経験者インタビュー

スタートは課題整理
外からの視点で見ていただきながら
発信内容を整理できました

庄司あいかさん
NPO法人絵本屋だっこ
PROFILE
NPO法人絵本屋だっこは札幌市で「絵本屋だっこ」というサイトを運営しながら「絵本から障害理解を広める」活動している団体です。

NPO法人絵本屋だっこさんは、2024年6月にNPO法人化、その後にGRANTに登録し2つのオンライン相談を実施しました。GRANTとの出会いや活用について代表理事の庄司さんにお話しを伺いました。
「長男が楽しめる絵本を作りたい」思いが活動のスタート
NPO法人絵本屋だっこは、私の個人の活動からスタートした団体です。私は絵本作家をしていまして、長男が難病を持って生まれた重度の障害児です。息子は言語理解が苦手でコミュニケーションに難しさがあり、目を見て笑ってくれるという体験がありません。そんな子でも楽しめる絵本を作りたいというところからこの活動をスタートしました。

「絵本屋だっこ」という名称はもともと「絵本から障害理解を広める障害児支援のための絵本屋さん」のサイト名です。絵本から障害理解を広めたいというビジョンを掲げてから、私の思いに賛同して集まってくださる方が増えて、活動スタートから約1年後の2024年6月にNPO法人化しました。主なメンバーは私の活動や発信をずっと見てきてくださった障害児のママたちです。他にも特別支援学校の先生や当事者の方々など、いろいろな方が関わってくださっています。

「絵本から障害理解を広める」ために障害理解に直接つながるような障害をテーマにした絵本を作っています。歌などリズムの要素をメインとしている、障害がある子もない子も一緒に楽しめる「インクルーシブ絵本」を作り、その絵本を活用してみんなが一緒に楽しめる「インクルーシブな場」を作りたいという思いで活動しています。年に1回程度、私が作った障害理解につながる絵本を地域の小学校や保育施設に配布したり、読み聞かせボランティア制度を作って全国で私たちの絵本を読んでもらって障害理解を広げていく活動を行っています。また、障害のある方の絵本出版を無償で支援しています。

絵本屋だっこのサイトでは障害理解につながる絵本をカテゴライズしていて、すべての絵本をご覧いただくことができます。絵本の内容もすべて公開していて、YouTubeでは読み聞かせ動画を紹介しています。私の絵本だけではなく、共感してくださる方が作品(絵本)を提供してくださってその売り上げも私たちの団体が管理させていただいています。サイトで買っていただいた絵本の売り上げを元にしてNPOの活動をしています。
GRANTとの出会いは紹介でした
GRANTは知り合いのNPOからの紹介で知りました。「プロボノを知っていますか」と教えてくださいましたがその時は話を伺うだけでした。その後、別の団体さんの助成金セミナーでNPO団体に役立つ情報をいろいろシェアしてくださるなかで「プロボノ」という言葉があり、改めて最初の方に詳しく聞いて「やってみよう」と思いGRANTに登録しました。
「オンラインでこういうことができます」という話を事前に聞いていたので不安はありませんでしたが「本当にプロボノの手が挙がる?」「本当に無料?」という点は、大丈夫かしらという気持ちはありました。でも、まずはやってみようと思って募集を始めました。
最初の募集は「課題整理」
最初の募集はオンライン相談の「団体の課題と今後の取り組みの整理」です。団体が私の個人の活動から始まっていたこともあって私1人でいろいろなことを抱えている状態でした。さらに、ビジョンを考えたり論理立てて進めることが苦手で、得意とするメンバーもいなかったのでどうしようと思っていましたし、団体の課題もぼやっとしていたのでまずは課題の整理で募集しました。
プロジェクトやオンライン相談といったGRANTの仕組みがまだよくわかっていなかったのですが、最初なので気軽なところから始めてみようという思いもあって、まずはオンライン相談でお願いしました。

支援募集記事:団体の課題と今後の取り組みの整理


広い分野に知識があるプロボノの方に手を挙げていただいたので、ホームページで課題と感じていた「ホームページで迷子になってしまう」についてお話したり、これから助成金をどうやって取っていこうかという悩みについて相談しました。お話をしていくうちに、「助成金に挑戦するにしてもまずホームページ整備した方がいい」というアドバイスがあり、次の募集ではその内容を依頼することにしました。
次の募集は「ホームページへのアドバイス」
私はSEOライター(ウェブサイトの検索上位を獲得する記事の制作のこと)の経験があってホームページは自分でWordPress(ワードプレス)を使って作っているのですが、サイト全体の構築はジャンルが異なるので専門性がある方にお願いできればと思っていました。オンライン相談で「ホームページ改善のアドバイス」という形で募集をかけたところ手を挙げてくださいました。

支援募集記事:ホームページ改善のアドバイス


「絵本屋だっこ」と「NPO法人」、2つのサイトを見ていただいて、こうした方がいいというアドバイスを受けて整理し、書き出したものをチェックしていただく形で進めました。「オンライン相談」は1回限りという仕組みですが、プロボノの方からの提案で最初の相談後も完了という形にはせずに何度かやり取りして時間をかけて見ていただきました。整理したサイトの改善点は完了後に私が修正しました。

改善した点をご紹介しますと、「絵本屋だっこ」のサイトはページ上部のグローバルメニュー内に細かいメニューを並べていたのですが、アクセスした人のニーズに沿っていない、ジャンルがバラバラのものが漠然と並んでいる感じだったので、どういう人がどういう目的で来訪するかというところを整理していただきました。
「どんな絵本があるか知りたい人」「絵本を作りたい人」「支援したい人」「障害児のご家族」と対象者を整理してくださったので、それぞれの対象者に合わせてメニューを見やすくしました。

絵本屋だっこホームページ(改善後)


もう一つのNPO法人のサイトについてはトップページにある「NPO法人絵本屋だっこの主な活動内容」は後から追加した箇所です。ページ内の情報が多くなっていたので、上部のグローバルメニューでわかりやすくし、サイト全体や寄付まわりをすっきりさせました。

NPO法人絵本屋だっこホームページ(改善後)


改善の効果かはわからないのですが、比較的大きな規模の企業からNPOのホームページ宛てに、社内研修の一環の取り組みで絵本の展示をしたいという問い合わせがありました。 NPO法人のホームページはとりあえずという気持ちで急いで作ったので整理ができていませんでしたが、今回アドバイスいただけて本当に助かりました。整えることができてよかったです。
手が挙がりやすいポイントが見えてきました
現在、募集中のプロジェクトが1件あります(「障害児者の家族や支援者向け講座の講師」)。

支援募集記事:障害児者の家族や支援者向け講座の講師


障害児を育てる家庭に役立つ情報を届けられればと思い毎月オンラインで講座を開催しています。今はつながりのある方に直接講師をお願いしているのですが、1回でも構わないので講座の講師をやってくださる方を募集する記事を出しています。 どんな講座かと言いますと、たとえば今月は「ミキサー食講座」を行いました。ミキサー食の見た目を可愛くする工夫や重度障害の子供にも役立つ情報をピックアップして紹介しています。実際に募集記事を出してみて、もう少しテーマを絞った方が手が挙がりやすいように思いましたので改めて募集内容を検討してみようと思っています。
外からの視点がありがたい
GRANTは、自分たちだけの視点では課題が見つかりにくいところを、外からの視点で見ていただけるのはすごくありがたいです。助かります。どこに相談していいかわからないことでもいろいろな能力やスキルを持った方と1つの場で出会えることは醍醐味ですし、思いを持ったボランティアの方々にサポートいただけるのはメリットしかないと思います。

息子に障害があるので、団体の活動は自宅で行っています。家にいながら全国へ発信する、やり取りはほぼオンラインという状態が通常でしたのでオンラインの仕組みという点に不安はありませんでした。エントリーした方はどんな方だろうと面談のときはドキドキしましたけど。
私は悩まず、とりあえずやってみようというタイプなので、性格的に「とりあえず募集記事を出してみたらいいんじゃない?」と考えます。1回やってみるとどんな感じかがわかりますので、これから始める方には「まず1回やってみてください」と伝えたいです。
これからのGRANTの活用は?
いろいろな活動のなかで、NPOにかけられる時間があまりないので事務的なサポートに関係する内容で募集することも考えましたが、今は助成金を活用したい気持ちが強くあるので、次のプロジェクトは助成金に関連した内容で募集することを想定しています。

助成金を調べることも高いハードルになっていて、情報が多すぎて追いついていけません。読み込んで申請する時間が取れないところも悩みです。とにかく助成金に関してはこれからという状況ですので次回は「初めての助成申請のサポート」という内容で募集してみたいと思っています。

※掲載内容は2024年12月取材時点のものです。