経験者インタビュー

GRANTで初プロボノを体験。
団体の方々と同じメンバーに
なれたという感覚が良かったです

高橋秀一さん
IT企業勤務
PROFILE
GRANTへの参加が初ボランティア、初プロボノの高橋さん。団体の要望を伺って成果物を作り上げることに手ごたえや喜びを感じながらこれまで2つのプロジェクトに取り組みました。
※高橋さんのGRANT参加実績はこちらからご覧いただけます。

事業会社の社内デザイナーとして活躍している高橋さん。シンボルマークの作成と、ポータルサイトの作成の2つのプロジェクトについて、お話しを伺いました。
仕事で得られない経験をしたいと思いました
IT会社でウェブデザイナーをしています。ウェブサイトを作ったり、バナーをデザインする業務を行っています。
ちょうど今の会社に入ってすぐの時期に、勉強会で出会った知り合いから「こういうボランティアがあるんだけど興味ある?」とGRANTを紹介されました。ちょうど何を勉強していこうかと迷っていた時期でもあって試しに手を挙げてみたという感じです。

今の仕事は事業会社なのでクライアントから受託して制作をするのではなく社内のウェブデザイナーとして業務を行っています。そういうことからも、クライアントと直接やり取りをしながら直に感謝される経験をしたい、事業会社はある程度決められた案件が多いのですが制約などのない自由な案件もしてみたいと思っていました。それまでプロボノやボランティアといった経験は一切ありませんでしたし、どちらかというと自分本位な考えからスタートしたということがあるかもしれません。
一方で、仕事ではディレクターや営業さんがいる中でやっていたので、一人でクライアント(支援先団体)に行くとなった時に「どういうことになるんだろう」という不安はかなりあった気がします。
最初のプロジェクトはシンボルマークの作成
最初に取り組んだのは2021年で、神奈川県横浜市金沢区の地域団体である金沢東部地区社会福祉協議会さんのプロジェクト「シンボルマークの作成」でした。活動の肝となるシンボルマークを作るということでしたので、デザイン的なプロジェクトで入りやすく、かつ、団体の活動現場に直接伺える距離だったので関心を持ちました。

支援募集記事:シンボルマークの作成


実は手を挙げたときは、シンボルマークを最初から作るようなイメージを持っていました。ですが、面談で団体さんにお話を伺ったところ「地域のみなさんから原案を募集して、原案をシンボルマークにするという形のプロジェクト」ということがわかりました。

自分で作ってみたい気持ちはありながらも原案をもとに作ることも面白そうだと思い、団体さんに会いに行ってプロジェクトの概要を話していく中で「いいですね、やってみよう」という気持ちになりました。団体の皆さんがすごくいい方々でしたのでそのことも背中を押しました。
現地には2、3回行ったと思います。イベントにもお伺いして応募の作品を色々見て回りました。子どもから大人まで全部で30点ぐらいのイラストが集まった中から最終的に団体さんの方で「これにしよう」と決定されまして、伝わりやすい、親しみやすいシンボルマークにしようということを考えながら手書きの原案を専用ソフトでデータ化して納品しました。

元の案は優しい、包まれている、癒されているような感じがするイメージのものでした。
団体さんがある金沢東部地区には8つの町内会・自治会があるんですね。僕のアイデアで八(はち)を使ったデザインに整えていきました。完成したシンボルマークは一見、ひな人形みたいなんですけど、シンボルマークの頭に数字の8(はち)をつけたり、葉っぱのところには漢字の八(はち)になぞらえて広がりを表しました。それから、元の案は目を閉じていたのですが、開いてるパターンもあった方が使いやすい場面もあるだろうと思いまして、目を開いたバージョンも作りました。

成果物:シンボルマーク


打ち合わせは全部で3回程度行いました。納品したシンボルマークは旗や幟(のぼり)に活用したというお話しを伺いましたし、缶バッジを作って皆さんに配ったときは、寄せ書きの色紙とともに僕のところに送っていただきました。
シンボルマークができた後で「葉っぴい」(はっぴい)というキャラクターの名前が決まったように記憶しています。先ほど、団体さんのサイトを見たら、トップページにシンボルマーク(キャラクター)が載ってました。トップページのキャラクターの画像をクリックすると新しく「葉っぴいエリア」ができていることもわかりました。今でも使い続けていただいていることはとても嬉しいです。
次のプロジェクトはポータルサイト制作
次に取り組んだプロジェクトは、子どもの個性にあわせた多様な学びについての普及啓発を推進している東京都フリースクール等ネットワークさんの「東京都フリースクール等ネットワークのポータルサイト制作(ノーコードOK)」です。事務所の場所が比較的自宅から近い団体さんだったこともあってエントリーしました。そこまでWordPressに詳しいわけでなかったので不安ではあったんですけど、ちょっとお話しを聞いてみようというところで会いに行きました。

支援募集記事:東京都フリースクール等ネットワークのポータルサイト制作


団体さんは、都内に約100団体あると思われるフリースクールについてまとまった情報を載せている場所がどこにもないとか、実際に調べようとした時に調べる術がないところを課題に感じておられたので、そこをなんとかできないかというところでお話を伺いました。団体の皆さんがたいへん熱意を持っていて、すごくいい方たちばかりだったのでやってみようと思って参加することに決めました。

フリースクールや不登校という社会課題について、それまで関心を持っていたとか身近にそういった問題があったということはないんですが、GRANTの募集記事を見ていく中でピンと来たプロジェクトだったんです。困ってる人にとっては切実な問題と思いましたし、自分たちの団体を紹介したい、アピールしたいというよりも、もうちょっと危機迫る大きな課題というところを自分も感じたということもありました。それから、僕はサイトをイチから作ってみたいという気持ちがありましたので、サイトがリニューアルではなくて新規で制作という募集内容も嬉しかったところです。
思いがけず17カ月のプロジェクトになりました
プロジェクトは2022年8月に始まりました。最初は翌年(2023年)の4月ぐらいに公開できればいいというお話だったように思います。とはいえ、絶対にその時期に公開したいということではなくて来年度(2023年度)から使えたらいいねというスケジュール感でした。

最初のフェーズである要件定義は打ち合わせ時間を確保できなかったこともあってなかなか前に進めることができず、8月から12月末ぐらいの約4カ月でこんなサイト作ろうとか、こんなワイヤーフレームにしようという話が決まっていきました。

次のフェーズのデザインは年度内(2023年3月)に固まりました。デザインは提案の都度、団体さんからの要望を伺いながら進めました。このサイトの肝は「検索」でしたので、検索のキーワードはどうするかという点はすごく話し合ったポイントです。いろんなタグ付けができるといいのかもしれないんですが、検索機能を複雑にするよりも「場所」と「対象年齢」だけで検索できる方がいいんじゃないかという話になって現在の形に落ち着きました。

年度が変わった2023年4月からコーディングが始まり、このフェーズになるとあまり団体さんとのやり取りはなくなって僕が粛々と進めていきました。実は10月頃にはある程度完成していたのですが「キリよく年内に公開しましょう」ということになりましてポータルサイトを2023年の年末に公開しました。

成果物:東京フリースクール等ネットワーク ウェブサイト


団体のメンバーの中には、ボランティアの立場で活動されている方もいらっしゃいましたので打ち合わせ等に関する団体さん側の調整はたいへんだったのかもしれません。進行自体は穏やかで、月に2回ぐらいオンライン(Zoom)をつないで打ち合わせを進めていきました。お子さんが小さい方もおられたので夜の9時ぐらいから話す感じでしたね。プロジェクトのスケジュールを引いたり、ガイドしていくことは僕の勉強にもなりましたし、そこがたいへんだと思うところもありました。
最後は団体さんと一体になって進めるという感覚に
自分では「こうしたい」という思いはありながらも、使い手の要望を伺いながら落としどころを探すというところは、実際に仕事では得られなかった経験だったように思います。振り返ってみると「確かに団体さんの意見が正しかったな」というところもありました。いいものを作りたいという団体さんの想いもすごかったですし、僕にとっての大きな学びとなりました。

デザインの面では、ちゃんと情報が載っている、信頼感と安心感のあるようなサイトというのがまずありましたので、当初、僕が想定していた「可愛らしい」デザイン案から「落ち着いた」ものに作り直すことになりました。それから、写真が多かったり、目立ち過ぎたりするとイメージを狭めてしまう懸念があるので写真は使い過ぎないよう検討し直しました。

団体の皆さんがすごく穏やかでいい方たちでしたので、この方々に支えられた気がします。最初は「団体の窓口の2人と僕」という立ち位置だったんですけど、最後の方は3人が一緒になってプロジェクトを進める、同じメンバーという感覚になれたことが良かったかなと思います。
案件が面白いところも魅力です
GRANTに参加するまでは、「ボランティアとは寄付をすること、災害地に行くこと」というイメージを持っていたので、専門的なスキルをちょっと使って何かできるっていう仕組みがあること自体も知らなかったんです。GRANTはマッチングができるし、募集されてる案件も面白いところがいいと思います。

募集の内容は多岐にわたるので、他にもいろいろやってみたいと思いながら見ています。GRANTのインタビューを読んで、こういったことに取り組んでいるんだということもわかります。フリーの立場で取り組むよりも枠の中でやってるという安心感もあります。
参加は自分の学びやスキルアップにつながりました
プロジェクトへの参加は自分のスキルになりました。これまで、WordPressで投稿のお知らせやブログを作ったことはあるんですけど、検索のシステムを作ったことはなかったので経験することができました。団体さんから要望を伺って制作したことでコーディング的なスキルがついたということもあります。

実際にポータルサイトには93校の情報が登録されているので「自分が作ったサイトに93校もの情報があるんだな」ということを改めて感じています。サイトを訪問する方にちゃんと見ていただけそう、使っていただけそうというところもあって、やりがいを実感しているところです。

オルタナティブスクールという言葉も知らなかった僕ですが、こんなに学びの選択肢があるということは、サイト内でタグ付けをしながら学びました。こういう情報は普通にみんなに知ってほしいと作りながら思いました。
気楽な気持ちでまずは扉を開いてみたら!
これからGRANT参加を検討している方は、まずは気楽な気持ちで参加してみると扉が開けるような気がするので、とりあえず団体さんに話を聞いてみるのがいいと思います。
僕のスタイルは「対面」を重視することかもしれないですね。シンボルマークのプロジェクトはすべて対面でお会いしました。ポータルサイトのプロジェクトは、団体の方と対面でお会いしたのは1回だけであとは全部オンライン(Zoom)ではあるんですけど、なるべく1回は顔をあわせてお話した方がお互いがわかりますし僕も安心するので最低1回は会ってみたいと思っています。

プロジェクトが終わったばかりですが、これからも仕事との兼ね合いを見ながら、面白そうなプロジェクトがあったらまたやってみたいです。今でもたまに募集記事をのぞいています。
プロジェクトの内容がデザインやウェブ関係だと僕も入りやすいのでまず目が留まりますし、団体さんが掲載している写真にも注目しています。写真を見てできそうだな、とか、いい人たちみたいだから一緒にやってみたいなといったところを見てるような気がします。あとはやりがい的なところですね。募集記事に書いてある内容に共感できたり、社会に貢献できそうというところがあればピンとくるかなという感じがします。


※掲載内容は2024年2月取材時点のものです。
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