経験者インタビュー

オンラインで広がるつながりは
GRANTが生む社会との接点
家族でも職場でもない居場所

栗本 哲さん
メーカー勤務(経営企画)
PROFILE
人事異動を機に生まれた余裕の時間をどう活かすか模索する中で、プロボノと出会った栗本さん。チームで取り組むプロジェクトを複数経験した後、2件のGRANT案件に参加しました。これまでの参加経緯やプロジェクトの詳細についてお話を伺いました。
※栗本さんのGRANT参加実績はこちらからご覧いただけます。
技術から経営企画へ~キャリアと三大得意技
FA機器メーカーの経営企画部門に勤務しています。社会人になって27年目で、新卒以来ずっと同じ企業に勤めています。学生時代は電子回路を学んでおり、キャリアのスタートも技術職でした。入社後は製品開発や電子回路設計など、技術系の分野で経験を積みました。 転機となったのは、業務効率化のために自作のシステムづくりに取り組んだことです。この経験が評価され、システム部門へ異動することになりました。その後は経理を経て、現在の経営企画に至ります。経理に移った当初は数字に不慣れで周囲から心配もされましたが、なんとか乗り越えました。キャリアの大きな転換期は30代後半だったと思います。当初はシステム分野でのキャリアを描いていましたが、「もっと大きなことに挑戦できるかもしれない」と考え、経営企画への異動を前向きに受け止めました。 経営企画部に着任してから5年になります。日々パソコンに向かい、数字を読み解きながら業績を分析するのが主な仕事です。最近では社長が使う発表資料の作成も任されるようになり、伝え方や構成を工夫する機会が増えています。

これまで培ったスキルを「3大得意技」として挙げるなら、システム部門時代に磨いた「Excelの活用力」、現職で担う「業績診断」、そして複雑な内容をパワーポイントでわかりやすくまとめる「可視化力」です。とくにExcelと可視化力は、経理や経営企画の経験を通じて得意技になったと感じています。
チームで取り組むプロボノに参加
プロボノ活動を始めたのは、仕事上の転機によって生まれた時間の余裕がきっかけでした。今から7年前、親会社へ1年間の期限付きで出向することになりました。期限付きの立場だったためハードな業務を担当することはなく、残業時間が一気にゼロになり、パワーがあり余っていました。

この時間を何かに活かしたいと考え、「仕事で得たスキルを外で使えないか」と探していたところ、ウェブで見つけたのがプロボノでした。せっかく身につけたITスキルを業務で十分に使えていないと感じ、このままでは忘れてしまいそうだという不安もありました。活かせる場を探している中でプロボノの説明会情報を見つけたのが転機となりました。説明会直後にすぐに参加したわけではありませんが、しばらくして「やはり挑戦してみよう」と決意し、活動を始めました。そのころ参加したのは神戸市の事業であった神戸ソーシャルブリッジでのチームで取り組むプロボノプロジェクトです。

当初はシステム出身の経験を活かせるだろうと考えていましたが、関わったプロジェクトは営業資料の作成、活動方針の策定、キャッチコピーづくりなど、ITよりも資料作成や企画寄りの内容が中心でした。ITスキルをようやく活かせたと感じたのは、昨年取り組んだGRANTの業務改善プロジェクトでした。

プロボノを通じて得た印象や学びは多岐にわたります。社会課題に向き合う団体の方々も、それを支えるプロボノワーカーも、前向きな人ばかりで、とても刺激を受けました。会社とは異なるタイプの人たちと関わること自体が新鮮でした。

当時の活動で出会った仲間とのつながりも続いていて、今でも月に一度オンラインで集まり、イベントを開催しています。プロジェクトで出会った仲間と、これほど長くつながり続けているのは、とても貴重なことだと感じています。
kintone(キントーン)の業務改善プロジェクト
これまでGRANTで関わったプロジェクトは2件あります。初めてITスキルを活かせたのが、最初の参加となった認定NPO法人キドックスさんの業務改善ITプロジェクト(「活動をサポートするシステム(保護、支援、寄付等)の改修」)でした。

支援募集記事:活動をサポートするシステム(保護、支援、寄付等)の改修


このプロジェクトが印象に残っているのは、それまで営業資料作成などが中心だったプロボノ活動の中で、「ようやくITスキルを使えた」と実感できたことがあります。もともとITスキルを発揮したいという思いでプロボノを始めていたものの、その機会がなかなか得られず、ようやく実現したプロジェクトでした。

キドックスさんからの相談は、寄付管理に利用している「kintone(キントーン)」(Webデータベース型の業務アプリ構築クラウドサービス)での領収書リストの作成作業が非常に大変で、効率化する方法はないかというものでした。私自身、kintoneを使った経験はなかったものの、会社で利用している人がいたためまったくの未知ではありませんでした。加えて、データベース分野は得意で、データベーススペシャリスト資格を持っていたこともあり、「たぶんいけるだろう」という気持ちで取り組み始めました。実際にアプリを見ても、構造はそこまで複雑ではないと感じていました。
最終的には「kintoneからデータをまとめて抽出し、Excelで処理する」という仕組みを採用しました。kintone内で完結させなかったのは、既存のアプリ構造が複雑で、構造そのものに手を入れるのが難しかったためです。

プロジェクトは、2024年8月に始まり、翌年7月に完了しました。期間が延びた主な理由は、領収書の発送が四半期に1回で、テストができない期間が生じたためです。実際には冬のテストの段階で仕上がっている状態でした。
2025年7月に「これで完了としましょう」とGRANT上では区切りをつけましたが、完了後も「ここを少し直せますか?」といった相談を時折いただき、今でもつながりが続いています。

このプロジェクトは、一人で全て担当したことで、自分のスキルで確かに貢献できたという手応えがありました。チームの取り組みでは事務局の方が事前準備をしてくれますが、GRANTではそれがないため最初は戸惑いました。それでも「サポートがなければ自分でやるだけ」というスタンスで進め、振り返ると、それは大きな壁ではありませんでした。

完了後には、東京出張の際に茨城県つくば市にあるキドックスさんの事務所や活動拠点を訪れ、実際の取り組みを直接説明していただく機会も得られました。企業で働いているだけでは触れにくい保護犬などの社会課題に向き合うNPOの現場を知り、自分の知らない世界が広がっていることに驚かされました。
次のプロジェクトでの発見、熱意が人を繋ぐ
GRANTの2件目のプロジェクトは、最近完了した神戸の一般社団法人しんしんスポーツ・KOBEさんの案件(「活動PR資料(支援企業向け)の作成」)でした。

支援募集記事:活動PR資料(支援企業向け)の作成


団体とつながりのあったプロボノの方が「このボリュームなら個人よりチームで進めるほうが良さそう」と判断し、サービスグラントのスタッフである永野さんが神戸で運営するコミュニティ(KPC)が企画した「壁打ち会」で代表の方と知り合ったご縁から、私にも声がかかりました。その後、神戸ソーシャルブリッジの同窓会LINEや日頃つながっているメンバーに参加を呼びかけたところ手が挙がり、4名のチームとして取り組むこととなりました。

強く感じたのは、代表の方が「支援したいと思わせる魅力を持つ方」だという点です。取り組んでいる活動にも確かな手応えがあり、「これは社会にきちんと受け入れられそうだ」と思えるものでした。少し野心を出せばビジネスとしても成り立つのでは、と感じるほど可能性を秘めたプロジェクトでした。

仕事では経営者を目指して日々取り組んでいますが、プロボノでは大きな目標を掲げているわけではありません。困っている人の役に立てれば、その分世界が広がり、人脈も増える。そうしたプラスのある関わり方ができればよい、というスタンスです。自分では特別アクティブなタイプではないと感じていますが、周囲からは「温厚」「動じない」と言われることが多く、会社でも「期限が迫っても落ち着いている」「誰とでも関われる」と評されることがよくあります。自分では「野心むき出し」のつもりなのですが(笑)、確かに淡々として見えるのかもしれません。動じないのは意識しているわけではなく、自然とそうなっているのだと思います。事務局の永野さんから「静かなるチャレンジャー」「信頼しているメンバー」と言っていただき、ありがたい限りでした。

プロジェクト終了後も団体と関わりが続くポイントについて考えると、やはり「代表の思いの熱」であることが大きいと感じます。プロジェクト自体は終わっても、ほかのコミュニティにゲストとして招くなど、つながりを持ち続けています。プロジェクトが終わっても、別の活動を通して関係を維持していくことが、継続につながるのだと実感しています。
仕事以外の社会との接点を求めて
プロボノ活動に参加して感じた醍醐味は「仕事以外の社会との接点を持てること」に尽きます。特に、GRANTはオンラインで全国の団体とつながれるので、人脈の幅が一気に広がったと実感しています。東京出張の帰りに茨城県までキドックスさんを訪ねたエピソードにも触れましたが、会社勤めだけでは出会えない世界や人とのつながりを得られるのが面白いところです。地域に縛られず、オンラインを起点に出張先でリアルに会える可能性もある、こうした広がりは、まさにGRANTならではの魅力だと思います。今後もプロボノ活動は続けるだろうと感じています。

良い経験となったのは、仕事の幅が広がったことです。普段は一人でコツコツ進める仕事が多いのですが、チームで取り組むプロボノでは、4人前後で成果物をつくり上げる過程や、チーム運営そのものが学びになりました。また、コロナ禍で会社のオンラインミーティングが増えた際、プロボノで慣れていたおかげで「オンラインの対応に慣れているね」と言われることもありました。一方で、難しさを感じたのは2度のリーダー経験です。団体の期待が大きい分、その期待に応えられる成果物になっているか、常に気を張っていました。

それでも続けたのは、プロボノで得られる“出会い”があるからです。会社勤めだけでは得られない、会社を離れても続くような人脈が育ってきており、それが大きな魅力になっています。私にとってプロボノは、家族や会社に加えて「もう一つの居場所」になりつつあります。家族や仕事以外に新しい居場所をつくるのは意外と難しいものですが、プロボノなら少し関わるだけで、その居場所がゆっくり育っていきます。活動のペースも自分で調整できますし、一度関わると、プロジェクトが終わってもゆるやかにつながり続けられる面白さがあります。そこに、この活動の大きな魅力を感じています。


※掲載内容は2025年11月取材時点のものです。
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