経験者インタビュー

Uターンがきっかけで活動スタート
目指しているのは
全ての世代に暮らしやすい地域

髙橋真理子さん
一般社団法人UMEプロジェクト
PROFILE
一般社団法人UMEプロジェクト(ゆめぷろじぇくと)は広島県尾道市で活動している団体です。東京からのUターン移住を機に地域の課題への気づきがあり、空き家を再生した「UMEhouseうらしま」を拠点に、多世代交流の場を提供し子どもから高齢者の支援へと活動を広げています。

UMEプロジェクトさんは、2019年に活動を開始。スコーパソンやチーム型の支援を経てGRANTではこれまでに5つのプロジェクトを実施しました。GRANTとの出会いや活用について代表の髙橋さんにお話しを伺いました。
Uターン移住した地域での社会課題に気づいたことがきっかけです
東京から広島県尾道市にUターン移住して2拠点の生活をスタートし、ここには社会課題がたくさんあることに気づきました。東京で長年、学童保育に携わり小学生や保護者と関わっていたので、最初に感じたことは都市部と地方の子どもたちの格差です。この地には自分だからやるべきことがあると思い介護をしながら任意団体としてUMEプロジェクトの活動をスタートしたのが2019年のことです。

活動している尾道市浦崎町は尾道の飛び地にあたる地区です。瀬戸内海に面していて、自然環境が豊かで風光明媚、とてもいいところですが交通の空白地帯でもあります。昭和30年代には人口が1,000世帯、6,000人だったところ、今は2,800人と半世紀で半減しまして、65歳以上の高齢化率が44.4パーセントと日本の社会課題の縮図を全部落とし込んだような地域です。

ひとつの解決の手立てとして社会資源である地域の空き家を活用した「子どもたちと多世代の居場所」を立ち上げたいと思ったのがきっかけとなり、地元大学と共同研究を締結して空き家の再生リノベーションをスタートしました。みんなの居場所「UMEhouseうらしま(ゆめはうすうらしま)」を2021年5月より開設・運営しています。

ここは平日の月曜日から金曜日まで地元の小学生たちが放課後に「ただいま」と帰ってくる居場所です。私自身は市内の小学校に勤務していまして、経済的に厳しい家庭の子どもに向けて地域の方々や学生、先生の協力のもと学びの支援も行っています。こども食堂も始めました。
子どものことが形になってきたタイミングで、ぜひ高齢者のこともやっていただきたいという地域からの要請があり高齢者の支援もスタートすることになりました。大学の先生と一緒に行ったアンケートで「移動に伴う困難や不安」の声が最も多い結果となりましたので、通院や買い物サービスという移動支援にもボランティアの方に登録いただく形で取り組んでいます。
課題整理ワークショップ「スコーパソン」は道筋を作る機会になりました
GRANTやプロボノを知ったきっかけは、川崎市の団体のイベントで話を聞いたことです。すぐに検索して登録し、2021年夏の課題整理ワークショップ「スコーパソン」で初めてプロボノとご一緒しました。

スコーパソンでは5名のチームに支援をいただきました。団体の課題を明らかにして何を最優先として取り組まなければいけないのかということを、スキルを持ったプロボノの方々が時間を割いて動いてくださったことにすごく感激しました。

私たちの団体は人的リソースが少ないので「事務をサポートする方がいた方がいい」「いや、高橋さんが子どもにかかわることに集中できるようにボランティアを増やした方がいいんじゃないか」とか「ボランティアを集めるならこういったフライヤーがあれば」というお話など、いろいろなご意見をいただきながら現状ではここを最優先にする、次はこれで次はこれ、課題を並べてどのように解決して次につなげていくかという話をする機会となりました。本当にありがたかったですし、自分では見えなかったことが明確に見えてきて、優先順位をどこに持っていくなどの整理ができました。

2022年には、企業で取り組むプロボノチームに支援をいただきました。その時の成果物は「ファンドレイジングを含めた団体紹介の活動資料」です。マスメディアの掲載媒体のリストを含めるなど、素晴らしい資料を作っていただきました。
この資料は今でも居場所づくりに関する大学での特別講義や地元の社会福祉協議会、ライオンズクラブでの講演の場面で活用しています。資料を助成金の交流会で紹介する機会があったのですが全国の団体から「すごく良くできている資料」と賞賛いただきました。
GRANTで5件のプロジェクトを実施しました
プロジェクト 支援者 完了時期
1 事業アイデアの整理(スライド作成) KATSUOさん 2021年10月
2 団体紹介資料(ドラフト有)の最終化 KCさん 2022年11月
3 助成金申請資料作成のお手伝い KCさん 2022年12月
4 助成金申請書作成の伴走サポート セキヒサさん 2024年 1月
5 一般社団法人の会計の基盤づくり Nobuさん 2024年 5月

これまでのGRANT実施プロジェクト


GRANTでは、これまで5件のプロジェクトを実施しました。最初は2021年の「事業アイデアの整理(スライド作成)」です。この時の成果物はホームページに落とし込む時にすごく活用させていただきました。

2022年の2件のプロジェクト「団体紹介資料(ドラフト有)の最終化をお願いします」「助成金申請資料作成のお手伝い」は、休眠預金の助成金申請に向けた資料の準備でご協力をお願いしました。
また、2023年にはWAM(独立行政法人福祉医療機構)の助成金申請でご協力をいただきました(「助成金申請書作成の伴走サポート」)。
2つの助成金申請にプロボノの皆さんのサポートをいただいてとても素晴らしい申請書ができたのですが、休眠預金の助成金については最終段階で必要な書類を揃えることが難しくなってしまい残念ながら申請を諦めることになってしまいました。
一方、WAMは初めて高齢者の分野で助成金をトライしたのですが不採択でした。このときは高齢者分野の助成金に初めてのトライでしたので経験値が足りずにまとめきれなかった感があります。これまで子どもの分野で多くの採択をいただいたのは経験に基づいたことを書けたからということを改めて思いました。その後、活動のプロセスを組み立て直し、高齢者の分野での別の助成金を獲得することができました。

直近のプロジェクト「一般社団法人の会計の基盤づくり」は昨年(2024年)実施しました。支援者の方は「僕は税理士などの会計の専門家ではないのですが何か力になれることがあれば」と手を挙げてくださいました。最初にお話をしたときに「これからは資金調達やファンドレイジングの面で企業にどんどんアピールしていきたいです」とご相談したところ「そちらの方面のサポートができます」と言ってくださったので、資金調達に向けた資料作りをお願いすることになり支援をいただきました。

支援募集記事:一般社団法人の会計基盤づくり


手を挙げてくださった方とは基本ご一緒しています。私たちの団体でプロボノをやってみようと思う方でしたらきちんとした成果物が生まれると思いますので、出会えるべくして出会うというご縁をすごく感じています。
同時に、自分たちの募集記事を目にした方が、どれだけプロボノをしたいという気持ちを持っていただけるかということはすごく考えながら準備をします。

プロジェクトで気をつけていることは約束をきっちり守ることです。プロボノの方と進めていく中で、次のミーティングまでにこの部分を落とし込んでもらえますかという話になりましたら、準備をきっちり行って次のミーティングを迎えるようにしています。落とし込みが難しかったら率直にメールでお伝えすると、きちんと拾って返してくださいます。こちらも誠意を持ってお応えしてプロボノの方と一緒に作り上げていくことを心がけています。
プロボノの皆さんの企業目線での言葉がありがたい
特に助成金の申請書類を準備しているときに強く心がけている点ですが、団体がどんな活動をしていて、どこを目指しているかということは活動を知っている方はわかります。でも、知らない方にもちゃんと言葉にして伝えていかないといけません。プロボノの方は企業で培ったスキルを持っていらっしゃいますので企業目線できちんと言葉を投げてくださるというところがすごくありがたいと感じています。
プロボノの方はいろいろな団体の支援経験を持っていらっしゃる方もいます。団体は違っても課題は大きな違いはないと思いますので、団体支援に経験を重ねていらっしゃるからこそ的確なご意見やアドバイスをいただけるように思います。

同時に、団体側が受益者の声を拾いやすい環境にあるというのは私にとってはすごく大きいことです。地域には子どもや高齢者、ハンディを持った方などさまざまな方が住んでいます。だから全ての世代にとって暮らしやすい地域であることはすごく大事ということをこの活動をしていて改めて認識できたように思います。非営利の活動を始めて自分でも知らなかった自分に気づきながら日々活動しているところです。
団体の皆さんへ「とにかく踏み出してみたら!」
サービスグラントさんのことは他の団体さんによくお話しています。「とにかく登録してみてください」とかなりの頻度で言っている感じがします(笑)。団体の皆さんは最初の1歩を踏みだすことに不安があるように思います。
何が1番困っているかが見えない場合はまずそれを整理する。助成金申請のサポートやこういう資料を作っていただきたいといったお願いしたいことが明確に分かっているのでしたらそちらで募集してみる。大事なことは、プロボノの方に丸投げするのではなく、自分たちが整理して課題解決をしていくためにサポートいただいているのだからまずは自分たちができるところは自分たちで揃えて、それに対してプロボノの方からご協力をいただいたり、他団体さんの事例を教えていただいたりすると、さらにアップデートできる、そこが根本だと思って取り組むことと思います。
プロボノの方は団体のメンバーの一員のように取り組んでくださいます
GRANTの醍醐味は素晴らしいスキルをお持ちの方々とオンライン上でつながることができるということです。一緒に現地で動いているわけではないのですが課題に対しての共有意識があると団体のメンバーの一員みたいになってくださいます。ミーティングを重ねていく中で団体の一員として捉えてくださっているのがちゃんと伝わってくることが本当に醍醐味と思います。

私たちのような非営利の団体にスキルを持ったプロボノの方がこんなにもお力添えいただいてメンバーの一員のようになってくださる。プロボノの皆さんだけではなく、サービスグラントのスタッフの方たちが誠意を持って団体に寄り添ってサポートしてくださるっていうところが本当心強いです。
こういう活動していると疲弊もしますしモチベーションが下がる時もあります。このようにサポートいただけることで、やらなければならないことがクリアになって、整理ができて、また次のステップに進んでいけるというのは本当に嘘でもなんでもなく正直な感想として自分のモチベーションを高めるにも、団体としても本当にありがたい。お力添えをいただいていることをしみじみと感じています。


※掲載内容は2024年12月取材時点のものです。
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