経験者インタビュー

培ったスキルが感謝につながる喜び
興味・関心があれば不安があっても
「GRANTをおすすめします!」

幸野隆英さん
NPO勤務
PROFILE
企業からリタイアした後はボランティア経験を重ねてきた幸野さん。参加したプロジェクトは団体さんからの評価や満足度が高く、プロジェクト終了後も監事として引き続きNPOの支援を続けています。現在は、認定NPO法人サービスグラントに勤務しながら、キャリアコンサルタント・セミナー講師としても活躍中です。
※幸野さんのGRANT参加実績はこちらからご覧いただけます。
チーム型のプロボノを経て、2つのGRANTプロジェクトに参加した幸野さん。プロジェクトを振り返りながら感じたことについてお話しを伺いました。
GRANTに向いているかも?という誘いがきっかけ
友人に勧められてプロボノを始めました。最初に参加したのは2022年の春の青森県でのふるさとプロボノ、チーム型のプロジェクトです。経歴もスキルも異なる5人のメンバーが集まってチームとしてひとつの成果を出したことがプロボノって面白いという経験につながりました。その時の事務局の方から「幸野さんはGRANTに向いているかもしれない」という話があって、当時はGRANTを全く知らなかったけど、一人で支援するという話を聞いて面白そうだなと思い気軽な気持ちで登録したのが最初です。

プロボノ経験の前は、任意団体でボランティア活動をしている友人を手伝って、収支をエクセルで作ってアドバイスするというお手伝いをしていました。私は「小技が利くタイプ」とその友人も言っていましたし、きっと事務局の方もそういったことを感じて向いていると思ったのかもしれません。実際、エクセルで細かい作業などが得意なタイプです。
汎用的な知識が役に立ちそう~会計の仕組みづくりのプロジェクト
最初に手を挙げたのは、和光市チームSDGsさんのプロジェクトでした。募集内容が「団体運営の基盤となる会計の仕組みづくりのアドバイス」で、読み進めると管理の方法を悩んでいる様子があり、まさしく友人のボランティア活動を手伝った会計まわりの仕組みを応用できるのではないか、これだったら自分の持っているスキルを活かせると思ったことがきっかけでした。

また、募集記事がわかりやすく、汎用的な知識があれば応募できる内容になっていることもポイントでした。団体の想いが強いあまり、ハードルが高く見える募集もある中で、和光市チームSDGsさんの場合は受け入れてくれるような表現になっていて、柔らかな書き方に魅かれて応募しようという気持ちになったように思います。

和光市チームSDGsさんの支援募集記事
対面の機会を交えながらプロジェクトを進行
和光市チームSDGsさんは任意団体で「日々の活動の会計まわりが苦手です。レシートを管理しながら整理をする方法がないでしょうか?」という相談内容でした。
最初の面談で、ある適度のニーズは把握しました。具体的な内容は直接伺った方がいいと思い、団体の代表と事務担当のお二人と埼玉県和光市の事務所近くでお会いしました。オンラインミーティングではお互いの情報量の違いや微妙な聞き取りに不安があったこと、顔を合わせることで先方が望んでいる熱量を感じたり、困っていることを確認したかったので実際に会って話しました。それを持ち帰って私の方でいくつか案をつくり、その後は3、4回、オンラインで打ち合わせをして進めました。プロジェクトは約2か月で完了しました。

プロジェクトでは、自動的に部門別の収支がわかるような出納表のフォーマットをエクセル作って納品しました。団体さんにとって使い勝手がいいカタチであることや実際に部門の設定や入力項目、科目を先方が自由にカスタマイズできることを考慮しながら進めていきました。質問はメールで連絡をもらってミーティング以外のタイミングでも随時対応しました。

苦労したことはあまりなく、楽しくやらせてもらったという印象が強いです。代表やスタッフが気さくで、わからないことはどんどん質問をもらいましたし、とにかくコミュニケーションがうまくいった感じです。たまたま、先方が要望しイメージしているところと、私が解釈して提案したことがピッタリとはまったことがうまくいった要因のように思います。

最初に団体の方々と面談したとき、お互いを理解したうえで、いろいろ話をして盛り上がったことで心理的に楽になりました。面談で相性が判るのはいい仕組みだと思いました。
プロジェクト終了後も団体の監事としてご縁が続いています
会計まわりは、全体がわかっていると「こうすればいい」というのが見えてくるのですが、実務をやっている人はそこが見にくいところでもあります。この点はボランティア経験が役にたちました。例えば、助成申請のために必要な情報は私も理解していたので「こうすればもっと簡単にできますね」「これがわかればこの助成金申請でも活用することができますよね」とイメージできました。それを提案すると、団体さんも「それ!」ということになってすごく盛り上がって楽しく進めました。

私が担当したのは会計まわりでしたが、団体さんが取り組んでいる子ども食堂や子どものための青空図書館の活動について初めて知ることができたことや、自分のスキルがカタチになって団体さんにすごく喜んでいただけたことが嬉しかったです。
団体さんとの関係はプロジェクト終了後も続いています。今は団体の代表が別のNPOを立ち上げたのでそちらの監事をやっています。GRANTでご縁をいただいた団体さんとのすごくいいお付き合いにつながりました。
私の知識でよければ支援したい~ホームページのプロジェクト
次に支援したのは千葉県松戸市のNPO法人 人材パワーアップセンターさんのプロジェクトでした(「第三者評価活動を周知するためのホームページの作成」)。

NPO法人 人材パワーアップセンターさんの支援募集記事

青森でご一緒したサービスグラントの事務局の方から連絡があって取り組むことになりました。それほど難度が高くないホームページを新たに作って欲しいと伺ったのでやらせてもらったというのが経緯です。

私はホームページ制作に関しては素人です。工学部出身で、昔からパソコン好きだったのでインターネットが流行りだした頃は自分のホームページや同窓会のホームページを作ったりしていました。最近はノーコードツールのJimdo(ジンドゥー)やWix(ウィックス)をチョロチョロと触る程度で、特別な知識は持ち合わせていませんが作ることが嫌いではありません。

簡単にホームページを作れるようになったのは結構画期的なことなんですよね。ホームページ自体は、掲載項目や内容さえ決まっていれば便利なツールを活用することでできる仕様になっています。私ができることは大したことではないのですが、ツールを使うことでお手伝いできますし、私の知識でよければ支援させていただきたいと思ったのが取り組むきっかけになりました。今回のプロジェクトではJimdoを活用しました。
団体の方と関係を築きながらプロジェクトを進行
最初の面談を含めてプロジェクトは基本的にオンラインで進行しました。面談である程度イメージを伺ったので、前のホームページからデータを移してデモ版を提案するところから始まりました。団体の中にホームページに詳しい人がいらしたので「こういったことはできませんか?」という技術的な面の要望を伺いながら、細かなところを修正していきました。歴史が長い団体さんなのでデータが10数年分あり、毎月の議事録をPDF化して画像にデータ変換し、ひたすらコピー&ペーストを繰り返した印象です。作業量と勝負したプロジェクトでした。約1か月のプロジェクト終了後、実際に団体さんにJimdoの操作方法をレクチャーし引継ぎを行いました。最後のレクチャーは対面で実施しました。

ホームページを作るとなると内部の方のご協力が不可欠ですが、団体内部に詳しい方がいて、実務的な内容について話をしながら進められたことが良かったです。知識がある方が担当されていたので連携もスムーズでしたし、先方のやりたいこともわかるので「こんなのどうですか」という提案ができました。今後の更新の引継ぎも不安はなく、何よりも関係を築くことができたのがよかったと思います。
ホームページの公開に関しては、理事会開催のタイミングも関わるため、現在は保留と伺っています。
自分のスキルで対応できるか、不安なところは最初の面談で期待値を確認
GRANTは自分で案件を選べます。自分のペースでできるので動きやすいです。最初の面談で期待値が異なっていた場合はお断りされることもありますし、お断りすることもあるでしょう。でも、そこでうまく合ったら絶対にうまくもっていけるという確信がありました。これまでの2つのプロジェクトは、「自分でできる」ということが最初の段階ではっきり見えていたプロジェクトかなと思います。

チーム型*のプロボノには別の魅力があって、チームメンバーとの協働や役割分担しながらみんなが成長していくことは大事です。GRANTとチーム型のどっちが向いているかは人によって違っていて、一人でやるのが好きな人もいるし、みんなとやるのが好きな人もいる。もしかしたら、チーム型とGRANTを行ったり来たりシームレスに動けるといいのかもしれません。
*チーム型のプロボノに参加するには?:サービスグラントのホームページをご覧ください。

一方で、GRANTのホームページでプロジェクトを眺めていると、レベルが高いというイメージがあり、自分のスキルが十分対応できるか不安なところも若干ありました。特にホームページやデザイン系など感性が重要となるスキルや独自の技術を持っている人は世の中にいっぱいいるので、そういった部分で求められているものと自分の持っているスキルのギャップが心配であったのは事実です。

特に、GRANTは一人でやらないといけないので、自分のスキルがそのまま直結します。団体に満足してもらえるのかが見えにくい。文章だけでは、結構高いものを要求されているのか、その体温が見えないところがあるので、そういった意味では不安なところがありました。その意味でも、GRANTでは最初の面談で団体の温度感を直に確認できるので、自分でできるかどうかが明らかになったうえで始められるのは良いと思います。
興味があるプロジェクトにはどんどん飛び込んでみたら!
そのような経験を経た中で、ぜひいろんな人にGRANTを体験していただきたいと思います。今は企業でも「越境学習」や他のフィールドに飛び込むということが言われていますが、自分の持っているスキルを自覚する、あるいはどう通用するのかを評価してもらうのにGRANTは最適なんです。求められていることに対して、自分がどこまで出来るか、所属している会社でのスキルが他の団体でどこまで通用するかが見えてきます。

セカンドキャリア、定年をむかえる方も、今までの環境の中で培ってきたスキルは意外と違うところでも役に立つという発見があると思います。自分からチャンスを広げていけば、もっと人生が楽しくなるとお伝えしたいです。

プロボノのプロはプロフェッショナルのプロではなくて、For(~のため)*という意味なんですね。誰かのためにという気持ちでとりあえず手を挙げてみるのがいいと思っています。自分のスキルを超えた内容であれば面談の時にそのように言ってもらえます。興味がある内容のプロジェクトや、関心がある支援先団体ならどんどんやってみればいいというイメージです。スキルの一致を双方が理解する機会として面談があるので、これは手伝えると思えば頑張ってやればいい。これからGRANTをやりたいと思っている方には「自分の中で不安にならずにどんどん前にでてみたら!」とアドバイスしたいです。
*プロボノ(公共善のために)のプロはラテン語のPro、英語のForの意味です。

業務に培ったスキルを団体さんに褒めていただくと、人に喜んでもらえることによって快感につながります。GRANTの経験は自己肯定感が高まります。


※掲載内容は2023年6月取材時点のものです。