていく。
―次のプロボノの募集記事も検討されていますか?

永山さん)次はもっと楽しく、いろんな輪を広げていきたいと思っていて。直近でプロボノの方とご一緒するなら、高校生とか、次の子どもたちを巻き込んでいくのがいいんじゃないかとか。そういう話をしていますけど、またこの優先順位のマトリクスを見て、これ高いのか高くないのか、っていうのを考えてやってます。

―これからプロボノを活用したいと思われている団体さんに、ぜひメッセージをお願いします。

永山さん)一番大事にしてるのは、お互いの目的が何かということ。単に「NPOで働きたい」とか、「社会人に社会貢献してもらいたい」とかいう解像度ではなくて。最初に現場を見せたこともそうなんですけど、「こういう理由で選んでくれた」「こういうことが提供できる、こういうことを思っている」というお互いの目的の解像度をあげていけば、お互い楽しい思い出になるかなって思います。

川上さん)始まる前は、こんなことしてくれる人いるんだろうか?見つからないんじゃないか?という不安や心配はあったんですけど、実際には想像していたよりも本当にすごい方が来てくれて。世の中にはこんな方がいて、助けてくれるんだ、というのは発見でしたし、プロボノの可能性をすごく感じました。
一歩踏み出すことで、すごく勉強になったし、団体の中でのコミュニケーションや認識も整ったし、すごく得られるものが多かったんです。不安があっても、ひとつ言葉にしてまとめてみたら、その過程で得られるものがある。一歩踏み出してみるのがいいんじゃないかな、と思います。

永山さん)参画の際に、ハードルを高く置くことは、プロボノ案件を受ける側にも受け入れる側にとってもあんまりよくないと思うんです。仲間づくりみたいに考えたほうがいいなって。というのも、特定の何かをしてほしい、そのスキルはあるか?だけを見ちゃうと、プロボノじゃなくてもいい。社会貢献の意欲のあるプロボノの方とご一緒すると、例えば、僕らにとっては、第三者がこういうことを思うんだという発見がある。NSさんにとっては、仕事を通して社会貢献の実感が生まれてくる。そのようなお互いの想いをベースにした関わり方を続けるだけで、自ずと仲間になる。だからこそ、お互いに変にハードルを上げ過ぎないのがいいのかなと思います。


※掲載内容は2026年1月取材時点のものです。
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