経験者インタビュー

手探りで奮闘している団体運営
「まっさらだから面白い」
プロボノ支援が今後の成長の原動力に!

木村由加子さん
NPO法人itswellness
itswellnessは、「森林浴の手法を用いて、人々を、疲れやストレスから解放する」ことをミッションとして活動しているNPO法人です。2020年の活動開始直後にコロナ禍となり、大幅な計画見直しを余儀なくされたものの、2021年にはオンラインツアーを開始し、2023年度のリアルツアー開始に向けて準備を進めています。ストレスフリーな社会を実現したいと考え活動している団体です。
団体のさまざまな困りごとに「GRANT」で募集を行い、プロボノワーカーとの出会いがありました。今回はGRANTを活用して、これまで4つのプロジェクトを進行された「NPO法人itswellness」代表理事の木村さんにお話を伺いました。

※画像は代表理事の木村由加子さんと共同代表の井上紀子さん。森林浴のツアーの企画で訪れた奥多摩にて。
がん患者のサポート活動の中で森林浴に関心を持ちました
この法人は、以前はがん患者のサポートの活動をしていました。当時はちょうど患者本人へのがん告知が始まった頃で、医師から、思いがけないタイミングで病名や病状を伝えられ、患者さんがパニックになるような状況でした。そうした中で、2008年に「NPO法人ここから元気」という団体を立ち上げました。がん患者さんや家族が、治療以外のことで不安になっているケースを多く知り、がんに関する正しい情報を伝えて医療に繋げる活動を行うためです。立ち上げから7年ほどはボランティアで活動を続けました。ある時期、患者さんたちとお話しする際に、花屋のカフェをよく使っていたところ、「今日は緑に囲まれて、とても癒された」といった声を多くいただくようになり、緑の効用を調べ始めたのが、今日の活動のきっかけです。

緑がもたらす健康効果を、世界の論文や症例であたるなかで、森林浴にであいました。数年がかりで森林浴について学び、森林浴や森林セラピーができる各地の森へ足を運び、その効果を自ら実感しました。その上で、森の持つ癒やしの効果を多くの人に体験してほしいと思い至り、第二創業として法人名を「NPO法人itswellness」に改称し、2020年2月に、3名のメンバーで立ち上げました。
国内外の森林浴のツアーを提案しようと考え、旅行業の資格をとって同年4月に活動をスタート。その1週間後にコロナウィルスによる緊急事態宣言が発令され、この2年間、試行錯誤の中で活動を続けてきました。

私たちが現在、最も重視しているのが「都市在住在勤のビジネスパーソンの、ストレス状況を改善する」ということです。コロナウィルスパンデミックによって、通勤等のストレスは軽減された反面、オンオフが切り替えにくい状況や、孤立しやすい仕事環境から、これまでとは違うストレスを抱えている人が急増しています。私たちは目の前のこの深刻な課題を、森林浴の手法で解決したいと、企業の社会貢献、健康経営、福利厚生部門や、ビル管理会社、ホテルの方々との連携を進めています。
事業の方向転換にせまられて、課題山積のなかでGRANT活用を検討
「NPO法人ここから元気」で活動している頃から、サービスグラントのことは知っており、いつか活用させていただきたいと考えていました。団体登録は、itswellnessに改称した直後だったと記憶しています。ただその後、コロナで先行きが見えなくなり、支援を依頼するタイミングではないと考えていました。

去年、GRANTのブルーのロゴを偶然知って、サイトを拝見しました。そこで、サービスグラントには、長期のチーム型の支援とは別に、個人のプロボノの方にサポートしてもらえる「GRANT」という短期の支援があることを知り、まずはGRANTを利用したいと思いました。

GRANTの活用を考えた背景は、いくつかあります。コロナパンデミックによって、予定していた事業そのものが立ち行かなくなり、私たちは方向転換を検討せざるを得なくなっていました。結果、オンラインのツアーを開発していこうと動き始めたのですが、次のステップとして、マンパワーの不足に突き当たっていました。さらに、企業との連携の話が進み、法的な問題や、新たな高いレベルの構想が必要になっていたので、GRANTで支援を得たいと思い、募集を始めていきました。
GRANTで出会い、継続的に関わってくださるご縁をいただきました
これまでGRANTで5つのプロジェクトを立ち上げて4つのマッチングがありました。

2021年の秋に実施した最初のプロジェクトは、新サービス開発に関連する内容でした。オンラインのツアーを事業の柱のひとつにしようと、事業計画への落とし込みに取り組んでいたのですが、団体のメンバーではブレイクスルーできず、GRANTでの支援をお願いすることにしました。
そこで出会ったマーケティングの専門家であるプロボノの方が、私たちができなかった部分に踏み込んで、対象者やニーズの絞り込み、カスタマージャーニーを導き出してくださいました。熱い議論を重ねるうちに、森がとても好きで、私たちのミッションに共感してくださっていることも知りました。プロジェクト終了直前にお互いの思いを話し合い、GRANT支援終了後も、団体の企画運営に参画していただけることになりました。

次のプロジェクトでは、企業との覚書締結支援を希望しました。企業との契約にあたり、私は法律用語に精通しておらず、弁護士は事業の細部を把握しきれないため、企業法務の経験がある方の知見をいただきたかったのです。クリスマス直前のプロジェクト開始でしたが、プロボノの方が年末年始をはさみ対応してくださり、1月中旬には契約書のドラフトを企業に提出できました。その過程で経営計画分析に話が及び、その方の本業である経営・財務の観点からアドバイスをいただけたことも大変ありがたかったです。

3つめのプロジェクトは2022年春に開催を予定していたイベントの準備に関する内容でした。エントリーしてくださったのは、イベントの支援経験があり、テクノロジーに精通された方で、最新のタスク管理ツールの導入を提案してくださり、イベントを運営する仕組みづくりそのものを、支援してくださいました。まん延防止等重点措置実施期間の延長で、イベントは5月に延期になりましたが、「イベント終了まで支援しますよ」と言ってくださいました。継続的にアドバイスをいただく関係を築くことができました。

この5月のイベントは海外向けの企画であり、そのイベントの広報としてSNSの支援をお願いしたのが、次のプロジェクトです。プロボノから参画してくださったマーケティング専門家とタッグを組み、Instagramを中心とするSNSの運用を、短期間で精力的に進めてくださいました。広告の立案から実施、分析まで一人でこなされ、次々と課題を掲げて、解決ソリューションを定め、常にタスク満載で実行される姿は右往左往しているメンバーの刺激になりました。結果としてInstagramのフォロワー数は倍増しました。プロジェクト終了後も関係性が続いています。
プロボノの皆さんも参加しやすい環境を作って前進していきます
ウェブサイトに関しては、2020年に公開した当初から、サービスグラントでの支援をお願いしたいと思っていました。事業の方向性が見えてきて、団体の活動の基軸が整ってきたので、「チーム型での支援」の依頼を検討しているところです。

プロボノの皆さんの素晴らしい点は、多くが営利セクターの方でありながら、社会セクターの立ち位置や、社会セクターであることの長所・短所を理解してくださっていることだと思います。これからの市民社会をつくる一歩一歩を、あたたかく、そしてときに厳しく見守っていただき、身に余る支援をいただいている。そこに私たちは、言葉にできないほどのありがたさと、厳しい現状にへこたれながらも前に進み続ける、勇気と元気をいただいています。

GRANTのプロジェクトで苦労したことは思い浮かびません。ありがたいことばかりです。最初は、サービスグラントとグラントのサイトの違い、両者の画面のスイッチングの方法などがよくわからなかったのですが、直感的に試していく中で使いこなせるようになりました。サイト上での進捗状況のアップデートなどのやりとりと、ふだん使用しているビジネスチャットツールとの使い分けも、プロジェクトを進める中で、次第に理解できていきました。
いつだったか、GRANTで支援してくださるプロボノの方から、「itswellnessさんは、白紙の状態だから面白い」と言われたことがあります。私たちの団体は、はいはいから立ち上がりかけている段階だったので、そのプロボノの方からすると手の入れがいがあるということだそうです。私たちは着実に成長に向かっていきたくて、組織と事業の両輪を考えながら団体を回してきましたが、組織面の整備が全く追いついていないことを痛感しています。今後、セキュリティやコンプライアンスの面などでも、GRANTでご支援いただけたらと考えているところです。

GRANTの活用を検討している団体の皆さんには、「自分たちの等身大で、力になっていただきたいことを、率直に相談してみたらいかがでしょうか」とお伝えしたいです。GRANT募集時にかっこよく、大きく見せたとしても、プロジェクトがはじまれば、厳しい社会で鍛え抜かれているプロボノの方の目には、団体の状況は丸見えになります。自分たちの活動を、プロボノの方を含めて皆さんに、素直に身の丈でお伝えしていくよう、これからも努めながら、夢の社会を現実にしていきたいと思います。
  
※掲載内容は2022年6月取材時点のものです。