【開催レポート】GRANT5周年記念イベント

2025.08.06
「GRANT5周年」を記念して、7月22日(火)にイベント「プロボノとつながる、可能性が広がる GRANT活用まるわかりトーク」を実施しました。




イベントでは、サービスグラントのチームによるプロジェクト支援の経験に加え、GRANTを活用された2つの団体をゲストとしてお迎えし、GRANTの活用事例をお話いただき、運営事務局よりGRANTの活用方法について紹介しました。

14団体(16名)にご参加いただいた「トークセッション」の様子をご紹介します。特に、チーム型とGRANTの違いに関するお話を中心にご報告します。

開催概要

開催日時:2025年 7月 22日(火)13:30-15:00
開催方法:オンライン(Zoom)
プログラム:
1 GRANTとは?
2 トークセッション
3 GRANT活用法のご紹介
4 感想共有

ゲスト

NPO法人きらきら星 宇田 遊さま(大阪府高槻市)
一般社団法人UMEプロジェクト 髙橋 真理子さま(広島県尾道市)

Part1 GRANTとは より「チーム型とGRANTの違い」

GRANT運営事務局(以下、事務局):団体から、「従来のプロボノプロジェクトとGRANTはどんなことが違いますか」とご質問をいただくことがありますのでご紹介します。
下の資料をご覧ください。左側の黄色いエリアがサービスグラントのチームによるプロジェクト型支援(以下、チーム型)、そしてもう一方、右側の青いエリアがGRANTです。


サービスグラントが20年前に活動を始めた当初は、5、6名ほどのメンバーで構成されたプロボノチームが団体さんを支援する形でスタートしました。チーム型は、年に数回、決まったタイミングで団体の皆さんから助成申請をいただいて、サービスグラントがプロボノワーカーさんのチームを編成してプロジェクトを発足します。複数名のプロボノワーカーの力を結集して大きな課題解決に導けるというところがチーム型の魅力です。
一方、GRANTはいつでも募集することが可能で、プロジェクトの内容もご自身で自由に設定していただけます。課題感としても、ちょっとしたことを手伝ってほしいというようなスケール感から募集できますので、2、3か月程度のプロジェクトを個人のプロボノワーカーと進めることで、チーム型に比べて柔軟な形で団体の皆さんにご活用いただいています。
本日のイベントでは、さまざまな支援の形があることを改めて知っていただき、とくにGRANTの活用について、皆さんの活動に役立つヒントとして持ち帰っていただけたら幸いです。



「Part1 GRANTとは?」動画はこちらです(YouTube、約5分30秒)

Part2 トークセッション

事務局:ゲストの皆さま、自己紹介をお願いします。

UMEプロジェクト(ゆめぷろじぇくと) 髙橋さま(以下、髙橋さま):一般社団法人UMEプロジェクト代表理事の髙橋です。広島県尾道市を拠点に活動しています。空き家を「こどもと多世代の居場所」として再生し、子どもから高齢者まで多世代が交流し支え合う場を創出しています。経済的困難を抱える子どもへの学び支援や居場所づくりに加え、高齢者支援やフードドライブなど、地域が抱える多様な課題解決に取り組んでいます。


これまでチーム型で2つのプロジェクトを実施し、GRANTの活用は2020年からスタートしました。GRANTでは、これまで5つのプロジェクトに取り組み、個人のプロボノの方に、会計の基盤作りや助成金申請のサポート、アイデアの整理の作成など、本当にフルに活用させていただいています。
非営利団体はお金がない、人がいないというところがありますので、プロボノの方に参画いただいて、持続していける活動にするために団体の皆さんにどんどん活用していただきたいです。本日はこのような場にお招きいただいて本当に光栄です。また引き続きGRANTを活用させていただきたいと思っております。
※UMEプロジェクト 髙橋さまのGRANTインタビュー(2024年12月実施)はこちらからご覧いただけます。

きらきら星 宇田さま(以下、宇田さま):大阪府高槻市で活動しているNPO法人きらきら星の代表、宇田と申します。主に地域の高齢の方を対象に、夕食として手作りのお弁当をお届けするという事業を行っています。お弁当の配達とあわせて、お届けした方の安否確認や声かけもしています。高齢の方だけでなく、地域の子育て世代の方、仕事が忙しくてなかなかバランスの取れた食事を食べられていない世代の方にも利用していただき、地域に根付いたお弁当屋さんとして、できるだけバランスの取れたお弁当をお届けして元気になってもらう活動に取り組んでいます。
最初にチーム型でウェブサイトの制作の支援をいただきました。他の団体さんから、すごく丁寧で楽しく自分たちの目標とする成果物ができるという話を聞いて、ホームページの作成をお願いしました。その時は約半年の期間ですごく素敵なホームページができました。
その後、「ホームページを作るほどの規模ではないけれど、支援を受けたい内容がある」とスタッフに相談したところ、GRANTについて教えていただきました。そして、事務作業を可視化したいという目的で、GRANTのプロジェクトに取り組むことになりました。このときも、活動はとてもスムーズで、楽しく進めることができたと思います。


事務局:ご紹介、ありがとうございます。今回のトークでは、「チーム型とGRANTの違い」をテーマに取り上げています。「チーム型とGRANT、どちらがいいの?」という話は、われわれ事務局も団体さんからよく質問をお受けします。お2人は両方とも経験されていると思いますが、違いなど、感じているところについてお伺いしたいと思います。

髙橋さま:どちらも本当に好きで楽しいのですが、チーム型は5人ぐらいのプロボノの方が集まってくださるので、それぞれの方に個性があり、意見も活発に出しやすい雰囲気があります。たとえば資料制作では、内容がどんどんアップデートされていく様子がわかりますので、活動資料を作りたいと思ったときはチーム型に応募しました。一方、助成金の申請はGRANTで募集しています。募集内容によって使い分けをさせていただいて助かっています。

事務局:これまで5件のGRANTプロジェクトを実施されていますが、最初のプロジェクトは事業アイデアの整理で活用されています、GRANTは、チーム型と比較すると、団体さんが自分自身で進めていかなければいけないというところがあります。ご自分で募集記事を立ち上げて、応募された方と面談をして、その後も直接やり取りしながらご自身で進めていくということへの不安はありませんでしたか。

髙橋さま:私は本当に強運で、プロジェクトを募集すると複数の方が手を挙げてくださったり、プロボノの方にオンラインでのやり取りを誘導いただいて、こちらが慣れていくといったこともありました。だから、不安がらずどんどん募集登録をして、プロボノの方にどんどん引っ張ってもらいながら活用していくのがいいと実感しています。プロジェクトの最後に「次に何かあったらお声掛けください」という申し出がきっかけとなって、続けて2回支援してくださった方もいらっしゃいました。私は人と打ち解けるのが早く、オンライン上であってもコミュニケーションを重ねることで人と人とのつながりが生まれるのを実感していました。プロボノの方々も、まるでメンバーの一員のように団体に深く関わって最後の仕上げまで一緒に取り組んでくださる姿には、いつも大きな力を感じています。

宇田さま: チーム型の感想から言いますと、知らないのはもったいない、みんなやったらいいというのがまずあります。ホームページは1人では作れないし、自分は忙しい、でも作りたいということでチームの皆さんとご一緒しました。関わっていただいたサービスグラントのスタッフのきめ細かなフォローや対応もすごく良かった。不安なく、作業に集中して取り組めました。
最初は「どんな人が来るのかな」と不安もありましたが、自分を含め、さまざまな個性を持った人たちと出会い、いろいろな意見を交わすことは、自分にとっても、相手にとってもきっとプラスになるはずだと考えました。なので、最終的には「どんな人でも歓迎」という気持ちで臨んでいました。いろんな人が来て、こうした方がいいとか、こっちの方が見てもらえるという話し合いや客観的な意見すべてがきらきら星のためになっている。きらきら星が外からはこういう見え方しているというのもわかりました。チーム型でご一緒した方々とは、その後もたまに連絡を取ることもあって、自分の中では思い出深いものです。
GRANTに関してもチーム型と同じ感想になりますが、みんなやったらいいと思っています。GRANTでは、具体的、業務的な内容で募集しました。プロジェクト「配食サービスに取り組む団体運営業務の可視化」です。代表である僕自身が、今の業務でもう手いっぱいで整理ができていないというのがありました。事務的なこと、厨房での調理、配達など、足りないところを全部自分が補っていて1日があっという間に過ぎていく。このままじゃいけない、僕に何かあったら絶対に回らなくなる、という危機感があって業務を整理したいと考えました。

支援募集記事:配食サービスに取り組む団体運営業務の可視化


どんな方が来てくださるのかなと思っていたところ、タイプの異なるお2人が手を挙げてくださいました。そこで、「もともとの募集内容を2つに分けてお願いしよう」と考え、それぞれに異なる内容をお願いすることになりました。
ひとつは、事務作業を業務マップで可視化してもらうことです。僕が普段どのような手順で事務作業を行っているかを図にして、目で見て分かる形にしてもらいました。それを僕なりに整理することで、他のスタッフでも担えるのではないかと考えました。フォーマットも作成してもらい、引き継ぎにも使いたいと思って依頼しました。イメージしていた通りのものができあがり、少しずつ実際の業務にも取り入れられるようになってきています。
もう一つは、配達に関する業務の整理です。ちょうど新しい配達員が3、4名加わるタイミングでもあったので、配達マニュアルや関連情報の整備をお願いしました。これまで配達の順序やマニュアルは主に口頭で伝えていたため、十分に共有できていない部分が多くありました。受け渡しの方法、配達区域、ルートなどを文章化し、写真も交えて視覚的にも分かりやすく整理していただきました。このマニュアルは新しく入った配達員への指導時にも使えますし、これまで配達を担当していたスタッフにも再確認のために使えるのでとても実用的な成果物になりました。成果物をデータでいただいたことで自分でアレンジして使える点もとても助かっていて、本当に「ありがとうございます」としか言いようのない仕上がりです。
プロジェクトは少しずつ、僕の隙間時間の1、2時間を積み重ねながら進めていきました。システムの中にスケジュールを管理できるフォーマットがあるのも、きめ細かいサービスだなと感じています。今は時間がなくてできていませんが、今後もGRANTを活用させていただきたいと思っています。

Q&A

参加者の皆さんからお寄せいただいた質問をご紹介します。



Q1:プロボノに無償で支援いただくのはすごく心苦しい思いがあります。何かアドバイスをいただけますか?

A(髙橋さま):私もGRANTを活用させていただく前は、そういう気持ちを持っていたと思います。コロナ禍で首都圏ではテレワークが進み、通勤や飲み会もなくなりました。その中で、社会貢献への関わりが企業内での評価につながると親族や甥から聞いたことがあります。自分たちも社会に貢献したいという思いはありつつ、これまでは業務の忙しさが障壁になっていたこともあったようです。社会のあり方が変わる中で、プロボノの活動は個人にとっても企業にとっても有効な形で社会課題の解決に一緒に向かっていけると感じています。だからこそ、もっと積極的にプロボノを活用してよいと思いますし、遠慮はいらないと思います。



Q2:宇田さんにお伺いします。GRANTで支援内容を2つに分けて2人にお願いしたというお話がありました。それは宇田さんのアイデアですか。それともコーディネーターの助言がありましたか?

A(宇田さま): コーディネーターの助言です。ちょうど同じ時期に2名の応募があり「こういう時はどうしたらいいですか」とまずコーディネーターにご相談しました。1人に絞るということは、1人を断らないといけないけれどもどうしたらいいのかともご相談したところ、「お断りしても大丈夫です。今回の場合はできることが分けられるので同時に進めるのはどうですか?」と言っていただきました。1人でも多くの人に出会いたいと思っていたので2人の方と進めることができたことは嬉しかったです。



Q3:髙橋さんにお伺いします。助成金の申請の際にGRANT活用されているとのことでしたが具体的にどのようなことをお願いされましたか? 「助成申請書類のお手伝い」は短期間でのプロジェクトと思います。もしもプロボノが決まらなかった場合はどうされる予定でしたか?

A(髙橋さま):私自身、言語化や助成金申請が得意なこともあり、まずは団体できちんと形を作ってそれからプロボノの方にご相談する、サポートしてもらうっていうことを原則にしています。助成金規模の大きいものはボリュームも多いですし、プロボノの方は支援の経験値もお持ちなので、自分が作ったたたき台に対してもっと良い表現方法とか、ポイントの押さえ方について相談させていただきました。決まらなかったら、それはそれで大丈夫だと思っていましたが、決まらないわけがないという自信もありました。この時は、コーディネーターに時間がないという点を相談させていただいたことを覚えています。



Q4:GRANTは、プロボノにいかに見つけてもらうか、手伝いたいと思ってもらうかが大事だと思います。募集の際に意識されたことや工夫されたことはありますか?

A(宇田さま): GRANTに関しては、募集記事に食べたくなるような写真、「焼き鯖」を載せたという1点です(笑)。いい方たちばかりだと思うので安心して募集しました。自分の思いを文章化して載せれば大丈夫と思います。

A(髙橋さま):鯖ではないですけど、子供に関わる団体なので、子供が楽しそうにしている姿やいい笑顔の写真を選ぶようにしています。募集記事では、団体の思いに共感いただきたいということを強調しています。こういった活動に「いいね」と思っていただける方、子どもを元気に、地域を元気にというミッションやビジョンに寄り添っていただける方というところを伝えるようにしています。



Q5:宇田さんにお伺いします。きらきら星さんのホームページを拝見しました。企画からデザイン、実装まですべてを外注するような形で公開可能なところまでプロボノさんに依頼したのでしょうか? それとも、デザイン・制作の手前の企画までを依頼しましたか?

A(宇田さま):チーム型支援のプロジェクトですね。ホームページは話し合いをしながら1から作り上げた感じです。僕の中ではなんとなくでもビジョンはあったので、どうやって言葉で伝えて共有していくかということを意識して進めていきました。雰囲気はこんな感じ、フォントはこんな感じというざっくりしたイメージを伝えたり、イメージに近いホームページの事例を見せたり、プロボノさんからも参考になりそうなホームページを教えてもらいながら、みんなの意見をすり合わせて進めていきました。実装までプロボノチームと一緒にやり遂げた感じです。
どういうホームページを作りたいかということにもよると思います。例えば、明らかにプロに依頼したようなものなのか、本当に団体をわかってもらうためのホームページが作りたいのか。でも、何十万円払って作るようなものをプロボノに求めているとしたら正直それは少し違うのかなと思います。僕は一見してプロが作ったことがわかるようなホームページは求めてなかったので、できる範囲でプロボノチームと一緒に話し合いながら進めていきました。

A(事務局):事務局より補足します。GRANTで募集する場合は、実装まで依頼することも特に制限はありません。ですが、ボリューム感はものすごく大事で、仮に現在50ページがあるホームページをリニューアルしたいということになると、なかなかハードルが上がってしまうので手は挙がりにくいかなと思います。きらきら星さんの場合は、小規模とはいえチームで進めたプロジェクトなので、半年程度の時間をかけて取り組めたということもあります。GRANTの場合は、1人もしくは2人ぐらいで担当することが多いので最初にボリュームは必ずご相談をした方がいいと思います。 ご相談は、コーディネーターにいただくのもいいですし、GRANTには「オンライン相談」という仕組みがありますので、2回、プロボノとお話してみるというやり方もおすすめです。ぜひ使ってみていただければと思います。



Q6:音楽のライブや参加型のワークショップ、セミナーを中心に活動している団体です。音楽家の方たちは報酬の有無をすごくセンシティブに感じていらっしゃるところがあります。団体としては、写真撮影や受付に関してはお互いに協力しながらやっていきたいのですが、中には搾取されているように感じてしまう方や、御礼をお出ししたら無償の時よりも熱意が感じられなくなった方もおられて難しさを感じています。これまで私たちが接してきた方々とプロボノの方々はだいぶ違うようにも感じていまして、GRANTではどのように募集すればよいかという点についてご意見を伺えればと思います。

A(事務局):共通して大切なのは、最初に役割をしっかり決めて、お互いが納得したうえでスタートすること。その部分を丁寧にすり合わせることが大切なのではないかと思いました。

A(宇田さま):事務局の方がおっしゃったように、納得した上でスタートというのが1つのポイントと思います。もう一つは、僕自身の感覚になりますが、「とにかくやってみる」ということです。まず飛び込んでみる。やってみないと分からない、というのが、僕から伝えられることかなと思います。




「Part2 トークセッション」動画はこちらです(YouTube、約54分)