経験者インタビュー

活動を深く知ろうとしてくれる、
医療とは異なるバックグラウンドの
心強い方々との出会いの場

中井みつ穂さん
一般社団法人ことばサポートネット
一般社団法人ことばサポートネットは、ことばやコミュニケーションの専門家である言語聴覚士を中心に設立されました。言語聴覚士がいつでも寄り添える体制づくりを目指し、オンラインでの言語療法の提供、施設連携や情報発信等を行っている団体です。
ことばサポートネットさんは、2023年5月の団体登録から約半年で4つのプロジェクトに取り組みました。窓口を担当している中井みつ穂さんにプロジェクトの進め方やGRANTを活用した感想等についてお話しを伺いました。
言語聴覚士が立ち上げた団体です
ことばサポートネットは、2022年4月に言語聴覚士が立ち上げた非営利の団体です。
言語聴覚士はリハビリテーション(以下、リハビリ)に従事する職業の1つで、コミュニケーションや食べる障害に対応する専門職です。大半の言語聴覚士は病院に勤務し、主に、脳梗塞等の病気で飲み込みや話す機能に障害を持った方へのリハビリを行っているのが現状です。
一方で、私たちの団体が対象にしているのは発音獲得の支援に関する領域です。ことばの相談支援のほか、病気等とは無関連に誰にでも生じうる「機能性構音障害」を中心に、小児・成人を問わず、発音練習を実施しています。
団体の継続のためにスキルを持った人との出会いを希望していました
GRANTの存在は、インターネットのキーワード検索で非営利団体向けのサポートを探している中で知りました。GRANTを活用するにあたって、窓口は私が担当していますが、プロジェクトの内容の細かなところは私だけでは決定できないことがまだまだたくさんありますので、意思決定は、団体の代表にも確認をとりながら進めています。

団体メンバーはほとんどが言語聴覚士で、基本的には患者さんに言語療法を行う仕事をしているので、法人運営の経験のある人はいません。フリーランスの言語聴覚士もいる中、あえて法人を設立したのには「支援が私たちの代で途切れることなく末長く継続できるように」との思いがあります。そのために、安定した財源が必要だということはずっと話し合っていたことなので、その方法を模索している中で広報やマーケティングに知識のある方に支援をお願いできたらいいなと思っていました。
やるべきことはほかにあるというアドバイスがあった最初のプロジェクト

支援募集記事:どの地域、自治体に言語聴覚士が不足しているかについてのリサーチ

最初のプロジェクトは「リサーチ」です(「どの地域、自治体に言語聴覚士が不足しているかについてのリサーチ」)。私たちの将来的な目標として、ことばの相談や発音の練習の事業を自治体と協働したいということがありました。私たちの提供する言語療法は保険適応されないので自費になります。困難をお持ちの方が、経済的なことを理由に利用を制限されてしまうことは私たちとしても本意ではありません。誰でも困っていたら利用していただきたいという気持ちがあり、そのためには行政と連携できると良いのではないか、との思いがありました。どの自治体にアプローチをしようかというところで、営業のためのリストになるような情報が欲しくてリサーチをお願いしたいと考えました。

プロジェクトに関心を持って声をかけてくださった方は2人いらっしゃいました。プロボノワーカーとしてもお仕事の経験も豊富な二人からは「このプロジェクトで答えを出すことは難しい。今やるべきことはもうちょっと手前にあるんじゃないか」ということをそれぞれお話しいただきました。そういったやり取りを含めて勉強になった感じなんですが、まず団体のことを見直して、いま自分たちが何をやっていて、できることはどういうことで、何ができていないんだろうというところから一緒にお話をしました。
実際に支援いただいた内容は募集記事の内容そのままではなかったんですけれど、もっと地場を固める、というところに助言をいただきました。
自治体への訪問に備えて提案書を準備するプロジェクト
自治体の営業リストだけではなく、どんなことでも教えていただけたらありがたいと思っていましたので、最初のリサーチのプロジェクトに関心を持ってくださったもう一人の方とお話して準備したのが二番目のプロジェクト「自治体での言語聴覚療法導入に関する提案書の作成」です。

支援募集記事:自治体での言語聴覚療法導入に関する提案書の作成


最初にお話をしたのは6月上旬だったと思います。そこで「今後、自治体を訪問する場合に備えて提案書があったらいいんじゃないか」という話になって、そこから募集記事を準備し、プロジェクト公開後にその方がエントリーしてくださったという流れで進みました。

提案書の内容は、お話しする中でキーワードを拾い上げてプロボノワーカーの方が作ったものもありますし、もともとホームページ等で説明に使っている文章をそのまま抜き出したものもあります。図に関してはいくつか提案いただき、中でも「無理のない改善のステップ」を示す図はわかりやすいアイデアを出していただいたと思います。提案書を作る過程でまとめた内容は、提案書とは別にリーフレットとして納品いただきました。
提案書作成のために言語化することによって、私たちはこういう活動をしてるんだ、強みや魅力、プラスの点はこういうところなんだなということを改めて教えていただくことになりました。団体を育てていただいたプロジェクトという感じがしています。

成果物(リーフレット)より一部抜粋


このときのプロボノワーカーの方からは、このプロジェクト終了後にも新たな取り組みも支援をいただいています。助成金を活用した「ことばの相談会」のチラシの作成です。言語聴覚士向けの講座のチラシは私たちも作ったことはあったのですが、今回は、信頼できる団体と思ってもらえるようなチラシを作りたいと考えていたので、デザインスキルのある方にお願いしたいと思っていました。

ですが、私たちにとってはデザイナーさんを探すのは難しいことです。知り合いもいないですし、費用の相場もわかりません。今回は、パンフレットを作っていただいたというご縁から「チラシの作成もお願いできませんか」とお話しし快諾いただきました。
ちょうど、数日前から私たちの団体のクラウドファンディング「発音でからかわれる子どもを救う、人を動かすパンフレットを作りたい。」が始まったところなんですけど(クラウドファンディング実施期間:2023年11月22日~2024年1月20日23:00)、どんな構成でどんな文章がいいか、などについてもアドバイスをお願いしたところです。
私たちの活動を知っていただくためにGRANTを活用しています
次の二つのプロジェクトはプレスリリースです。プレスリリースは団体への信頼にもつながるかもしれないと考えていたこともあって以前からやってみたいと思っていました。ちょうど、チラシは配布すれば効果があるいうことがわかっていたものの、インターネットでの広報がうまくいっていないことが気になっていました。ホームページとSNSだけでは限界を感じていたのでプレスリリースってどうなんだろうって思ったんです。
でも、経験もないですし、何をどこにどうしたらいいかが全然わからなかったのでGRANTで募集することにしました。プロジェクトには2人からお声かけがあったので、それぞれ別のプレスリリースをお願いすることになりました。

一人の方にすべてをお願いすることもできたのですが、私たちのことを多くの方に知ってほしいという思いもあってちょっとずつ複数の方にお願いしました。私たちの話を聞いて、こんなことをやっているんだと知ってくださることも活動の大きな役割の一つかなと思い、そういう意味でもGRANTを活用しています。



私たちはプレスリリースの形式についての知識もなかったですし、言いたいことがいっぱいあって内容をまとめるのも難しいかったと思いますが、プロボノワーカーの方には多大なご協力をいただきました。プレスリリースの作成以外にもリリースにあたっての連絡先をまとめていただいたりと本当に助かりました。今回、いろいろな事例を見せていただいたり、ひな型も作っていただいたりしましたので、少しずつ自分たちでできるよう、スキルを身に付けていけたらなと思っています。
違う視点で知ろうとしてくださることがありがたい
ずっと医療の世界で働いてきたので、こんなにも社会問題に関心を持って、しかもボランティアで力を貸してくださる方が世の中にたくさんいるのかということに純粋に驚きました。私たちは小さな団体の中で一生懸命活動していますけど、外では自分のお仕事をしながら、生活しながら他の人をこんなに助けようとしてくれる志の高い方がいることに頭が下がりますし、感謝でいっぱいです。プロボノワーカーとして支援をしてくださったことで「言語聴覚士」という職業を知り、「近くで吃音の勉強会があったから行ってみました」と言ってくださる方もいて、活動の広がりを感じながら「私たちもがんばらないと」と思いました。

私たち内部のスタッフは、立場や経験が近しく、持ってる知識も共通したものがあるので視点が似通っているところがあります。外の方、普段ご一緒していない方が入って全然違う切り口で言語化してくださったり、気づかないことをいっぱい気づかせていただいたなと感じました。自分たちではわかる、伝わると思っている文章が伝わらなかったり、求められている情報は私たちが思っているものとちょっと違っているんだなということを感じたり、外から客観的に見てくださるからこそわかることがたくさんありました。
どっちが上でどっちが下っていうこともなく、私たちの中にメンバーとして入ったかのように同じように課題感を持って一緒に取り組んでくださる方がいらっしゃるっていうのがほんとに心強いなと思って。「頼りになる先輩が来てくれた」感じがしました。

団体を作ってから約2年になりますが、団体のあり方や進め方については、まだまだ模索中です。そんな中、プロボノワーカーの方が関心を持ってくださったり、理念に共感してくださったり、色々なお力添えをいただく中で、自分たちは間違っていないかもしれない、このままがんばってもいいのかもしれないなと力強い励ましをいただいたような気がします。
開始前の心配が払しょくされる仕組みがありました。まずやってみたら!
GRANTに登録する前はどんなことが起こるんだろうと思って緊張してドキドキしていました。そもそもしゃべるのは得意じゃないし、お話しするのは基本的に患者さんばかりで、会議やミーティングで外部の人と話ということがない仕事だったので。でも、登録手順もわかりやすかったですし、フォーマットとかテンプレートがちゃんと用意してあって、慣れていない人でも活用しやすくなっている、そこはありがたいなと思いました。 間違えてしまったこともあったんですけど、プロボノワーカーの方もサービスグラントの方々も皆さん温かく親切に対応してくださるので大丈夫ですって言いたいです。やってみると新たな道が開けるんじゃないかなと思います。


※掲載内容は2023年11月取材時点のものです。