経験者インタビュー

目指したのは
スタッフだけで抱えない
プロボノとつくるコミュニティ

石川麻衣子さん、山本奈穗子さん
一般社団法人Kids Code Club
一般社団法人Kids Code Club(福岡県福岡市)は、困難を抱える子どもたちにオンラインでの居場所とデジタル学習の機会を提供しています。子ども一人ひとりに寄り添う支援体制づくりをプロボノとともにつくる新たな挑戦にあたってGRANTを活用しました。コミュニティとしての工夫と実践から得た学びを紹介します。
IT業界の3人が立ち上げた団体
一般社団法人Kids Code Clubは、貧困や不登校、発達障害などの困難を抱える子どもたちが、自分らしくデジタルスキルを身につけられるようサポートしている非営利団体です。活動の柱として、ゲーム開発やデザイン、動画・音楽制作などを子ども同士で学び合う「オンラインの居場所」の運営や、プロのエンジニアやクリエイターの方と繋がれるデジタルコミュニティづくりを行っています。


活動の様子


スタッフによる運営も、すべてオンライン・フルリモートで行っているのが私たちの特徴です。また、経済的に特に困っているご家庭にはパソコンやモバイルWi-Fiの無料貸し出しも行い、包括的なデジタル学習支援を届けています。
プロボノと一緒に団体を前に進めたい
サービスグラントの記事を読んだことをきっかけに、専門的なスキルや経験を生かしたボランティアを「プロボノ」と呼ぶことを知りました。

2016年に、私たち2名を含むIT業界で働いていた3人で活動を始めました。そこから2020年ぐらいまでは手弁当でやっていたので、ある意味、自分たち自身がプロボノとして活動を続けてきたことになります。

2021年には、HatchEduというコミュニティが主催する「教育プロジェクトを支援するプログラム」に参加し、プロボノの方々からファンドレイジングや経営面でのサポートを受ける機会を得ました。その経験を通じて組織として大きく成長することができ、スタッフだけで組織をつくるのではなく、プロボノの方々とともに支え合うコミュニティを築いていくことを目指すようになりました。
プロボノとの協働体制づくりに取り組みました
現場のスタッフは8人と少人数であるため、子どもたち一人ひとりへのきめ細かなサポートには限界がありました。特に、コミュニケーションが苦手だったり、「困っている」と声を上げられない子どもたちが活動についていけなくなってしまうことが課題となっていました。

こうした状況を受けて、プロボノの力を活かした支援体制を本格的に整えていきたいと考えるようになりました。しかし、自分たちでプロボノを募集し、コミュニティとして持続的に運営していくノウハウはなく、試行錯誤だけで進めることに難しさも感じていました。

そこで、団体の将来を見据えたステップとして、サービスグラントの有償の伴走支援プログラムを活用し、実践のプラットフォームとしてGRANTを用いながら、プロボノとの協働体制づくりに取り組むことにしました。
私たちが取り組んだ「プロボノ」のかたち
一般的なプロボノの事例は、ホームページ制作や寄付の仕組みづくり、ロゴ制作など、「組織の運営基盤を支えるサポート」が中心と思います。
一方で、今回の私たちのプロジェクトは少し異なります。専門スキル(プログラミング)を持つ大人が直接支援の現場に入り、子どもたち一人ひとりと向き合うという、「現場で活躍するプロボノ」を募集する取り組みでした。

こうした取り組みを、GRANT上でプロジェクトとして立ち上げました。該当のプロジェクトは「子どものプログラミング伴走サポーター募集」です。結果として、12名の参加者とマッチングする機会を得ることができました。

支援募集記事:子どものプログラミング伴走サポーター募集


参加者の中には、現役のエンジニアだけでなく「自分もプログラミングを勉強中なので一緒に学びたい」という意欲を持つ若い世代もいました。「教えるプロ」ではないボランティアの方々が、自身のITスキルという強みを生かしながら、子どもたちの成長に直接関わっていく——。こうした「現場で活躍するプロボノ」を実現するにあたり、私たちが大切だと感じたポイントをご紹介します。
みんなで子どもたちを支えるコミュニティづくりで大切にした6つのこと
1.自分たちだけで抱え込まず、プロボノに「支えてもらう」組織を目指す
スタッフだけで全ての課題を解決しようとするのではなく、最初から「プロボノの皆さんに組織を支えてもらうコミュニティ」を目指しました。外部の視点が入ることで、自分たちだけでは気づけなかった団体の良さや課題が見え、組織として大きく成長するきっかけを得ることができました。

2.動画や面談を通じて、お互いの「想い」を丁寧に確かめ合う
募集にあたっては、活動の様子が伝わるよう説明会を開催し、その動画を公開しました。また、実際に活動に入る前には、必ず顔を合わせて話す時間を設けました。団体の考えや大切にしているルールをしっかりお伝えし、お互いに「これなら大丈夫」と納得してからスタートすることが、その後の良い関係につながると感じました。

3.本番前にじっくり1ヶ月。リハーサルで「不安」を「ワクワク」に変える
どんなにスキルがあるプロボノの方でも、初めての現場には不安がつきものです。そのため、本番前に1ヶ月の研修期間を設けました。特に、プロボノ同士で「教える役」と「教わる役」を交代で体験するリハーサルは、教え方のコツをつかむだけでなく、お互いの工夫を知る貴重な学びの場となりました。

4.一人にさせない。助け合い、学び合える「チーム」をつくる
活動中、プロボノの方が一人で困ることがないよう、チーム体制を整えました。具体的には、個別の講座を受け持つ「講師役」だけでなく、全体を巡回してフォローする「サポート役」を置く工夫です。誰かがお休みした時にカバーし合えるだけでなく、サポート側が他の方の教え方を客観的に見て学べるという、プロボノ同士の成長につながる良い効果もありました。さらに、活動後の15分間を、起きたことを共有し合う時間とし、重ねていくことで、チームとしての一体感が育まれていきました。

5.プロボノ同士が自由につながれる「横の関係」を大切にする
事務的な連絡だけでなく、プロボノ同士が自由に質問したり、アイデアを出し合ったりできる場(Slackなど)を用意しました。運営側が関わりすぎず、皆さんの自主性に委ねることで、「一緒に子どもたちを支える仲間」としての意識が育まれていきました。プロジェクトが終わっても「また会いたい」と思える関係を築くことを大切にしてきました。

6.「自分のために関わってくれる大人がいる」という体験を届ける
プログラミングをボランティアの方に教えてもらう体験は、学校や習い事では得られない、子どもたちにとってかけがえのないものです。プロボノの皆さんが一人ひとりに寄り添い、伴走してくださる姿は、子どもたちの心に「自分もいつか誰かの役に立ちたい」という前向きな気持ちが芽生えるきっかけにもなっていると感じています。
活動を通じて見えた変化と成果
参加者のなかで印象に残っているのは、事前の研修や打ち合わせの場では緊張されている様子で、表情もやや硬く見えていた方が、子どもたちと向き合う場面では驚くほど優しく、寄り添った声かけをされていたことです。関わる相手や場面によって、その方の持つ力が自然と引き出されていく様子に、プロボノの大きな可能性を感じました。

また、今回の取り組みでは、GRANT上で参加者の進捗や関わりの状況を一元的に把握することができ、運営面でも大きな助けとなりました。研修やオリエンテーションなど複数のステップを設定する中で、誰がどこまで進んでいるかが可視化されることで、安心して運営を進めることができました。自分の貢献が記録として残る点も、プロボノの方にとってのやりがいにつながっていたように感じています。

今回のプロジェクトを通じて、子どもたちの満足度が高く、保護者の方からもお礼の言葉をいただけたことは、私たちにとって大きな自信になりました。自分たちだけで取り組んでいたら3年はかかっていたかもしれない仕組みづくりを、1年で形にできたことは、コミュニティで組織を支えていくという私たちの目指す姿に、一歩近づけたような気がしています。


※掲載内容は2026年3月取材時点のものです。
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