経験者インタビュー

[GRANTコーディネーターに聞く]
3年間、事例とノウハウを蓄積しつつ
幅広い団体のステップアップに伴走中

江﨑さん、田代さん、神名川さん
ちょこっとプロボノ@府中
「ちょこっとプロボノ@府中」は東京都府中市の府中市市民活動センターが運営、2021年よりGRANTのコーディネーターとして活動しています。
ちょこっとプロボノ@府中ページはこちらからご覧いただけます。
2021年にコーディネーター登録を行い、この3年間歩みを止めずにGRANTのご紹介を続けておられる「ちょこっとプロボノ@府中」さん。2024年1月18日に開催したコーディネーター事例共有会のお話しを再構成してご紹介します。

私たちが考える方向性とGRANTがマッチング
ちょこっとプロボノ@府中は東京都にある府中市市民活動センタープラッツが運営しています。私たちは2021年にGRANTに登録をしたわけですが、その前年度、2020年にプロボノ事業をプラッツで始めようということで準備を始めました。

プラッツの登録団体は約400あります。その団体と府中市内の在住、在勤のプロボノワーカーをチーム型という形でマッチングしてプロボノを始めるという企画がスタートでしたが、ちょうどコロナということもありましたし、そもそもプロボノワーカーと市民活動センターの接点は少ない。他の自治体でのプロボノ事業などを調べた結果、まずは私たち自身が基本的なプロボノの事業のやり方っていうところを教えていただくのがいいのではないかということになって2021年1月にサービスグラントさんへ相談しました。
ご相談の中で、GRANTというオンラインマッチングのサイトを利用するということと最初の段階で説明会をサービスグラント代表の嵯峨さんにお願いしようということで企画が実現することになり、2021年2月にGRANTのコーディネーター登録を行いました。

私たちは市民活動センターで市内の団体に活発に活動していただくことを考えています。400ある登録団体の中には自発的に活動している団体もありますが、割と規模が小さく、自分たちで努力しながらも、高齢化とか、オンラインが普及したけどオンラインにはなかなかついていけないとか、それぞれにいろんな悩みを抱えている団体さんもおられます。私たちにはそのような団体さんを「ちょこっと支援できるようなプロボノ」というのが元々の発想にあったところに、GRANTというマッチングサイトのことを伺いまして、私たちが普段考えているところとGRANTがちょうどいい具合に合っていると考えて活用することになった次第です。
「がっつりやるプロボノ」ではなく、ちょこっと始めるという意味でコーディネーター「ちょこっとプロボノ@府中」という名称でスタートすることになりました。3名の職員で担当しています。
1年目(2021年度)「とにかくプロボノを知っていただこう」
プロボノという言葉は団体の皆さんにはなかなかピンとこないだろうというところで、1年目は「とにかくプロボノを知っていただく」ということから始めました。
まず団体の説明会から始めました。リアルな場に嵯峨さんにお越しいただいて、GRANTの登録の方法などをここでご指導いただきました。次に私たちの方で2回にわたってオンラインでプロボノワーカーの説明会を行ったんですけども、最初は嵯峨さんに登壇をお願いし、2回目は嵯峨さんのお話しを録画という形で使って行いました。

7月の中間報告会とマッチング会では、なかなかGRANTが皆さんにとって分かりにくいというところで、GRANTの仕組みについて説明しながら、その時すでにマッチングが進んでいた団体さんに進行中のプロジェクトの報告をしていただきました。また、まだマッチングができていないプロジェクトはここで改めてご紹介するという形をとりました。
その後11月の第7回市民協働まつり(プラッツが年一回行っている祭り)で団体とプロボのワーカー双方による参加者トーク(YouTubeにリンクします)を行い、12月は2021年度の取り組みの報告会を実施し団体とプロボノワーカーに参加をいただきました。また、2022年1月は、プラッツ情報誌「kokoiko」第19号でプロボノの特集を組んで紹介しました。また、プラッツのホームページにちょこっとプロボノ@府中のトピックスを作成して、担当以外の職員もプロボノを紹介できるよう情報を1カ所にまとめました。



1年目の2021年度は4団体の11プロジェクトが完了しました。「GRANTアワード2022」の団体部門では、7つのプロジェクトに取り組んだ地域を明るくするリハビリテーション専門職の会さんが団体部門で最多活用賞を受賞されました。私たちもベストコーディネーター賞を受賞することができました。

また、コーディネーターである私たち事務局がGRANTの使い方にだいぶ慣れたなというところがあります。コーディネーターはとにかく団体の方に丁寧に説明を行うことが大事で、フォローを丁寧に行うことがこのプロジェクトを絶えず動かすポイントということがわかってきました。
2年目(2022年度)「新たな3団体に参加してもらおう」
1年目は、私たちが声をかけやすい、比較的活発に活動されている団体さんに声をかけることが多かったんですが、2年目は1年目には参加していない新たな3団体をプロジェクトに参加してもらうということを目標に活動を進めました。

団体向けの説明会では、1年目にプロジェクトを完了した団体の生の声を聞いていただくと実感が湧くかなということで、5月に団体さんに来ていただいて実際にプロボノのプロジェクトについてお話をいただき、10月にはプロジェクトが進行中の団体さんに来ていただいて交流会を行いました。前年と同じく11月には市民協働まつりでプロボノ事業の紹介パネル展示を、12月はこの年の成果報告会を行いました。



2年目は目標とする3団体3プロジェクトが完了しました。数としては少ないかもしれませんが、オンラインが不得意な団体でもこのようなオンライン上で行う仕組みに参加できるということがご紹介できたように思います。 ふぁぶらぼ☆くらぶさんが「折り紙の折り方手順を動画撮影してください」というプロジェクトを出されたんですが、これをたまたま地元の府中市のプロボノワーカーの方(小林ヒロカズさん参加者インタビューはこちら)が、プラッツに来ていただいてリアルな場でプロジェクトを進めるという形でプロボノを完了することができました。ふぁぶらぼ☆くらぶさんは「GRANTアワード2023」の団体部門で「[特別賞]こんな支援もありましたで賞」を受賞されています。 次年度に向けて紹介できる事例のストックができたということが2年目の成果です
3年目(2023年度)「新たな5団体の参加を目指そう」
今年度は新たな5団体の参加を目指しています。団体向けのイベントは今まで説明会という名称で実施してきましたが、プロボノに対する団体さんの「私たちには関係ないわ」や「そんな難しいことできないよ」という先入観を取り除きたいということもあり「説明会」ではなく「団体交流会」という形でプロボノを紹介することにしました。ちょうど学生インターンが来ていたので、インターンから「プロボノってこんなものだよ」いう説明をしてもらってできるだけハードルを下げるような形でご紹介するという形をとりました。
中間報告会は行わず11月の市民協働祭りではパネル展示という形で「ちょこっとプロボノ」を紹介しました。今年度の成果報告会は2月10日に実施する予定になっています。



2023年度はこれまで6団体、5プロジェクトを実施しました。5団体目指していましたので一応目標を達成できたかなというところなんですが、プラッツのスタッフが関わっている府中市多文化共生センターDIVEで活動されている団体さん(ROWJ外国人女性支援協会さん)が複数のプロジェクトを完了したということが特筆すべき実績となっています(団体インタビューはこちら)。3年目となって、参加者(プロボノワーカー)についてもだいぶ様子がわかってきたように思います。
4年目(2024年度)「皆さんの関心が途切れないように!」



来年度は5団体、5プロジェクトを完了したいという目標を立てています。新たな登録団体へのアプローチをしながら、プロボノの情報発信についてSNS、チラシを活用しながら絶えず流すようにしたいということと成果報告会できちんと情報を発信して皆さんの関心が途切れないようにしていきたいと考えています。

これまでの経験からの気づきをいくつかご紹介したいと思います。
団体へのサポートについて
今までプロボノワーカーとご一緒したことがある団体の方はほぼいらっしゃらないので、どういったことをお願いすればいいのかっていうことが分からない、ピンと来ない方が多いです。なので丁寧に説明することを心がけていますし、だんだんと事例が積み重なってくることによって「あちらの団体さんはこういうことをお願いしたんですよ」と具体的なことを私たちも言えるようになりますので、そうすると「知ってる団体さんがこういうこと頼んだんだ」となりまして、直接その団体の方に良かったことやそうでなかったことを聞いたりできます。そういうことで少しずつ広がっていることを実感しています。

最初の団体登録は正直なところ「ちょっとできない」とおっしゃる方も結構いらっしゃいますが、最初の登録が済んでしまえばあとはメールでのやり取りなのでそこはクリアできる方も多いので、団体さんは最初の団体登録をまずは頑張る、そこを私たちが一緒にやる、サポートするっていうことが大事だとわかってきました。
募集記事のサポート
そもそもオンラインのことが得意じゃないという団体さんが多いですし、プロジェクトの書き方ひとつでプロボノワーカーの方が興味を持たれるかどうかが変わってくると思うので、興味を持っていただけるような言葉とか、キャッチフレーズ的なことは一緒に考えることもあります。そして、とにかくその分野以外の方が見てもわかるような表現や言いまわしをしてくださいというのはよくお伝えしています。それから、やっぱり団体の活動に共感していただけないと、プロボノワーカーの方も参加しようと思ってくださらないと思いますので、いかにその活動の意義があるかであるとか、楽しんでやっているであるとか、その活動自体の魅力を生き生きと発信されること、例えば写真などを含めてなるだけ生き生き感を出すようにといういうことはお伝えしています。
プロジェクトが始まった後の連絡の時間やペースについて団体さんとプロボノワーカーの方がずれてしまい、成果物の内容や品質よりも「やり取りのペース」がうまくいかず満足につながらないケースがあるように感じていますので、募集記事やプロジェクト初期の段階でやり取りのペースについては明確にしておくとやりやすいように思っています。
プロジェクトの進捗管理
団体さんとプロボノワーカーの方のGRANT上でのやり取りは伴走モードを設定することでメールでコーディネーターの私たちにもお知らせが届きますよね。それを見ながらプロジェクトが予定通り進んでいるのかなとか、メールの返信まで時間がかかりそうな場合は「大丈夫ですか。できてますか」というちょっとした声がけをしたりしています。コーディネーターがあまり出過ぎるものちょっと違うかなと思うので、進行状態を見ながら、困っていることはないかなというところを注意しながらサポートしています。GRANTから発信されるメールは非常に丁寧にサポートをしていただいて私たちも助かっていると感じています。
プロボノワーカーへのアクション
プロボノワーカーに対してはすごく働きかけをしているということはないんですけど、必要に応じてコンタクトを取るということでしょうか。市民活動センターの窓口に、自分のやってきたこと活かしてボランティアがやりたいと思っている方がいらしたら、プロボノワーカーとしてのご登録をおすすめしたりしています。
目指していきたいところ
団体の方に気軽にGRANTを利用していただけたらいいなと思います。自分たちの団体だけではできないことを全国のいろんな人に頼めるということだけではなく、募集記事をあげようとするプロセスが団体活動の振り返りになって、団体に必要なことの棚卸しであるとか、仲間内だと暗黙の了解で分かり合えることを違う人に説明するために言語化するとか、そういったさまざまなことが団体のステップアップにつながると思っています。いろんな登録団体の方に利用していただくことが今後目指していきたいところです。


九州のプロボノワーカーが手を挙げてくださったプロジェクトがあったんですね。プロジェクトではオンライン上でやり取りをされてたんですけれども、その方が、関東に行くからお会いしませんかとおっしゃって実際に対面で会って色々お話をしたというエピソードを伺いました。たまたまそういう方がいらしたということだとは思うんですけど、実際に会って相談できて、住んでいる場所にかかわらず繋がりを持つことができるのは素敵なことですよね。


※掲載内容は2024年1月18日実施のコーディネーター事例共有会のご発表を再構成しています。