経験者インタビュー

[社会参加オープナーに聞く]
仕事でのコーディネート経験が原点
地元の団体の次の一歩を支援中

佐藤淑子さん
キャリアコンサルタント
PROFILE
団体の課題を紐解き、その解決に役立つ新たな担い手と団体とをつなぐ「社会参加オープナー」認定第1号の佐藤さん。GRANTアワード2024特別賞「社会参加オープナー賞」を受賞しました。
※佐藤さんの社会参加オープナープロフィールページはこちらからご覧いただけます。

チームで取り組むプロジェクトや課題整理ワークショップのプロボノ経験やキャリアコンサルタントの経験をベースに「新たな「プロジェクト型協働」の機会創出」へと踏み出した佐藤さん。社会参加オープナーとしての取り組みを中心にお話しを伺いました。
私の経験が役に立つ!
メーカーや人材派遣会社の勤務を経て、フリーランスでキャリアコンサルタントをしています。主には企業の従業員に対してのキャリアコンサルティングとそこでの課題を企業の人事の方に提言するということで、社員と人事の中間支援の立場で仕事をしています。仕事は1人ではなくチームで取り組むことが多いです。

仕事をしながら、地域でもっとできることないかと考えていた時、川崎市の「川崎サマーチャレンジ」の説明会に参加したことがサービスグラントとの出会いです。約1ヶ月という短い期間でしたが新百合映画祭の運営に関しての課題抽出のお手伝いをするというテーマにプロボノチームで取り組みました。2015年のことだったと思います。
プロボノは「社会経験を生かして、スキルがある現役の人がやる」というイメージがあって、私の経験がプロボノに役に立つのかと最初はすごく不安でした。ホームページが作れるわけでもないし、経理が専門でもない。
川崎サマーチャレンジでは、まず映画祭のボランティアの方たちにヒアリングをするところから始まりました。仕事柄、ヒアリングでしたら慣れもありましたので、そういうことだったらできるかな、そういう役割もあるんだというところでプロボノに関してハードルが低くなったように思います。
プロボノの基本は、相手が何に困っているかを引き出し整理すること、それは、もしかしたら私たちが普段仕事上やってることなのかもしれない。お話しが聞けるだけでもヒントとしていろいろなものが提供できるかもしれない。だから私でも役に立てることがあると思えました。

それから少し時間があくのですが、2018年に町田市町内会・自治会連合会のホームページリニューアルのプロジェクトに参加しました。それからは、1年に1回ぐらいのペースで八王子市や小金井市のプロジェクトに取り組みました。あまり意識していなかったのですが地域の活性化という方向に気持ちが向いていたのかもしれません。
私はコーディネーターが向いているかもしれない
チームでのプロジェクトのメンバーとしてかかわるほかにも、課題整理ワークショップ「スコーパソン」に参加したり、町内会や自治会の方たちが地域の課題を出し合うワークショップのサポートをする機会に参加していました。
そういった場に触れて、課題を整理するだけでもすごくやりがいがあると思うようになり、実際に課題を解決するプロジェクトチームじゃなくてもプロボノに関わる方法はいろいろありそうと感じました。
さらに、私の派遣会社での仕事役割はまさにコーディネーターだったということも思い出しました。派遣会社が間に立って企業と派遣スタッフが出会う。そういうことで世の中の役に立っている。お互いが気づかないところを結びつけるというやりがいは、プロボノも一緒だなと。もしかしたら私はコーディネーターが向いているかもしれないと思うようになりました。そんなときに社会参加オープナーに出会いました。

プロボノという仕組みは本当に素晴らしいと思っているので世の中に広まるといいといつも思っていましたし、プロボノを知らない人があまりにも多いのでそれはとても残念なことです。そういう中でプロボノを広めるのがコーディネーターの役割としたら私はぜひそういうことをやってみたいと思いました。
仕事柄、常に自分はどういうことが向いているのか、どういうことにやりがいを感じるのかを常日頃考える癖が身に付いていました。私はそういう役割が好きで、どちらかというと表に出るよりは、裏方でもないけど間に立つのが合ってるのかなっていうのは気づきやすかったのかもしれないです。
最初のコーディネート経験
宮前まち倶楽部さんとの出会いは2021年の「スコーパソン」です。私の地元(川崎市宮前区)で活動している団体さんでした。当初は広報物を作りたいというお話しだったんですけど、10年間活動してきて、今後の方向性について団体メンバーで話すようになり、最終的には「手伝ってもらうのは広報物を作ることではなくて、今後の方向性を一致させることだよね」ということになりました。
結果、経営コンサルタントのプロボノの方が、今後の方向性とかミッション作りの支援をされました。(プロジェクト「団体のミッション・ビジョン・バリューの言語化」

このことが私の最初のコーディネート経験になりました。団体さんがものすごく感激されて、団体のメンバーの方からも地元のイベントでお会いするたびに「本当に助かりました」と言われてモチベーションが上がりました。
団体さんからは、その後、これまでやってきたことを整理しようと次はホームページ作りのプロジェクト内容でプロボノの募集をされ、今年の6月にそのプロジェクト「団体ホームページのリニューアル」が完了したところです。
「社会参加オープナー」との出会い
「社会参加オープナー養成プログラム」を受講したのは2023年の10月です。2023年10月です。「基礎講座」の動画で学んだ後、1日かけて行う「実践講座」に参加しました。実践講座では、ゲストNPO団体のお話を基にした課題抽出や解決策検討の演習、プロジェクトの発信原稿作成など、つなぎ手となるためのプロセスを学びました。

実際に受講してみて、もともと私が間に立っていろいろやろうとしていることは、まさに今求められていることなんだなとわかって安心しました。団体とプロボノの方をつなげるためのノウハウをいろいろ教えていただいたように思います。
もともとコーディネートに興味があったので、そういう意味ではドンピシャだったんです。新たに学んだポイントは手法ですね。課題の整理フレームや優先順のつけ方などを学びました。

もともと自分にコーディネーター志向、中間支援志向があったことに気づき、プロボノとして「つなぐ」事に特化して取り組もうとする私の今の方向性にもあっている気がします。
プロボノのスキルは目に見える技術的なスキルだけじゃない。人の話を聞くとか、この人が困っているのはこういうことかもしれないとか、人と人をつなぐというところを含めて経験の全部がプロボノ活動で活きてくるとわかってきました。プロボノワーカーとしてチームに参加するだけでなく、課題の掘り起こしをするとか、団体さんとプロボノワーカーをつなげるとか、そういうことをできたらいいなと思っていた時に社会参加オープナーの話がポンとあってなんの迷いもなく、どんなことをやるかも詳しくはわからないのに手を挙げていました。
社会参加オープナーとしての活動
「社会参加オープナー」養成プログラムの受講を経て、これまでコーディネーターとして4つの団体さんとご一緒しました。コーディネーターとしてかかわる内容は、ヒアリング、やりたいことの優先付け、プロジェクト化、プロボノワーカーとのマッチングまでの伴走などです。
どの団体も課題解決ができてよかったということを言ってくださるのですが、それ以上に、それがきっかけで課題や方向性が見えてきて発展のきっかけになったとか、みんなで話し合うようになったとか、お互いの考えを知ることができてよかったとおっしゃってくださって。そういうきっかけになったことがすごく嬉しいですね。


団体名 支援内容 完了時期
認定NPO法人すずの会 活動紹介パンフレットの作成 2023年10月
ひとり親ピアサポート団体「ひとり親Cheers」 会員管理システム導入に関するサポート 2024年1月
宮前まち倶楽部 団体ホームページのリニュアル 2024年6月
認定NPO法人青葉まちづくりフォーラム まちづくり活動のための双方向型ウェブサイトの作成 募集中

社会参加オープナーとしてのコーディネート経験


私は地域密着で団体支援をしたいと思っているのでコーディネートするのは川崎市宮前区の団体が中心です。宮前まち倶楽部の代表の方は地域で顔が利くので色々と声をかけてくださって「じゃあやってみよう」となったのが、すずの会さんと、現在募集中の青葉まちづくりフォーラムさんです。

認定NPO法人すずの会」さんは、孤立しがちな人を地域で支え合おうというNPO団体ですが、研修で渡すチラシを作ってほしいということで最初にプロボノワーカーにたたき台を作ってもらったんですね(プロジェクト「活動紹介パンフレットの作成」)。

支援募集記事:活動紹介パンフレットの作成


団体の代表の方の確認を取った後、ボランティアの方々にお見せした時に議論になったそうです。「私たちの団体がやりたいのはこういうことだったの?」と。それから、みんなで今後の方向性とか今自分たちがやるべきことについて本音でされたようです。その結果、チラシの内容も大幅に変わりましたし、団体の中で話をするきっかけになったことがよかったと言われました。
団体をつなぐ
コーディネーターとしての動きは「困っている団体がある」と紹介があったら、ホームページのコピーを資料としてお見せしながらプロボノやGRANTについて説明します。ホームページを見てください、だけではなかなか伝わらないので、その場でGRANTの団体登録や、GRANTの入力をお手伝いする感じで進めていました。

説明で団体さんからは必ず言われることが2つあります。これまでは外部の力を借りる発想がなかったということ、なぜボランティアがここまでしてくれるのかということです。私からは社会人にとってもメリットにもなるし、仕事のスキルを活かして社会貢献したい人は世の中にたくさんいるんですよという話をします。
その道に明るい人が助けてくれる仕組みが世の中にあるんだ、ということは伝わっているかなと思います。

社会参加オープナーの活動としては、地域の団体さんにばかり声をかけている感じです。コロナ以降、家で仕事をすることが多くなって地元の人たちとすごくつながったことで地元志向になりました。地元の団体さんの活動は活発だけど、一方で困っている団体さんも多いということもわかってきました。
役に立てそうなネタはいっぱいあって、地域でも役に立つかもしれないっていう自信になりました。
プロボノワーカーをつなぐ
キャリアコンサルタントの仕事は、最初は表面的な悩みを聞くことから始まりますが、じっくり話を伺うとご本人も気づかなかったような本質的な問題が浮かび上がってくることがよくあります。社会参加オープナーとの共通点を感じました。
個人(支援者)に向けて「つなぐ」ことに関しては自分から声をかけたり、大人の社会科見学のイベントで「越境体験とプロボノ」というテーマで、もっと気軽にプロボノに参加しましょうという企画を立てたり、キャリアコンサルの中でもプロボノをお勧めすることはあります。

「すずの会」さんのプロジェクトの支援者はなかなか見つからなかったので、直接私からプロボノの仲間に声をかけました。プロボノワーカーとしてこんないい経験になる仕組みがあるということはどんどん伝えていきたいと思っています。
プロボノ、GRANTを広める活動を進めていきます
これからも社会課題の解決など大上段に構えることなく、地元でがんばっているNPOや地域活動団体さんがより元気に活動できるようなお手伝いを地道にやっていきたいです。
つなぐことの醍醐味は、派遣会社でマッチングをしていた時のやりがいとちょっと似ているところがあるかもしれません。私たちが間に立っていなかったらお互い知り得なかった、求め合っていたはずなのに知らなかったところを私たちがつなげて、お互いから喜ばれるみたいなところです。単純に気持ちがいいなっていう感じもします。プロジェクト登録のためのディスカッションを通じて、団体さんがあらたな課題や方向性を考える、発展のきっかけになることも嬉しいですね。

一方で、説明する際はどうやったらもっと簡単にわかってもらえるかなっていうのは考えて続けています。プロボノのプロは、どうしてもプロフェッショナルのプロと思われてものすごくハードルが高いことになってしまう。なので、あまり「プロボノ」というワードは使わないように「お困りごとをボランティアで助けてくれる人たちがいるんですよ」みたいに説明します。そういうベタなところから話をして、それからだんだんそういう仕組みがあるという案内につなげていく。本当に地道だと思います。
もともと地域の団体側には組織運営をボランティアが助けてくれるという概念自体がないので、もっとシンプルな言葉で分かりやすく説明できるといいですよね。

私自身は地域でたまたま出会った団体の代表の方がGRANTが良かったと宣伝してくださいました。そういう意味でキーマンがいると、その次の団体やプロジェクト募集にもつながりやすいかなと思います。「助けてもらってすごく良かった」っていう経験談を一緒に話してくださると強いというのはありますよね。

今はなんでもやってみようという感じです。純粋にプロボノやGRANTを広めたいと思っています。がんばります。


※掲載内容は2024年8月取材時点のものです。
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